終焉からの誘い
この先、生きていても良いことなんてない。どうでもいい家族と、どうでもいい仕事に毎日時間を費やされ、何もできない、したくない。やりたい事も、やれる事もない。毎日毎日ダラダラと過ごし、そして、このまま歳をとっていく。なんて詰まらない人生なんだろう。そしてずっとこんな事ばかり考えていたくない。
もうこんな人生は終わりにしたい。それは死ぬと言うこと。いつ死んでも全く悔いはない。
死ぬにはどうしたらいいだろう。迷惑にならないのなら、首吊りがいいだろうか。
私は、転がっていた荷造り紐で輪を作り、カーテンレールに引っ掛けた。強度も問題ない、後は頭を入れるだけ。
頭を入れようとした矢先、電話が鳴った。その音で、ハッと我に返った。何事もなかった様に電話に出た。内容はどうでもいいものだったが、電話が終わった後、気が抜けて、とりあえず今は死ぬ気が失せてしまった。
その時、死ぬと言うことに耽溺<たんでき>していた。 電話がなければ、死ねただろうか。
ある時は、ホームで電車を待っている時、白いモヤが視界を狭めてゆく。周りの音は全く聞こえない。見えているのは明るい線路だけで、そこに入るだけ。
そして電車のアナウンスで我に返る。
何かにとりつかれた様な、支配されている様な、一体私はどうなってしまったのだろう。
こんなにも、どうしようもなくなっていても、死ねない。きっかけなのか、意志がないのか、怖いのか、強くないのか。死ぬことさえできない、私はなんてあさましい人間なんだろう。
耽溺……夢中になって、それ以外の事を顧みないこと。
なんとなくの 華子 @miyagen
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