第406話 新人研修(4)疲労困憊
新人2人の研修評価を提出する。
「大丈夫か、おい」
幸い肋骨は無事だったが、打ち身と筋肉痛が凄い。
「死ぬかと思いました……」
「すまん」
部長は申し訳なさそうに頭を下げた。
「草野さんは経験を積めば自信もついて大丈夫でしょうねえ。東洞さんは、あの根拠のない自信をどうにかしないと、本人も、それより周りが死にますよねえ」
「わかった。本当に、ご苦労さんだったな」
僕と直は部長に礼を――したかったができなかったので、目礼をして部屋を出た。
夕食の席で研修の話をしたら、兄と冴子姉は微妙に笑いそうな顔をしていた。
「それは、大変だったな」
「そうか。それでこのメニューなんだな」
納得したように、改めて夕食のテーブルを眺めた。
かつおのたたき、豚の冷しゃぶサラダ、タコ酢、豆ごはん、じゃがいもとニラの味噌汁。
かつおやまぐろ、鳥の胸肉に含まれるイミダゾールジペプチド、クジラに含まれるバレニン、豚などに含まれるビタミンB群、酢の物。これらは、疲労回復に良いとされている栄養素だ。
豚の冷しゃぶサラダは、豚を60度くらいの湯で軽くゆで、ザルに上げて、水にさらさずに冷やすのが美味しさのコツだ。こうすれば固くならず、柔らかい。そしてタコは、ぶつ切りでも構わないが、表面をギザギザの波型にした削ぎ切りにすると、酢やしょうゆなどが絡みやすいので、刺身の時などにも良い。
「いやあ、お疲れ様」
「美味しいわあ。作るの大変じゃなかった?」
「大丈夫。気分転換にもなるし」
答えると、甥の
「ああーう」
と何か言う。
「そうか。労ってくれるか、敬も」
それを見て、皆でホッと和む。
「まあ、とにかく、しばらくはのんびりできるな。後は官庁訪問か」
「まだ、合格してるかどうかわからないよ」
「してるに決まっているし、しているとして予定を今から組んでおきなさい」
「うん、わかった。はい」
「でも、あれだぞ。警察に採用されたら、最初は体力トレーニングがきついぞ」
「ああ……受かったら、体力作りをするべきかな」
和やかに夕食をとりながら、体力作りをしようと、僕は固く決心したのだった。
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