第11話 報告

 【スライムの森の深部】という猿地獄から無事帰還を果たした私は、戦闘の疲れと徹夜だったことから宿に戻るとすぐに眠ってしまった。

 私が次に目を覚ました時にはすでに陽が沈みかけている時刻だった。

 いまだに疲れが残る体を起こし、遅い昼食をとってギルドに向かった。

 _____

 ___

 _


「カグラ・アステライトです。【スライムの森の深部】から戻ってきました。フリーで討伐報告をお願いします」


「お帰りなさい。フリーですね。かしこまりました。それではライセンスをここにかざしてください……って、シルバーエイプの群れをソロで殲滅せんめつしたんですか!?」


 私がお金いくら貰えるかなー。と考えていると受付嬢が急に大声をあげるものだから、驚いてしまう。


「あはは……まぁ……でも、シルバーエイプの単独討伐推奨Lvは40でDランク冒険者なら適正ですよね? 別に何も驚くようなことはないと思うのですが?」


 彼女は自分が取り乱したことに気が付いてコホンッと小さな咳払い1つ。冷静さを取り戻して説明してくれた。


「群れを作る魔物の強さは群れの大きさに起因します。それらの情報は平均的な群れの大きさから導かれていて、大体の群れは10から20匹程度です」


 ん?


「今回、カグラさんが殲滅した群れは100匹を軽く超えています。これはCランクに匹敵します」


 んんん?


「しかも! これほど大きいとなると、群れの長のシルバーエイプも特殊な生態を有していたかもしれない! そのあたりはどうでしたか!!!」


 んんんんん!?


 受付嬢が身を乗り出して聞いてくるものだから、寝ぼけていた私も目が覚めた。

 おそらく受付嬢の言っている特殊な生態は「月の光による強化」のことだろうか?

 その後、いくつかの情報のやり取りをし、今回の報酬として3500Gを受け取り、ホクホク顔で宿に帰る。

 _____

 ___

 _


 今日は何もやる気がおきないので、夜までゴロゴロだ。ゲームやマンガといった娯楽はないが、やれることはあるので苦はない。

 初めにやることは……


「ステータス、オープン」


 光の線が集まって文字を形作るのは何度見ても美しい。

_______________

カグラ・アステライト

18歳 女性

種族:ヒューマン

職業:勇者

出身:地球

称号:異世界からの旅人

夢の力:くじけぬ心

≪通常パラメータ≫

Lv :25 (6↑)

HP :450(108↑)

MP :21 (5↑)

ATK:253(64↑)

DEF:255(64↑)

M A:44 (10↑)

M P:44 (10↑)

SPE:260(64↑)

DEX:253(54↑)

≪基本パラメータ≫

STR:18

VIT:18

INT:5

MND:5

AGI:18

DEX:18

_______________


 随分とLvが上がったものだ。相変わらず魔法系統のパラメータは伸びが悪いな。その分、脳筋だから釣り合いが取れているはずなんだが、伸びが大きすぎるのが不安だ。

 DEXなんか脳筋にいるのか? とか思っていたが、練習してる剣だけじゃなくて、槍、斧、短剣と色々扱っても、それなりに出来たのはこれのおかげだろう。

 他にもDEFには自信があるがために


「……防御力と耐久力は考慮しなくていいので、よりデザインがかっこいいものや機能性がいいものでお願いしたいです」


 なんて言ってしまったが、銀ゴリラの攻撃をくらった後だと、なんであんなことを口走ったのかと過去の私をぶん殴ってやりたい。

 ATKとSPEは十分に通用したから、なんとかなるだろう。


 それよりもM POWだ。最悪、攻撃魔法は使えなくてもいい。だが、これ以上あのクソ不味い薬草を食べるのはごめんだ。あれにいちいち金を払うのが馬鹿馬鹿しい。早く回復魔法を覚えたい。


「……というわけでシャロン助けて!」


 私は食堂でアイル達と夕食を食べている時に打ち明けてみた。


「えーと……魔力を感じ取ってもらわないと、教えられないというか……なんというか……」


「ははははは! シャロンを困らせるんじゃねぇよカグラ!」


「ほう? そういうアイルは魔力を感じ取れるのか? ん?」


 アイルめ、お前も同じ穴のむじなのはず「――ほれ」やれやれそんな簡単に出来るわけ……

 そう言ったアイルの手のひらにはオレンジ色の玉が1つ浮かんでいた。


「えええええ! アイルって戦士だから脳筋じゃないの!?」


「誰が脳筋だ!」


「それは魔力を操作しただけで魔法とはとても呼べないけどね」


 アイルに裏切られ驚いていた私はカナンのフォローを受けると、途端に勝ち誇った顔を浮かべてアイルを見下してやった。


「けど、カグラさんはそれも出来ないんすよね?」


 だが、エイトの一言が私にクリティカルヒットしたため、テーブルに伏せた。


「じゃあ、明日から本格的に特訓しましょう!」シャロンが笑顔でそう告げ、この話は幕を閉じた。


「そういや、カグラはこの先どうするんだ? まさか、この町で冒険者やっていくわけじゃないだろ?」


 アイルは期待を込めたいい笑顔でそう私に問いかけた。


「うん。とりあえず【中立国家ブルノイユ】の首都【ブルノイユ】を目指そうかと思ってるよ」


「それはいいな。で、いつごろ出るんだ?」


「4日後に服をもらったら出ようかと思ってるよ。だけど、見送りだけでいいからね?」


「わかったわかった」アイルはそう笑いながら言った。

 私達は食堂を後にして眠りについた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る