不要物:恋
マ菜
恋なんて、しなくていいものだ。
「恋はいいものよ。楽しくて人生が一段と輝くから!」
「あいつったら私とのデート中にほかの女の子と電話し出すのよ、ゲームしかしてないしそれなのに私が怒ればお前の話がつまんないからだなんて逆ギレして…」
こんなに素敵な子と付き合っているのにあの人は何をしているんだろう。泣かされるくらいなら別れちゃえばいいよ、なんて言えば
「話聞いてもらったらすっきりした!灯、ありがとう。」
赤くなった目を細めて笑った。羽菜のこの笑い方が好き。初めて私から話しかけた時に見せたこの笑顔が可愛くて、目に焼きついてしまったのだ。
「やっぱり、灯は恋なんてしなくていいやぁ。」
「え、私の愚痴聞いたから?たまにこうなるだけで本当は楽しいものよ!」
「ノーコメント!とりあえず、灯は恋したくないなぁ~。」
「灯は可愛いんだからモテるんだよ、もったいないなぁ。」
いくらモテても、本当に好かれたい人はあの人しか見ていないのを知ってるし。
いくら可愛くても、羽菜はこっちを見てくれないでしょ?
『私のこと、羽菜って呼んでほしいな。灯ちゃんって呼びたいし!』
初めて話しかけてくれたとき、私は人見知りだから頷くしかできなかったなぁ。それに、なんだこの人って少し鬱陶しかったや。
『灯ちゃん、一緒に帰りましょ!』
うんしか言わない私にひたすらに話しかけてくる羽菜は、ずっと遠慮がちに微笑んでいた。少し、この人に興味がわいた。
『また明日!あ、今日金曜日かぁ。…じゃあ、また月曜日。』
一週間でやめようと思っていた高校。だけど羽菜は話し上手で、明日はどんなことを話してくれるのか気になって、いつの間にか一週間は過ぎ去っていた。別れ際、寂しそうな顔をするので月曜日は、私から帰ろうって声をかけることを決めた。
『灯ちゃん!いいの!?かえ、る!一緒帰る!!』
いつもの遠慮がちな微笑みじゃなくて、ぶわって、なんだろう、花火が打ち上がって開いたみたいに笑ったんだ。その顔に不覚にも惚れてしまった。
「灯は、羽菜の見てるだけで疲れるの~。」
「してみると、いいものなのに。」
私は、馬鹿で面倒くさがりなふりをしている。私まで恋をしたら、二人の時間がなくなりそうで怖いし、まず既に恋してるし。
「羽菜、」
名前を呼んだら、こっちを向いて、目を合わせて、首を傾ける。いつも目を合わせてくれる。優しくて暖かい視線に思わず笑って、なんでもなーいと誤魔化した。
「なにそれ~。」
笑う羽菜の傍にいられるなら。恋なんてしたくない、しなくていいものだ。
不要物:恋
不要物:恋 マ菜 @mana27
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