魔除け
私は、怪談が好きだ。仕事帰りに怪談本を読むことが多い。
あるとき、電車に乗りながら実話系の怪談本を読んでいると、背後の窓が大きな音を立てた。少し驚いたが、なんのことはない。電車同士がすれ違っただけだ。
しかしなぜかこの時から、誰かに見られてるという感覚がつきまとった。電車を乗り換えても、駅から出ても、それは消えなかった。
家の近くの路地に入り、半ばまで歩いたところで、その感覚が強くなった。振り返ると、真っ黒い人影がくねくねと動いていた。
恐ろしかった。
急いで家に帰り、鍵を閉めても、その感覚は消えなかった。食事をしても、風呂に入っても、誰かに見られているような気がした。
それをしたのは、ただ習慣だったからだ。焼酎をコップに注ぎ、あおった。その途端、今までつきまとっていた感覚が嘘のように消えた。
「酒には魔除けの効果があるからな」
そう言ったのは古い友人である。以来、夜毎の魔除けを欠かしたことはない。
身のまわりの怖い話 六地蔵 @goyaningen
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