第988話 チビッ子編 👻 神社の猫さん(4)猫の挨拶
怜と直が子猫を見付けた近くで強盗事件が発生しており、あの軽トラックは、犯人が使った盗難車だったのだ。
そして警察官は軽トラックを探して山に入り、付近を捜索中に、怜と直を見付けたのである。
それと家族から幼児行方不明の届けは出されており、連絡をいれるとすぐに家族が駆けつけて来たのはそのためだ。
怜と直は子猫を見付けた所から順番に話したが、巫女と猫のくだりで、皆、妙な表情になった。
そして、怜と直に菓子パンと牛乳を与えている間に、家族の皆を集めて、警察官が説明をした。
「――というわけでして、埃の上にはあの2人の足跡しか残っておらず、巫女も猫もいなかったとしか思えませんし、牛くらいの大きさの猫というのも、ちょっと考え難いと……」
家族達は顔を見合わせた。
「まさか、幽霊が助けてくれたの?」
それに、そうだとも違うとも、誰も答えられない。
「まあ、誰にせよ、お礼を言っておこう」
司が言う。
「礼って?」
「その神社に、お供えを持って行けばいいんじゃないかな」
「ああ、そうね」
「その後で、2人には説教だ」
皆が怜と直を窺うと、2人は上機嫌で、猫の形のクリームパンを食べていた。
お饅頭と牛乳を持って神社へ行き、全員でお礼を言った後、怜と直は、叱られた。
そして逃走した強盗犯は、山の中で見付かったが、
「巫女さんと化け物みたいな猫が追いかけて来る」
と怯えていたという。
怜は家で大人しく絵本を読んでいた。買ってもらったばかりの『長靴をはいた猫』だ。
「猫かあ。あの猫さん、どこに行ったのかなあ」
ふと、いなくなっていた猫の親子を思い出して呟くと、大きい猫に舐められたように、頬に、ざらざらとした温かいものがかすめた気がした。
「え?猫さん?」
振り返るが、猫などいない。
それでも、大きい猫がいたような、そんな気がした。
本人ですらも知らない、これが怜と直の、初めての霊体験である。
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