枯れた椿堂‹ちんどう›
父はすぐ怒鳴る人だった。
とにかく母を怒鳴り散らしていた。
酒が入ると更に酷くなり、訳の分からない人間になった。
大声が家の外に漏れて、本当に恥ずかしかった。
何もしないのに文句ばかり言い、自己中心的で、全て自分が正しいと思っている。
まさに、団塊の世代の最低の部類だ。
そして父は弱い人だった。
私には嫌われたくないので、あまり怒鳴らない。
兄が暴れても殴りもしない。
所詮弱い立場の人間にしか威張れない。
こんな人間なので、もちろん仕事も上手く行くわけがない。
転職を繰り返し、無職だった事が一時期あった。
プライドだけは高かったのか、昼間から酒を飲んでは、
「俺はもうだめだ死にたい」
とグチグチと吐いていた。
その間も、母が支えていたにも関わらず、もっと酷く怒鳴り散らす。
物心付くまでは普通の良い父親だと思っていたが、それはすぐにポロポロと剥がれ落ちていった。
椿堂…《椿は長寿の木であるところから》父の部屋。また、父のこと。
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