第3話 同じだけど違う
片瀬江ノ島駅で電車を降りると、冷たい風が吹きつけてきた。車内で
中華街のお店を思わせるような駅舎を後にして、江ノ島水族館へと歩き始めた。
江ノ島水族館でチケットを購入して館内に足を踏み入れた。
周りの人の目を気にしたのか、麻衣は咲太の手を離した。
「えー」
咲太は
「いつまでも調子に乗らないの」
と、流されてしまった。
手を
最初は、
隣を見ると、麻衣の瞳が魚たちに
麻衣の姿を見て、ふと今までの思い出が頭をよぎった。
一年前の五月三日、麻衣は
その四日後、バニーガール姿の麻衣と出会い、
「なに、ぼんやりしてるのよ」
下から顔を
「色々あったなあって思ってた」
「なにそれ」
麻衣の瞳は、不思議な色を浮かべていた。
「この八カ月くらいのことですよ。麻衣さんと出会って、麻衣さんと付き合って、麻衣さんとデートして」
「そうね」
綺麗な笑みを浮かべながら、瞳だけはこれ以上恥ずかしいことを言うなと語っていた。それでも、麻衣が今この瞬間を大切に思っていることを咲太は理解していた。同じ時間を同じ気持ちで過ごしていることが、たまらなくうれしかった。
ほんのり赤くなった顔をごまかすように麻衣が歩き始めた。
「ほら、行くわよ」
少しだけ駆け足で麻衣の隣に並んだ咲太は何でもない疑問を投げかけてみた。
「前に来たときは、どの魚が
何かを意識したわけではなかった。
でも、言葉を止めることが出来なかった。
嫌な予感がした。
一本道の運命のレールの上にいて、行きつく先はおなじみの場所のような。
麻衣が咲太の方を向くことなく、少し
「江ノ島水族館に来たのは初めてよ。昨日話したの忘れたの?」
魚に
それだけが、聞こえる――。
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