第901話 チビッ子編 👻 宇宙人襲来!?(4)恐怖のムシ歯
御崎一家は、布団に頭を突っ込んで、物音がする度にビクッとする怜を見てヒソヒソと話をしていた。
「ずっと、ああなのかい?」
父が言う。頭隠して尻隠さず、な状態の事だ。
「改造されたって怯えてて……」
「改造ねえ。戦隊物のテレビでそういうのがあったのかしら」
母親はそう言って腕を組んだが、弾みで腕がテーブルに当たってガタンと音を立てると、怜のお尻と足が、ビクーッと硬直する。
「一体何を怯えてるのかな。
怜、怜。今日はお兄ちゃんに歯医者に連れて行ってもらったんだって?我慢できて偉かったね」
父がそばに座って話しかけると、怜は恐る恐る顔を出し、涙の浮かんだ目を向けた。
「UFOでね、宇宙人がね、キュイイン、ガガガガーって改造手術したんだよ」
「改造手術?宇宙人?」
皆、かかりつけの歯科医院を思い浮かべた。普通の見かけ、内装の歯科医院だ。UFOを思わせる要素があっただろうか?
「それでね、4年後、また手術されるかも知れない」
父は中途半端な笑顔を浮かべながら母と司を振り返ったが、2人共首を傾げていた。
「大丈夫だ、怜。兄ちゃんが付いてる」
「兄ちゃあん!もう宇宙人の基地には行きたくないぃ!」
怜は司に飛びついて来て、わんわん泣き出した。
それから3日後。怜は司の自転車の後ろに乗って、ご機嫌で時代劇のテーマソングを歌っていた。
嫌な予感がして警戒していたが、あの宇宙人の基地へ向かう道では無さそうで、一安心だ。
「はい、到着」
が、自転車が止まったのは、例の宇宙人基地だった。別の道から行った事に、やっと気が付く。
騙されたと、愕然とした怜だった。
そして今日も、3人の宇宙人に抑えつけられて、口の中にガガガッという何かを入れられて、疲れてフラフラになった怜は、泣きべそをかいて司に抱っこされてしがみついていた。
「偉かったね、怜君。今日でもう終わりだからね」
怜はちらっと、その宇宙人を見た。恐ろしい棒をもっていた宇宙人で、3人のリーダーらしい。
「終わり?4年後に来ない?」
「ん?」
その宇宙人は首を傾げて残りの宇宙人を見、3人で司を見た。
「何かこの前からそう言うんです。ここがUFOで、先生たちが宇宙人で、改造手術をされるって」
司が言うと、3人の宇宙人は怜を見た。
「宇宙人?え、どうしてかな?」
怜は、真実を知っていると知られたから殺されるのではないかとビクビクしながら、テレビで見た内容を伝えた。
それで、宇宙人の1人がポンと手を打った。
「ああ!再放送でやってましたね、『宇宙人の謎を追え!世界UFO事件簿』。確かそんな内容でしたよ」
皆、一斉に怜に注目し、笑い出した。
「そういう事か。ははは!」
「怜、ここは歯医者さんで、先生は虫歯を治してくれたお医者さん」
「お医者さん?ん?虫歯?」
怜の頭の中で、歯が黒くなり、足がわしゃわしゃ生えてクモの姿になると、口から這い出して行った。
さあっと怜の顔から血の気が引く。
宇宙人のボスかと思った歯医者さんは、マスクを外して笑いかけながら言う。
「虫歯になると、歯が痛くなっちゃうしね。虫歯は怖いんだよ。だから虫歯にならないように、しっかりとご飯やおやつの後、寝る前には歯磨きして、お母さんやお兄ちゃんにきれいに磨けたかチェックしてもらおうね」
「うう、はい!」
その日から、怜は歯磨きの鬼となった。虫歯の虫は昆虫とは違うとわかっても、歯磨きグセはこの時に刷り込まれたのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます