第932話 心霊警察・爆発する想い(2)大捜索
大学構内を徘徊し、関係者以外立ち入り禁止の区画へも入ろうとしたので捕まった青年は、神奈川県警でしたひょうたんの検査で反応が出たので、急遽こちらに連絡が来たのだ。
青年は川田さん。
面談した時にはもう霊はおらず、川田さんはただただ混乱していた。
なだめていると、またも連絡が入った。同じ大学で、女子学生がやはり禁止区域でも男子トイレでも入ろうとしているという。
僕達は急いでその大学に向かった。
その学生は中田さん。大人しそうで小柄な子で、ウロウロと研究室にも入り込み、棚の中や冷蔵庫の中まで調べて回っていた。
「憑いてるのは若い男だな」
「何かを探してるようだよねえ」
僕と直が、まず近付いて話しかけてみた。
「こんにちは。警視庁陰陽課の御崎と申します」
「同じく町田ですぅ」
「中田さんに憑いているあなたは誰で、何をしようとしているんですか」
中田さんは立ち止まって僕達を見た。
そして、憑いている男が中田さんを通じて言った。
「俺は笹岡実太です。交通事故で死んだばかりです。
実は死ぬ前に、爆弾を作っていたらしいんです」
僕と直のみならず、全員がそれで緊張した。
「どういう事ですか」
訊くところによると、こうだ。
笹岡さんは工学部の学生だったが、死ぬ少し前から記憶が無い時があった。
その途切れ途切れの記憶の中で、自分がいつの間にか爆弾を組み立てていて、驚いたというものがあったらしい。
そして最後に記憶では、この大学から出て来た所で我に返り、ここはどこだろうかと振り返った時にトラックにはねられて死亡したという。
「なるほど。では、その爆弾をここに仕掛けたんじゃないかと思って、探しているんですね」
「そうです。
時限式で、威力は多分教室が3つは吹き飛ぶくらいだと思うんですが、はっきりは……」
「わかりました。捜索をしましょう。
でも、彼女からは離れてもらいましょう。代わりに札を用意しますので」
直が札を出し、笹岡さんはそれに憑いた。それで中田さんはぐったりとし、女性警察官に抱えられる。
まずは記憶が残っていないかと笹岡さんにシンクロしてみたが、話以上の事はなかった。
「集まって下さい。今から爆弾の捜索をします。
時限式で規模はおそらくコンクリートの教室なら3つほどは破壊できるくらい。大学構内にあると思われるものの、確証はありません。警察犬の出動も要請して下さい」
それで、構内の人間を全て避難させて、爆弾の捜索が始まった。
「大丈夫かねえ、怜。シンクロで死んだ時を体験して」
「大丈夫だ。サンキュー、直。
でも、トラックにはねられたのも、霊に突き飛ばされたせいだったよ。中年の女が視えた」
「じゃあ、その女が爆弾を作らせたのかねえ?」
「ああ。あの女が何者かわかれば手掛かりになるんだが、仕方ないな」
地道に探すしかない。
警察官と警察犬で構内を探し回り、僕と直は、女の霊の気配がないかも気を付けていた。1係と2係の手の空いた連中には、周囲にも女の霊がいないか視てもらっている。
と、女の霊ではないが、たくさんの動物の霊が集まっている場所を見付けた。
イヌ、ウサギ、サル、ラット、ブタ。
「これは何――あ、医学部の」
「ああ、そうかあ。解剖とかの実習に使うのって確かそうだったよねえ」
僕と直は、うろついたり吠えたり唸ったりする動物たちを見た。
その向こうに、中年の女の霊がいる。
「あ。いた」
言って近付こうとすれば、彼女を守るように動物たちが威嚇した。
女は笑って、僕達を真正面から見た。
見えるのね
「陰陽課の御崎と申します」
「同じく町田ですぅ」
私は 愛田雅代です
愛田と名乗った女は嫣然と微笑んだ。
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