第452話 仲間(2)お礼参り
大学構内にはコンビニもあるし、居酒屋もある。なので僕達は、親睦会という事で、居酒屋で飲むことにした。
が、僕と直の霊能師としての仕事上の知人が意外とチラホラいて、落ち着かないというので、皆で外に出た。
「トップにぃなるぞぉ、くそっ」
城北が座った目で言うと、豊川が、
「それでいい女を捕まえよう!」
と言い、富永が、
「正義を全うしてこそですよ。頑張りましょう!」
と再度乾杯を強要する。
「何でわらひは女に生まれて来らんれひょうか」
「意外と弱いのねえ。フフッ」
筧は酎ハイ1杯目ですでにできあがり、相馬は水のようにアルコールを飲んで顔色が変わらない。ただ、色っぽさが増していく。
「唐揚げに勝手にレモンをかけないでと……うっ、グスッ。衣がカリッとしたのが好きなのにぃ……」
真白田は皿をキッチリとした角度で並べながら泣き出し、それを、倉阪が穏やかに笑いながら、
「ここならあんまりかかってないぞ」
などと言って慰めている。
「スタイリッシュじゃないんだよねえ。次はフレンチとかがいいな」
安っぽいポテトフライをつまみながら及川が言えば、
「生じゃなかったら何でもいい」
と、黙々と食べて飲んでいた塚本がボソリと言った。
「あ、塚本って生がだめなの?生野菜も刺身も果物も?偏食なんだねえ」
そして、葵がケラケラと笑いながら、ペチペチと塚本を叩いている。
僕と直は、同期の仲間を眺め、疲れていた。
「カオスだねえ」
「これ、構内で飲む方がいいんじゃないか?悪評が立つぞ」
油ギトギトで味の濃い旨味の無い料理にはこんなものだと早々に諦感を抱いて、静かに飲む。
「このメンバーも濃いようだが、教官もくせ者って感じだな」
「そうだねえ。ボク達が雑談するのをしっかりと観察してたとはねえ」
「温水助教も、食わせ物だろ。『関わる気は無い』って宣言したようなものだし」
話していると、倉阪が入って来る。
「ああ、あれか。警察学校の方はもっと連帯感があって近い感じだと聞いていたから、意外だったなあ、確かに」
「ん、何?せっかくのたった12人の同期なんだから、仲良くやろうぜ!」
豊川が圧し掛かって来る。重い。
「たった12人ね。でも、仲間を排除しないと警視総監とかにはなれない。
そうだよね、城北」
葵が言うと、城北は
「その通り!私が総監になる!官僚一族の名誉にかけて!」
と高らかに宣言し、会話は最初に戻って行く。
僕は、葵はどうも計算高そうで要注意だな、と思いながら、
「そろそろ、かな」
と、直と倉阪に合図した。
帰り道は、数人がやや蛇行しながら、富永の音頭で行進しながら寮に向かっていた。
何のグループだと目撃者に思われるんだろうかと思いながら歩いていると、先の方に、迫田教官が歩いているのが見えた。
「あ、しゃこたきょうかんら」
甥の
しかし気になったのは、その背後、背中を丸めて同じ速度で歩く短髪の男だ。
「おかしいな。直」
「りょうかーい」
「え、何?スリとか?」
及川が声を潜めたまま言う。
「いや、ちょっと――おい、バカ」
止める間もなく、富永が突っ込んで行こうとする。
「正義の鉄槌を――!」
「やめろ、見付かる!」
倉阪が羽交い絞めにして止めたものの、教官にも男にもしっかりとバレ、目が合っていた。
「……お前ら……。ご近所に迷惑だけはかけるなよ」
迫田教官が、嘆息した。そして、男に目を向ける。
「ん?お前は、橋本か?」
男は迫田教官に近寄って行く。
「皆、ここにいてくれ。いいな。倉阪、頼む。
直、間に入っててくれ」
「わかった」
「了解だねえ」
言いながら、僕は2人に足早に近付いて行く。
「お久しぶりです、迫田さん」
橋本と呼ばれた男は、迫田に軽く頭を下げ、迫田のそばで足を止めた。
「出たのか」
「はい。今日。いやあ、この日が待ち遠しくてねえ。迫田さんにはお礼をしないとと思って」
橋本に憑いていた気配がグンと膨らむ。
やばい。
その気配が実体化しながら、掴みかかろうと迫田教官に腕を伸ばす。
「何!?」
迫田教官はそれに驚いて、棒立ちになっていた。
その迫田教官から、気配がグンッと大きく膨らんだのは、次の瞬間だった。
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