第33話 探す・直(1)消えた一日と妹の秘密

 青空が高い。ボクは空を見上げて溜め息をつこうとし、その姿勢では難しいのだと知った。

 町田 直、高校1年生。要領の良さと人当たりの良さを自負している。家族は父と母、妹が1人。

 それと、親友と呼べる友人が1人。 御崎 怜。幼稚園からの仲で、進学した高校も同じなら、所属するクラブも同じだ。面倒臭い事を嫌いつつも、結局はお人好しで、面倒事に振り回されている。特に、春に突然霊が見え、会話できる体質になってから、その傾向が強い。

 実はそのクラブが、危機に陥ろうとしている。

 年に1度、クラブは活動報告をしなければならず、しなければ、部室も予算もなくなり、部は廃部となってしまうのだ。文化部は大抵文化祭での出し物などでこれに代え、我が心霊研究部もそのつもりではあるのに、残念な事に、そのネタがない。体験した事件は色々あれど、表に出せなかったり、写真などがなかったりするのだ。

 なので、田舎に行ったついでに、出ると噂の近くの廃村に来てみたのである。

 いくら打ち捨てられて無人でも、何となくいい気はしない。壁の崩れかけた蔵の重そうな扉に恐る恐る手をかけた。中は暗く、独特の埃臭い臭いがしており、廃品なのか、乱雑に物が散らかっている。

 1歩中に入ると、足に何かがコツンと当たった。ほぼ反射で手を伸ばすと、触れた瞬間、頭がズキッとした。でもそれきりだったので、その時はすっかり忘れ、そのバッジを拾い上げた。社員章らしい。ここに住んでいた人のものかな。

 それをまたそこに置いて、ボクは外に出た。

 おかしいと気付いたのは、その日高速に乗って家に帰っている時だ。

 道端に、血まみれのライダーがいた。誰も何も反応しないので、見間違いかと思った。が、以前怜がいると言っていた交差点を渡ろうとしてはねられ続ける人が見えたので、わかった。これは、霊だ。見えるようになったのに間違いない!

 幸い怜という先達者(?)がいるので、簡単に予想できたし、不安もなかった。怜には周りにこういう事例がなかったから、さぞや不安だったのだろうと、今ならわかる。あの時わかった気でいたのは、実は、全然わかっていなかったのだと。


 さらに、おかしい事が起きた。夜寝て、気が付いたら翌日の夕方で、部屋の真ん中で、泥だらけの服を着て突っ立っていたのだ。1日分、記憶がない。

 財布を見てみると、小遣いがごっそり消えていた。心から恐ろしさに叫びそうになった。

「CDは!?デジカメ買う為に溜めてたボクの小遣いは!?」

 途端に、ノックもなくドアがバン!と開けられ、怒り狂う妹が乱入してきて、薄い本を翳して怒った。

「お兄ちゃん、勝手に人の本見ないで!」

「何の事?手作り感満載の本だねえ。同人誌かあ。……ん?何で男同士が抱き合ってるの?」

 妹はハッとして本を後ろに回し、

「言ったら殺す」

と、また乱暴にドアを閉めて出ていった。

 妹は、腐女子だったのか……知らなかったよ……。

 色々混乱し、打ちのめされた日だった。



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