第451話 仲間(1)同期と教官
警察大学校。以前、霊能師として入った事はあったが、自分が在籍するとなると、また違って見える。
「とうとう来たなあ、直」
「そうだねえ、怜。いよいよだねえ」
僕達は今日からここで研修を受け、警察官としての第一歩を踏み出すのである。
「行こうか」
僕と直は、構内に足を踏み入れた。
警察学校とは違い、警察大学の新入生は、学校出たてが10人から15人と少なく、残りは昇任した現役警官である。
今年の真新入生は僕達を入れて12人で、その内の2名が女性だったのだが、何とも個性的な同期生揃いだった。
一番体格が大きくて目立つのが、
インテリ然としたヒョロッとしたのが、
話しやすいのが、
明るくて元気なアイドルみたいなのが、
やたらと鏡を覗き、髪に手をやるのは、
襟、ネクタイ、袖口。神経質に直してばかりいるのが、
女性二人に積極的に話しかけているのは、
ジッと黙って動かないのは、
どこか色気のある方の女性が、
もう片方の女性は、
「恋人はいるから。かわいいOLだから」
と爆弾発言をしてのけた。
これに、僕と直だ。
「御崎君と町田君が、今年の首席と次席の合格者らしいね」
早速、城北が絡んで来た。
「え、まあ」
「フン!」
うわ、やり難そう……。
「それよりもさあ、テレビに出てた霊能師だよね。えりなちゃんや美里様と、プライベートで会ったりできるの」
豊川が親し気に肩を組んで来、皆が、押し隠そうとする者もいるが、それなりに興味のある顔を向けて来る。
「そういうのは、ちょっとねえ。
それよりも、筧さんって空手のチャンピオンだってねえ」
直がにこにことしながら誤魔化しに入る。
「まあね」
かなり得意そうに筧が笑うと、及川が、
「ゴリラ女か。――いや、失礼」
と言って作り笑いを浮かべ、葵がクスクスと笑う。
「だめだよ、及川。男女差別だよ。
ん?男女、でいいのかな」
「性的嗜好が同じ女なのであって、性同一性障害ではないんだから。そうですよね」
富永が言って、軽く葵を睨む。
「はあい」
葵は調子よく謝ったが、それで、変に筧が浮いてしまいそうだ。
「他人のプライベートに構う暇なんてないくらい、絞られるのかな。教官ってどんな人だろうな」
「鬼教官かねえ、教科書通りの」
僕の振りに直が上手く乗り、話題は他へ流れて行った。
ややあって、教官2名が現れ、僕達はピシッと直立して向かい合った。
そんな僕達を見渡し、年嵩の方がニヤリとした。
「教官の
もう1人の柔らかな笑顔の方が言う。
「助教の
迫田教官が、チッと舌打ちをした。
僕は、この個性的なメンバーに、面倒臭い予感が早くもするのを感じていた。
その男は、高い壁のある施設を出て、殊勝な顔付きで歩き出したが、それは数メートルで引き歪んだ。
「やっと、あいつに復讐できるぜ。待ってろよ、クソ刑事が」
小声で吐き出されたその声を、拾う者は誰もいなかった。
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