閑話 カグラとキリル

 ――ブルノイユの宿屋、食堂。


俺「ということで、自己紹介しよう!!!」


キ「どういうわけかは知らんが分かった」


俺「とりあえずエール2つお願いしまーす!」


キ「カグラの今までの礼儀正しいキャラはどこへ行ったんだ?」


俺「こっちが素」


キ「なるほど。根っからの馬鹿ってわけか」

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俺「キリルってどうやって勇者になったの? 先天? 後天?」


キ「俺は後天性だな。そういうカグラはどうなんだ?」


俺「俺は先天性なのかなー。名づけのときだったからたぶん!」


キ「勇者になった理由はあれか。みんなを笑顔にしたいってやつか」


俺「そのとおーり! そのためにもとっとと大陸を渡れるようになりたいね」


キ「渡れるような金が貯まるのはいつになるのやら……カグラのお人好しっぷりじゃ相当先だな」


俺「キリルはすぐに『馬鹿』とか『お人好し』っていうけどなんなのさ!」


キ「当然のことを言ったまでだが? 冒険者なんだから金に汚く生きろ」


俺「俺だって金は大事にしてるよ!」


キ「所持金は?」


俺「2000ちょい」


キ「俺は4000ある。くっくっく、お? なんか言ったらどうだ?」


俺「おのれ、キリルめ……」


キ「そういうことだ。早く渡りたいなら昨日みたいなことは控え……」


俺「――それは出来ない。キリルと組んでても人助けはするよ」


キ「……。あれが人助けだと? 人の物を盗むような悪党に金を恵んでやることがか? お前の頭はどれだけお花畑なんだ?」


俺「あの子はまだ幼い。それでも必死に生きようとしているんだ。それを俺たちが補ってやるんじゃないのか?」


キ「補う? それは全員にしてやれるのか? それはお前の自己満足だろ」


俺「自己満足なんかじゃない。確かにキリルの言う通り全員を助けられないのは俺も分かってるんだよ。それでも目の前に助けられる人がいるのなら少しでも力になりたいんだ」


キ「なるほどな。いきなり強く当たっちまって悪い。ただあんなのはただの施しだ」


俺「けどッ!」


キ「――これは事実だろ」


俺「……。」


キ「だから、別の方法を考えようぜ? カグラの考え方は俺も嫌いじゃないからな」


俺「キリル……ありがとう」


キ「いいってことよ」

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キ「じゃあ、明日にでもあのガキんところ行って冒険者にするでいいんだな?」


俺「それでいこう」


キ「ところでだ。カグラが脳筋ってのは分かったが、何の武器を使うんだ?」


俺「基本的に剣かな。他にも(5種類くらい)使うけどね。なんでそれを今?」


キ「(他って短剣のことか)これからの戦闘のために決まってるだろうが。俺も剣だ。ただカグラに比べて俺は前衛能力が低いからな。基本はカグラが前で俺が後ろになりそうだな」


俺「武器変えるときは言った方がいい?」


キ「そうだな。間合いが変わるしその方が連携もしやすいだろ」


俺「おっけー。あとキリルに魔法を教えて欲しいんだけどいいかな?」


キ「ヒールは使えるんだろう。あとは慣れだけだと思うがなんでだ?」


俺「実は攻撃魔法は一切教えてもらってなくてなんも出来ないんだよね」


キ「そういうことか。なら、構わないさ。代わりといってはなんだが、俺に剣を教えてくれないか?」


俺「俺なんかでよければ教えてあげるよ」


 その日の夜から互いに得意な分野を教えあうのが始まった。しかし、俺は感覚で剣を振っているしキリルも感覚で魔法を扱うタイプだったため、その日の夜は何の成果も得られなかった。

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