第964話 チビッ子編 👻 修学旅行騒動記(1)臨海学校

 敬達の通う小学校では、5年生の7月に、臨海学校へ行く事になっている。

 なので敬も、リュックに着替えなどをいそいそと詰め込んでいた。

「敬、何かあったらすぐに知らせるんだよ。海は危険だからねえ」

 直が作った防水の札を受け取る敬に言う。

「うん。わかった」

「敬も5年生か。早いなあ」

 直も僕も、しみじみと言う。産院に駆け付けた日の事は、今でもよく覚えている。

 兄も思い出していたようだが、べそをかいて3人で団子になっている凜、累、優維ちゃんを見て、苦笑を浮かべた。

「来年は修学旅行があるぞ」

「……今のうちに言って聞かせないとな」

「だねえ」

 この3人は、てっきり敬と一緒に「臨海学校」とやらにいくものと勘違いし、優維ちゃんはピンクのビキニを着て、凜と累は浮き輪を持って飛んで来て、「敬だけ泊まりで行く」とわかって、泣き出したのだ。

「しょうがないだろ?学校行事なんだから。敬に、行ってらっしゃいしような」

 言うと、凜は渋々、僕にしがみついて、

「敬兄ちゃん、行ってらっしゃい」

と言った。

「優維も累もだよう。帰って来たら、また一緒に遊べるんだからねえ」

 優維ちゃんも累も、直にしがみついて、こっくりと頷き、

「気を付けてね、敬兄ちゃん」

「早く帰って来てね」

と何とか言う。

 仕方ないなあ。

「夏休みは、皆でまたどこかに行こう。な?」

 それで、チビッ子3人も目をキラキラとさせる。

「ミイラ?」

「ああ……今度はミイラのいない所がいいなあ」

 切実にそう思う。

「その前に、明日はビニールプールで遊ぶか?」

「遊ぶ!」

「わかった。

 水着、着替えておいで。まだ早いからな」

「はあい!」

 3人は機嫌を直して、走って家に戻って行った。

 それを見送って僕と直と兄はリビングへ行くと、兄がふっと笑う。

「小学校の臨海学校も修学旅行もリュックだし、あの心配はないな」

 それに、僕と直はキョトンとした。

「あの?」

 兄は面白そうな顔をして、訊く。

「覚えてないか?まあ、まだ小さかったからなあ」

 そして、おかしそうに話し出した。


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