少し違う
これは、母方の祖母の幼少期の話である。
彼女の家は平家の落ち武者伝説があるような、辺鄙な山村にあった。
その日は雪が降り、辺り一面真っ白になっていたという。
夜寝ていると、3つ年下の妹に起こされた。便所にいきたいのだという。当時、便所は母屋から離れたところにあり、一度外に出ないと辿り着けない。これが、子どもには怖いのだ。
彼女は、幼い妹を連れて便所に向かった。
「絶対にそこで待っててね」
妹はそう念押しして中に入った。
それは、一面を覆い尽くす雪よりも、白かったそうだ。真っ白な着物を着た、真っ白い顔の女が、雪の上に立っていた。じっと、こちらを睨んでいる。
彼女は悲鳴をあげて、母屋に駆け込んだ。少し落ち着くと、今度は置いてきた妹のことが心配になった。しかしすぐに妹も駆け込んで着た。妹は泣きながら彼女に詰め寄ったそうだ。どうして勝手に帰ったのか。そして大ゲンカになった。
すると、寝ていた父親が起きてきた。ものすごいカミナリが落ち、特大のゲンコツをもらったそうだ。
「幽霊より人間の方がよっぽど怖い」
この話をすると、祖母は決まってこう言ったが、それは少し意味が違うのではないかと、私は思っている。
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