第6話 情報収集―その2
オウルさんに追い出された私は資料室にいた。
冒険者ライセンスを司書の人に見せ、入室の許可をもらい、ついでに解読の眼鏡――字が読めない人も読めるようになる魔道具――を借りる。歩きながら棚を見ていくと、カテゴリーごとに整理され探しやすいようにされていた。司書さんの頑張りが分かるというものだ。
さてと、目当ての資料は……っと。あったあった。周辺情報。
そう俺が探していたのは、この町周辺の地図や頻繁に目撃される魔物の情報、危険な場所など今後の方針を決めるうえで必要になりそうなものだ。そんなものがあるか司書さんに聞いたら、各地の冒険者ギルドがそれぞれまとめているものがあると教えてくれたのでそれを探していた。
それがこの周辺情報だ。さてとまずは【スライムの森】についてかな。
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【スライムの森】
探索推奨Lv10以上
主な生息魔物
・スライム(PT討伐推奨平均Lv3)
・スライムキング(PT討伐推奨平均Lv30)
追記
スライムキングは森の主で比較的穏やか。
稀に複数匹発生すると、森で人を襲う。
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スライムキング強っ! あの時の私たちは5人パーティーだったけど、平均レベル20あるかないかくらいのはず……気になるからスライムキングの詳細を記したページを読んでみる。
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スライムキング
単独討伐推奨Lv50
PT討伐推奨Lv30
特徴
・戦闘時は多数のスライムを発生させる
・物理攻撃が効きにくい
・単調な攻撃が多い
・高い再生能力
対策
・中級魔法数発で倒せる
・魔法の詠唱をスライムに邪魔されないように後衛をしっかり守ること
追記
・討伐は難しいが足止めや逃走は容易
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パーティーの連携や作戦が討伐のために必要だったということか。
私は他にも為になる情報がないか周辺情報を読み込んだ。
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「カグラさんもう夕方ですよ。宿屋に帰らないと夕ご飯が無くなってしまうのでは?」
「もうそんな時間でしたか。ありがとうございます。また来ますね」
司書さんに声を掛けられて、資料室を後にする私。
ギルドから宿屋までの帰り道に大事なことを思い出した。今日の夕ご飯までアイル達におごってもらうのかということだ。実はアイテムボックスを漁ると大中小様々な硬貨があった。食堂でカンナが払っていたのも似たようなものだったので、お金のことを聞いてみてもいいかもしれない。
――――宿屋の食堂。
「ってことがあったんだよ」
私は朝と同じくアイル達と食事をしていた。そんな折、オウルさんと何を話したかという話になり、簡潔に話をまとめたところだ。
「アイル達はどうだったのさ。Eランク冒険者として初めての仕事は?」
「余裕だったな! Fランクのころよりは手ごわかったがスライムキングほどじゃあなかったからな」
彼らも順調に成長しているようだ。シャロンが「え? 何言ってるのこの人?」って顔をしているから少し誇張が入っているんだろうけどね。
「そうだ。カナンに教えてほしいことがあったんだ」
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「今、カグラが持ってるのはぴったり1000
「それって多いの?」
「Dランク冒険者にしては少ない方ね。私達でもパーティー資金は1400Gくらいあるわ」
ということだった。金貨何枚とかではなく統一されているので分かりやすい。様々な硬貨も1円玉、10円玉、50円玉のような扱いだった。そんなわけで今日からは自分で支払いをすることになった。
「なら、カグラさんは明日空いてるっすか? お金のことも分かったんで、市場調査がてら町を案内するっすよ」
「お、いいね! ちょうど何しようか迷ってたんだよね」
――――なんやかんやで翌日。
いまだに魔力を感じ取れなくても私は元気です。
カナン曰く、魔力は血液と似たようなもので、全身を巡ってる。それをこうギュッと力を込めて1ヶ所に集めて、そーっと流す感じとのこと。
シャロン曰く、魔力は体外を覆う薄い膜のようなもので、体の中心から放出されている。それを集中して1ヶ所に集めて、優しく放つとのこと。
2人とも同じことを言ってるようで少し違う。そのことを考えながら朝食をとっていた。今日はエイトと町巡りだ。
「それじゃあ、行くっすよカグラさん」
「今日は案内よろしくねエイト」
「まずは教会に行くっす!」
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「着いたっすよ。あれがこの町の教会っす」
そういってエイトが指差した先には周りの建物より一回り大きく、大きな両開きの扉に三角の屋根。そして、屋根の上には特徴的な大きなシンボル――十字架ではなく太陽に近い気がする――があった。まさに教会だろう。
「シスター入るっすよ。新しい冒険者さんを連れてきたっす」
エイトがそういうと奥から黒い修道服を着た初老の女性がハッキリとした足取りでやって来た。
「おやおや、お嬢さんよく来たね。私はこの町の教会のシスターを務めている者です」
「初めまして、昨日冒険者になったばかりのカグラです」
「そうかいそうかい。ってことは転移の加護を受けるのは初めてだね。ついておいで」
彼女について行き教会の中の礼拝堂に進んだ。
そこはステンドグラスや美しい絵などは飾られていなかったが、花瓶や外の光を上手に取り込むことで質素だが気持ちのいい空間になっている。
「では、カグラ。光の精霊様に祈りを捧げなさい」
また祈りか。今回も形式だけで大丈夫かな?
