第965話 チビッ子編 👻 修学旅行騒動記(2)修学旅行前夜
着替え、筆記具、財布、雨具、お菓子――。
司は、荷物を確認していた。御崎 司、15歳。明日から修学旅行で、名古屋に行くのだ。
「よし」
忘れものが無い事を確認して、カバンに入れていく。
明日は集合時間が早いから、目覚ましを5時半にセットしないとなあ。などと考えていると、パタパタと足音がして、背中に何かが貼りついた。
「にいたん!おフロぉ」
弟の怜だった。ひと回り年下で、家にいる時は、司が勉強している時以外はベッタリくっついてくる甘えん坊だ。
これがまたかわいい。
両親もかわいがってはいるが、母は大雑把、父は神経質すぎて時間がかかるので、司が何かと面倒を見たせいもあるかも知れない。
いずれは反抗期とかになってしまうのかと、自分の反抗期もまだながら、心配してしまう司だった。
「そうだな」
「アヒル!」
「ん、アヒルも一緒な」
そこで怜は、カバンを見付けた。
「にいたん。おでかけ?」
そうだった。2泊3日の旅行中、俺がいない事を怜に納得させるのがまだだった。
一番の難関をクリアしていない事に気付いて、司は唸った。
だが、まあ、聞き分けのいい、賢い怜の事だ。わかってくれるはずだ。そう思って、司は口を開いた。
「うん。あのな――」
しかし、怜はパタパタと走って行くと、オムツを抱えて走って来た。
ああ。怜のお出かけの時に、紙オムツを持って行くから。やっぱりかしこいなあ、怜は。良く見ている。
ついいつも通り兄バカになりそうになった司だが、いかんいかんと我に返った。
「あのな。明日は兄ちゃんだけなんだ。怜はいい子でお留守番できるよな」
怜はキョトンとし、次に目をウルウルさせ、
「いやああだあ!僕もぉ!」
と大泣きした。
「兄ちゃんだって怜と行きたいけどな、学校の行事だから仕方ないんだよ」
言っているうちに、司まで泣けて来た。
抱き合って泣く兄弟を、何事かと見に来た両親が見て言った。
「カゼひくわよ」
怜が、クシャンとくしゃみをした。
怜はアヒルのおもちゃを浮かべてぐずっていたが、諦めたらしい。
だが、そうではないと知るのは、翌朝の事になる。
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