第5話 冒険者

 いい朝だ。

 彼らと自己紹介した後、飲んで食って騒いでアイルが部屋とってくれて、風呂入って、カナンとシャロンに魔法を教えてもらったが進展は無し。

 まずは、魔力を感じ取るところからということで、私はスタートラインにすら立てていない。

 あと新しく分かったことと言えば……


 異世界人で勇者でもそんなに驚かれないということ。

 レイスが私の事を見てるかもしれないということ。

 魔女達はそれぞれ決まった姓をつけているということくらいだ。


 そんな私ですが今日も元気です。

 今日はギルドマスターのオウルさんと話があるので、彼のところに向かわねばならない。準備をして、朝食を食べようと食堂に向かうと廊下でカナンとシャロンに出会った。彼女達も今から朝食ということだったので、ご一緒させてもらうことになった。食堂の昨日と同じテーブルにはアイルとエイトがすでに座っていた。


「よお、カグラ昨日はよく寝れたか?」


「おかげ様で朝までぐっすりだよ。お風呂も悪くなかったし、文句なしさ。それより私もご一緒して大丈夫なの?」


「カグラさん水臭いっすよ。もう俺たちとおたくの仲じゃないっすか。ね?」


 アイルが挨拶をしてきて、エイトが皆に確認する。それにカナンとシャロン、アイルも続く、私はつい嬉しくなって「ではでは、お言葉に甘えて失礼しまーす」とお茶らけてみたが、皆優しく受け入れてくれた。


「エール2つと葡萄酒3つお願い! あといつもの5つね!」


 朝食が来る間に互いの今日の予定を確認した。

 私はオウルさんのところに行くと告げると、彼らもランクアップの手続きをするためにギルドに行くと言う。その後は、Eランク冒険者として初めての依頼に行くのでそこからは別行動だった。

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 冒険者ギルドに着き、彼らと別れたところでカウンターにいる受付嬢にオウルさんについて訪ねてみた。


「すみません。カグラ・アステライトというものですが、ギルドマスターのオウルさんはいらっしゃいますか?」


「カグラ様ですね。それではステータスで名前と称号を確認いたしますので表示をお願いします……はい、確認しました。ギルドマスターは2階の1番奥の部屋でお待ちです」




――――コンコンコンと丁寧に3回ノックした。すると、中から渋い声で「入れ」と聞こえた。


「失礼します。カグラ・アステライトです。お話を聞きに来ました」


「そうか、分かった。まずはそのソファに腰掛けてくれ」


 オウルさんの机の上には書類が山のように積まれていた。忙しいのだろうか?

 私が席に座ると同時に秘書がお茶を運んでくれた。


「さて、訪ねてもらったのは、への褒美の話のためだ。スライムキングは今のアイル達だけでは太刀打ちできなかっただろう。ひとえにの頑張りのおかげだ。そこで俺達冒険者ギルドからになんかあげようって話さ。何か欲しいものはあるか?」


 オウルさんはすぐ私の事をお嬢ちゃんって言う。町の人もそうだがやはりむず痒い。男共の視線もうざい。これは1択なんじゃないか?


「そういうことなら、男物の装備一式がいいです。できれば、防御力と耐久力は考慮しなくていいので、よりデザインがかっこいいものや機能性がいいものでお願いしたいです」


「どうやら訳アリのようだが、まあいいだろう。町の仕立て屋に頼んでおく。出来るまで1週間くらいかかるだろうから、町でゆっくりと過ごすといいだろう」


 かなり注文を入れたがなんとかしてくれそうだ。出来るまでは1週間か。それまでにアイル達から色々と聞けばいいかな。でも、彼らも依頼とかで忙しいし、上手く時間をとれるだろうか?


「あと、冒険者にならないか? 勇者のなら、Dランクからスタートできるからお得だぞ。他国に行くのも冒険者ギルドが後ろ盾になってくれて楽になる。それに冒険者ギルドはがあって、Eランク以上の冒険者なら誰でも閲覧可能だ。どうだ?」


 即座にお嬢ちゃんからお前に変えるとは見かけ以上に頭脳派かもしれない。

 そしてこの提案はさっき考えていたことの解決にもなる。しかし、不安要素はたくさんあるから1つずつ質問するかな。


「その前に質問をさせてください。冒険者って何を目指して活動する組織なんですか?」


 すぐには答えを出さない私の態度を見て笑うオウルさん。なんかレイスと被る。


「冒険者は誰も見たことがない大陸や誰も入ったことがない秘境を探索するのが目標だ」


「じゃあ、なんで冒険者ギルドは魔物の討伐依頼や薬草採取の依頼を扱っているんですか?」


「探索するには金がかかるからな。町人や騎士団から受けた依頼を達成して活動資金を集めるのさ。魔物の落とし物ドロップアイテムの買い取りもそのためだ。それと、危険な場所で必要な技術を身に着けさせるためでもある。あくまで目標だけどな。だから、富と名声のために討伐依頼を主にこなす冒険者もいる。他にはあるか?」


「最後に冒険者って楽しいですか?」


「ああ、最高に楽しくってやりがいのある職だと思うぜ」


 オウルさんは満面の笑みでそう答えてくれた。


「それなら、私も冒険者になります」


「はっはっは! カグラ、合格だ。今日からお前はDランク冒険者として活動しろ。そしてこれがお前の冒険者ライセンスだ。詳しい話はアイル達にでも聞け」


 えー、ここはギルドマスターが直々に教えてくれる流れじゃないの?


 私が首を傾げながらそんな風にオウルさんを見ていると「俺は忙しいから早く帰れ」と言われ、シッシッと手で追い払われた。仕方なく私はまた1週間後に来ることを確認してから、ギルドマスターの部屋を後にした。

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