私が手を合わせて祈っていると、しばらくして暖かい光が私を包んだ。その後に光は指輪の中に納まっていった。
「これでカグラはこの教会の加護を受けたよ。いつでも寄ってかまわないからね」
その言葉を最後に私達は教会を後にした。
「次は鍛冶屋っす」
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「ここが俺のオススメする鍛冶屋っす」
なんとも小汚い店構えだったが、とりあえず中に入ってみた。
店内も掃除はあまりされていないようだったが、武器や防具が置かれている棚だけは綺麗にされていた。ここの店主が鍛冶に関しては本気なのが分かるというものだ。
「いらっしゃい。お嬢ちゃん冷やかしなら……って、エイトの連れか。何かお探しかい?」
奥のカウンターから店主らしきおじさんが声を掛けてきた。
「実は自分に合った武器を探したくて何かアドバイスをいただけませんか?」
「チッ……エイトの入れ知恵だろう? まぁいい。とりあえずこれを振ってみろ」
エイト! ばれてるじゃんか。チラッとエイトの方を見ると「あれーなんでばれたんすかね」と頭を掻いていた。
――――鍛冶屋に来る途中、「せっかく鍛冶屋に行くなら、私に合う武器がなんなのか調べたい」とエイトに相談したら「任せておいてほしいっす。この方法で完璧っす!」とのことだったのだが……その計画は失敗に終わってしまった。
ともかく、目的は達成できそうなので文句は言わない。
そういって店主のおじさんが渡してきたのはただの鉄剣だった。疑問を感じながらも言われた通りにする。
いつも通りリラックスしてスライムを斬っていた時を思い出しながら振った。剣は空を切り、周りに風を起こした。そして、振った後に続いて音が遅れてやって来る。
すると、店主の目つきが変わったのが分かる。
眼をギラギラさせながら私に近づいてきた。あまりの怖さに後退るが、店主に手を掴まれてしまった。悲鳴を上げそうになるがエイトが「我慢するっすよ」って顔でこちらを見てくるのでなんとか堪えることにした。
店主は掴んだ私の手をまじまじと観察したと思ったら、なんとその次は私の手をまさぐり始めた。
「ひっ……いやだあああああああああ!」
さすがの私も生理的嫌悪を感じ、店主に掴まれた手を振りほどいて距離をとってしまった。
「おっと、すまねえなお嬢ちゃん。つい興奮しちまった」
ナニに興奮したんですかね!? 完全に危ないおじさんだ。手フェチ? それともこの断崖絶壁に等しい胸に? さてはロリコンか? このエロおやじめ。
私がおじさんをジト目で見つめていると、私の行動の意図に気付いたのだろうか。
「なっ……違うぞ! お嬢ちゃんのあまりの剣筋に興奮しただけだ。それでさぞかし鍛錬を積んだのかと我を忘れてあんたの手をみたくなっちまったのさ。そしたら、この間まで剣も握ったことがないような手で驚いてつい触っちまったんだよ」
「やっぱり、変態じゃないか!」
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