第8話 修羅の2日間―その1
私は目を覚ます。普段はもう少し遅くまで寝ているが、昨日は魔法の練習もしないで寝た。それよりも金がないという事実のほうが恐ろしいからだ。
二日後の剣を受け取る日までに出来るだけ金を稼ぐ。
あわよくば、ゆとりのある生活をしたい私は1つの覚悟を決めた。それは……
今日、明日の2日間は魔物を狩る修羅になると。
昨日確認した情報によると、この町周辺の狩場は主に4つ。
1つ目は魔物も弱く、遭遇率も低い【スライムの森】――探索推奨Lv10
2つ目は魔物は強いが、遭遇率の低い【北の草原】――探索推奨Lv20
3つ目は魔物は弱いが、遭遇率の高い【東の街道】――探索推奨Lv15
そして最後は魔物も強く、遭遇率も高い【スライムの森の深部】――探索推奨Lv30
安全に行くなら【東の街道】だろう。しかし、私はあえて【スライムの森の深部】に行く。疑問に思うのも当然だ。なぜ物理攻撃の効きづらいスライムを倒しに行くのかと……だが、それは違う。【スライムの森の深部】といわれているが、主な生息魔物はトレントやエイプ、オオイヌ、ゴブリンなどの森を住処にする魔物たちが多い。
中でも私が狙うのはエイプ。でっかい猿なら物理攻撃も通るし、私の方が速い自信もある。そのためヒット・アンド・アウェイで倒せる気がする。
問題なのは武器の耐久力だ。さいわいレイスからは、一通りの武器はもらっているため、壊れても槍でぶっさしたり、斧でぶったぎればなんとかなるだろう。
と、なんだかんだと理由をあげたが、要するにそこらへんの魔物だと手ごたえもなくレベルも上がらないため強いやつと戦いたいというだけだ。
食料や薬草、足りない道具を買い込み、ギルドの受付で討伐依頼の有無を確認する。
「今日から2日間、【スライムの森の深部】に行くのですが、何か討伐依頼とか気を付けた方がいいこととかありますか?」
「討伐依頼ですとこのあたりですね。あとは、移動に時間がかかるので転移の指輪の登録と食料さえ準備すれば大丈夫だと思います」
「うーん、エイプとかあれば嬉しいんだけどないなら、フリー――討伐依頼を受けずに魔物の討伐を記録する際の手段で依頼に比べて報酬が下がる――で報告しますね」
「かしこまりました。それではお気をつけて」
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【中立国家ブルノイユ】に属する東端の小さな町から西南に広がる【スライムの森】。そこを南に抜けた【スライムの森の深部】に位置するところ。その森でPTも組まず行動する影が1つ。そう私、カグラだ。
ここまで来るのに6時間といったところだろうか。昼食をとり、いよいよ狩りの始まりだ。なるべく足音を立てないように気を付けながら進む。
初めに遭遇したのは3匹のオオイヌのグループ。まだ誰も草むらに隠れる私の存在には気付いていないようだった。とりあえず、1番体格のいいやつを不意打ちで仕留めるために動く。
草むらから飛び出し、首めがけて剣を上から振り下ろす。頭が落ちたことを確認し、返す剣で隣のオオイヌを下から斬り上げる。オオイヌは大きく吹っ飛び、近くの木に激突した。そこでようやく、敵の襲撃に気付いた3匹目のオオイヌが私の隙を突いて噛みつきにくる。
が、斬り上げた勢いそのままに回し蹴りで隙をカバー。
蹴りは躱され距離もとられたが、吹っ飛んだやつは動いていない。最後のオオイヌとの1対1だ。
そう考えているとすぐにオオイヌが動いた。
先ほどの噛みつきのような大きい動作の動きはなく、爪で引っかいたり、体当たりだったりと隙の少ない動きが多い。
しかし、遅い。オオイヌの前足による攻撃を払い、後ろ足を斬りつけた。機動力を失い、動揺したオオイヌに一閃――首が落ち、オオイヌは動かなくなった。最後に吹っ飛んだオオイヌにもとどめを刺して【スライムの森の深部】での初戦闘は幕を閉じた。
くっ……
途中ゴブリンやらスライムもいたが無視して、森を進むと唐突に枝が動き始め、私に攻撃をしてきた。
目当ての1つであるトレントだ。
だが、様子がおかしい。トレントは大人しく、こちらから攻撃を仕掛けない限りは襲われないはず。今は考えても仕方ないため、一先ず倒してから考えよう。
トレントの大きさは5mから6mくらい。根は地中からすでに出ており臨戦態勢だ。枝が2本。根が10本で相当な年月を生きているトレントと察しがつく。
枝を上から叩きつけ、根で横から薙ぎ払う。手数にものをいわせた戦い方。何度か隙をついて斬りつけるも、刃が通らなく切断には至らない。
そこで斧に変えてみたが、重く、取り回しが難しいために上手く攻撃を当てれない。根を1本切断したところでまた剣に持ち替える。
私は根の薙ぎ払いを後方に大きくジャンプすることで避ける。薙ぎ払いの勢いが弱まった瞬間に全力で接近。
スピードを落とさずに剣を根に向かって下から大きく振りあげる。すると根はミシミシと音を立てながら、引きちぎれて吹き飛んだ。
今までは斬ろうとして、地面に叩きつける結果におわり大したダメージではなかった。それを斬るのではなく吹き飛ばすならどうだろう。今まで下に加わっていた力が外に向けて加えられたなら……こうなるというわけだ。
ようやく攻略の糸口をつかみ、そのままの調子でさらに2本を吹き飛ばす。
これで合計4本の根を失ったトレントは冷静に攻撃方法を変えてきた。今まで薙ぎ払っていた根を枝と同様に叩きつけ始めた。
これなら下から斬り飛ばせないとでも思ったか――
私は剣をしまい、振り下ろされた枝を両手で受け止めねじ切った。
それなりにダメージはくらったが支障はない、トレントも驚いただろう。再度、薙ぎ払い攻撃を始めたので、剣で2本吹き飛ばしてやった。あとは4本の根と1本の枝。
ここまでくればあとは楽勝だ。手数も減ってきたので、斧に持ち替えて1本ずつぶったぎっていく。残り2本で抵抗も弱くなってきたので幹を上から真っ二つにして終わり。
さて、かっこつけて素手で受け止めたダメージを回復させるために薬草を……
あれ? 薬草って食べればいいのか? それとも手に塗るのか?
回復薬とかポーションは飲むから、食べるのが正解か――って、まっず!
こんなの人が食うもんじゃないぞ。
「ステータス、オープン」
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カグラ・アステライト
≪通常パラメータ≫
Lv :19
HP :340/342(18↑)
MP : 16/ 16(1↑)
ATK:189(10↑)
DEF:191(9↑)
M A:34 (4↑)
M P:34 (4↑)
SPE:196(9↑)
DEX:199(9↑)
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一応、ステータスを確認するがしっかり回復してるようでよかった。と、同時にLvが1つ上がっているのも確認することが出来た。Lvが上がっても全回復はしないことも分かり、無理は出来ないなと思う私。
もう暗くなってきたため、ここで野宿することにした。
このとき、なぜ、トレントが襲い掛かってきたのかを考えていれば、そんなことはしなかっただろうに……暗闇の中で光る無数の怪しい瞳に気付かず私は眠りについた。
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