第900話 チビッ子編 👻 宇宙人襲来!?(3)宇宙人の基地

 司は母親に頼まれていた。

「お願いね。どうしても仕事が休めなくて」

「いいよ、大丈夫。試験休み中で暇だし」

「ごめんね、つかさ。ありがとう」

 そして司は、幼児番組が終わり、テレビの前で一緒に踊っていた怜が満足そうにテレビを消すのを見て、話しかけた。

「怜、兄ちゃんとお出かけしようか」

 怜は目をキラキラさせて、飛びついて来た。


 長い「試験期間」とやらの間、大好きな兄は勉強があるからと、怜は司の邪魔をしないように言われていて、ずっと遊んでもらうのを我慢していた。それがやっと終わったらしい。

「兄ちゃん、帰ったら暴れん坊将軍見よう。僕、御庭番になる!」

「怜は御庭番が好きか」

「うん!兄ちゃんは上様ね。それで僕、兄ちゃんの為に働くね!兄ちゃんは、『成敗』って言ってね」

 手をつないで、歩いていく。

 と、そこに着いた。ドアを開けて入ると、カウンターとソファがあった。そしてカウンターには、ピンクの服のお姉さんがいて、司は何かを取り出して渡す。

 そして、ソファでしばらく兄と絵本を見ていたら、

「御崎 怜君」

と呼ばれたので、大きな声で返事をした。

「はい!」

 ピンクの服のお姉さんが笑って、

「はい、どうぞ」

と言い、怜は兄に手を引かれ、奥のドアの向こうに入って行った。

 そして、それを見た。大きなイス。よくわからない機械。白い服を着て、白い帽子を被り、白いマスクで目以外を隠した3人。

「あれ?」

 独特の臭いもして、体の何かがキュッとし、心臓がドキンとした。

「はい、座ってね」

 3人のうちの誰かが言い、回れ右する間もなく、怜は兄にヒョイと抱き上げられてそのイスの上に座らされた。

「に、兄ちゃん?」

「左の上の奥歯が、少し黒いようで」

「ああ、わかりました。

 イスを倒すからね」

 ウイイイインと音がして背もたれが倒れ、寝ているような体勢になった。そしてその体を3人の白い人が取り囲み、力一杯抑え込むと、口を大きく開けさせられ、覗き込まれた。

「ああ、軽い虫歯ですね」

 中の1人が言ったようだ。その1人は後ろを向くと、棒のようなものを構えた。それが、ヒュイイイインと音を立て、怜は間違いないと確信した。

「兄ちゃん!宇宙人だ!ここ、UFOだよ!僕、改造されるよ!」

 と言ったつもりだが、口を広げられたままで喋る事ができず、ジタバタとしただけだった。

「はい、大丈夫だからねえ」

 ドリルが近付き、口の中に入れられる。

 キュイイイン、ガ、ガガガ――。

 怜は涙目になった。


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