ただ前に存在する者
今考えると、子供の頃はよく耐えていたな、と思う。
ある時家に帰ると、階段に自分の物がポロポロと落ちていた。拾いながら上がると、私の勉強机の物が全て床にばらまかれていた。
兄だ。
私には3つ年上の兄がいた。
兄はいつも癇癪を起こしては、私に当たり散らした。
理由は分からない。
ある時は、誰もいない部屋で大声を出し怒っていたり、ある時は私の漫画を破っていたりした。事あるごとに、手をあげられ、罵られた。
母と父は、知ってか知らずか、何もしなかった。
だから私は『兄』とはこんなものなのか、と諦めていた。
世間を知るにつけ、自分の兄は少しおかしいのでは、と思う様になった。
大人になった兄が、ショッピングモールのど真ん中で母にキレていた姿は、壊れたオモチャの様だった。
友達の話す優しいお兄ちゃん、テレビドラマの頼れるアニキ、漫画の妹思いのお兄さん、私にはそんな兄は存在しない。
私には兄妹の意味は、もうまったく分からなかった。
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