レイチェルと男
なんか、眠い。二度寝ならず三度も四度も、それこそ一日が終わるまで眠っていたい。起きたくない。………うん。どうしてそう思うのかはわかってる。わかってしまっている。頭いいからなー、わたし。そういう学問を修めてたわけじゃない、けれど。自分の心理を自分で解きほぐすということが出来るぐらいには、頭が良かった。
どうして起きたくないのか、それは孤独に気付いたからだ。この部屋がどうしようもなく静かであることがわかってしまったからだ。そして、その状況を自分ではどうしようも出来なくて、眠ってしまうほか無いからだ。
あーこれが件の「病み期」ってやつかー。ネットで見つけて、その時はうへぇと思ったけど。たしかにこれは何も手につかないよなー。仕方ない仕方ない。手、無いけど。あはは。ついに自虐ネタでひとり笑い始めたよ。やばいなー。やばい。でもどーしようもないんだよなー。
ガチャリ、と音がした。ついに幻聴かぁ……と思ったけども靴の音が続いた。硬そうな靴の音。止まった。辺りを見回すような衣擦れの音。咳払い。………もしかして?
「起きているだろうか?起きていたら返事がほしい」
『おはよーございまーす』
「もう14時なのだがね……おはようございます」
低い男性の声。………誰だろう。基本的にあいつとしかしゃべって無いから、名前なんて覚えてない。でも、わたしは悪くない。覚える機会が無かったのが悪いのであって、わたしからは挨拶に行けないし。
沈黙が気まずい。さっさと用件聞こう。
『珍しいですね。ここに誰かが来るとは思ってませんでした』
「……耳に痛いことだ。たしかに私たちはあまり貴女に関わろうとしなかった。それはコチラの考えがあってのことだったが、まぁそのようなことをペラペラと言わないだろう。サトーは」
『最近はサトーさえ来ませんけどね』
「……え?来ていない?彼が?」
『えぇ。もうじき一週間になりますけどね?どうなってるんでしょうね?』
「ちょっと連絡をして確認してもいいだろうか」
『どうぞ?』
男は慌てて電話をかけているようだった。なんだろうこの人。この部屋に入ってくるってことは研究所の人なんだろうけど……まさか「あんた誰?」なんて聞けないし。あとであいつに聞けばいっか。研究所はそれなりに長いだろうから分かるでしょ。
………まだ、あいつが居ることを前提で考えてる。うへぇ。
「何があったか聞かせてくれないか」
『わたしも何があったかよく分かってないけど、それでも?』
「……お願いしたい」
悔しそうに、男は言った。
あー、どんなだったっけと記憶を探りながら、わたしはしゃべることにした。
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