第433話 変わる写真(1)バンド仲間

 1月になり、学校が始まる。

 心霊研究部の部室にも、いつも通り部員が集まって来て、宗の持って来たお土産でおやつにしていた。

「へえ。小父さんの同窓会かあ」

 御崎みさき れん、大学4年生。高校入学直前、突然、霊が見え、会話ができる体質になった上、神殺し、神喰い、神生み等の新体質までもが加わった、霊能師である。面倒臭い事はなるべく避け、安全な毎日を送りたいのに、危ない、どうかすれば死にそうな目に、何度も遭っている。

「はい。高校の時のクラスらしいです」

 水無瀬宗みなせそう。高校時代の1年下の後輩で、同じクラブの後輩でもあった。霊除けの札が無ければ撮った写真が悉く心霊写真になってしまうという変わった体質の持ち主だ。背が高くてガタイが良くて無口。迫力があるが、心優しく面倒見のいい男だ。

「いいねえ。同窓会かあ。仲の良かった友達も、仕事とかで離れたら、中々会えないもんねえ」

 町田まちだ なお、幼稚園からの親友だ。要領が良くて人懐っこく、脅威の人脈を持っている。高1の夏以降、直も、霊が見え、会話ができる体質になったので本当に心強い。だがその前から、僕の事情にも精通し、いつも無条件で助けてくれた大切な相棒だ。霊能師としては、祓えないが、屈指の札使いであり、インコ使いでもある。

「仕事も住んでる所も別々でも、一気にその時みたいな感じになるんだろうなあ」

 高槻楓太郎たかつきふうたろう。高校時代の1年下の後輩で、同じクラブの後輩でもあった。小柄で表情が豊かな、マメシバを連想させるようなタイプだ。

「せやなあ。オレらが幼稚園の頃の友達と会うんでも懐かしいのになあ」

 郷田智史ごうださとし。いつも髪をキレイにセットし、モテたい、彼女が欲しいと言っている。実家は滋賀でホテルを経営しており、兄は経営面、智史は法律面からそれをサポートしつつ弁護士をしようと、法学部へ進学したらしい。

「何でも、当時は一緒にバンドをやってたらしくて、同窓会の手紙が来てからというもの、うちではしょっちゅう懐かしい感じのロックがかかってましたよ。もう、覚えてしまいそうですよ」

 宗は苦笑した。

「楽しかったんだろうねえ」

 皆でそんな風に言っていたのだが、まさかそんな事が起ころうとは、夢にも思っていなかったのだった。


 宗が家に帰ると、父親が喪服を着ていた。

「どうしたんだ、そんな恰好で」

「ああ、宗。

 豊中のやつが、心筋梗塞でなあ。つい昨日、笑って別れたばっかりだったのになあ」

 そう言って、溜め息をつく。

「親父も同じ年なんだし、気を付けてくれよ」

「そうだな」

 父親は小さく笑って、家を出た。

 宗はテーブルの上の集合写真を見るともなく見て、ふと、違和感を感じた。

「何か……あれ?」

 どこがどうとは言えないが、最初に見た時と、どこか違う気がした。

「いや、気のせいだよな」

 恩師を真ん中にした集合写真をもう一度眺めてみるが、比べる事もできないので、わからない。とりあえず、父親の辺りを見る。

 仲の良かった4人組が、固まっていた。豊中さんが正雀しょうじゃくさんの肩に片手を置いて、皆、楽し気に笑っている。

「いいなあ、こんなの」

 自分達がこういう風に並んでいる所を想像しようとし、年をいった姿が想像できなくて、宗は考えているうちに違和感の事を忘れてしまった。



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