第312話 新しい戦争(3)心霊戦争
体重と重力加速重による落下エネルギーで、グングンと怪獣に近付く。刀を出して握り、その落下エネルギーを利用して勢いよく怪獣に斬りかかる。
首に深い傷を負わせたが振り払われた。そこへ滑り込んで来た札を蹴って、再度斬りかかる。
それを数度繰り返すうちに、怪獣は体の一部を失い、小さくなっていった。
こんなもんか。そう見極めたところで、一気に、生物ならば致命傷となる一撃を食らわせる。怪獣は硬直したように動きを止めてから、スウッと消えて行った。
札を蹴って護衛艦の甲板に降り立つ。
怪獣とつながっていた術者に対し、絞り込むようにした神威を撃ち込むようなイメージで放つ。やったことはないが、やればできるものだ。
それは術者の体に突き刺さるようにしてそこに到達すると、かなりの衝撃を術者とその周囲に与えたらしい。そして、その辺りの霊は根こそぎ消えたようだ。
それを見澄ましたように、別方向から、雑魚だが大量の霊が浮遊して送られて来る。
「送り付け詐欺か」
そちらへ向けて、神威を叩き付ける。
霊は、砂糖に水をかけるように消えて行き、それを送り込んできた観測者達まで到達すると、怪獣の送り主ほどではないものの、術者を揺さぶってインパクトを与えたようだ。
やり過ぎたか?
「照姉」
呼んだら、照姉が荘厳な天照大御神バージョンで現れた。
「ありがとうございます」
「なあに。ヒト一人でのみ守護しているとか思われたら困るだろうからな。私も、それは避けたい」
観測者達は、僕が天照大御神の神威を借りたと思うだろう。思って欲しい。思え!
こちらを窺う目は、完全に消えた。
ヘリが甲板に着艦し、直が下りて来る。
「照姉も来てくれたんだねえ」
「ふっふ。霊的に日本を攻めようなど、100年早いわ。
次にまた怪獣大作戦をして来たら、こちらも神様オールスターズで受けて立つ。他のやつらにも伝えておこう。ついでにイエスも来させよう。あれは意外と、来たがるからな」
「ああ。向こうは一神教で、友達がいなくて寂しいんじゃないかな」
「成程。そうかもな。何だ、寂しんぼうか。はははっ」
照姉は笑いながら、帰って行った。
僕と直は「ははは」と笑いながら周りを見た。
「あれ?誰も動かないぞ」
「あ、怜。神威が駄々洩れだねえ。そりゃあ近寄れないねえ」
「あれだけの放出をしたからな。いきなりトップスピードの車が止まれないのと一緒だろ」
「それはわかるんだけど、慣れてない人は、恐れ多すぎるというかなんと言うか、腰が抜けてるねえ、たぶん」
「中に入っていいのかな」
「挨拶とか、報告もしないといけないしねえ」
「ヘリも初めてだったけど、護衛艦も初めてだ。どっちもいいな」
「後は戦車と潜水艦だねえ」
「あ、それも興味ある。戦闘機は、流石に無理だしなあ」
僕と直は、一番偉い人を探しに、船内に入って行く事にした。
無事に艦長に会い、無線で報告をしてもらう。
すると、結女の神が現れた。
「面白い事になっているわよ。周辺の数か国で、施術中の政府関係の術者が一斉にダウン。しばらく使い物にならないくらいのトラウマを植え付けられたみたいよ。覗き見して、隙ありと攻撃に転じた罰よね。怪獣の方の術者は、再起不能ね。いい気味。
どの国も、電話とネットで凄い勢いで報告が回ってるわよ」
「やり過ぎたかな」
心配になって来た。
「自業自得。やられたら倍返し、いえ、4倍返しよ。じゃあね」
とても機嫌がいいようだ。嬉々として、少し前に流行ったドラマのセリフを言い、帰って行った。
「結女の神って、ドラマ好きなんだねえ」
「ああ。再放送とか、ネットで見てるのかもな」
テレビっ子の神様か。ううむ。
ともあれ、どうにか霊的攻撃は凌いだようだった。
しかし、敵はまだ、いたのだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます