第2話
「内田さん、本読むの好きなの?」
特段友人のいなかった真実は休み時間も本を読んで過ごすことが多かった。本を読んでいるからか、周りから声をかけられることも少なかったのだが、1人だけは違った。
真実に声をかけてきたのはクラスメイトの野村圭太。明るい性格で人望もある。普段はおちゃらけた様子で真面目に勉強をしている姿は見たことがないが、成績は常に学年トップ。自分とは正反対のタイプである圭太に対して真実は劣等感を覚えていた。
(また来た…なんで私なんかに話しかけるの。)
圭太は真実に対しても平等に接してくれた。真実も話しかけてもらえることは嬉しかったが、心の中の影が邪魔をして素直に喜べないでいた。
「ねぇ、本。好きなの?」
「…うん。まあね。」
「いっつも読んでるもんね。俺は本読むとすぐ眠くなるからあんまり読まないなー。」
「…そう。」本を読んですぐに眠くなるような人が何故成績がいいのか真実にはわからなかった。何故そんな人が、と思うと悔しかった。
「ねぇ。今度何か貸してよ。」
「…図書館に行けばいくらでも借りられるよ。」恐らくは真実のおすすめの本が読みたかったのだろう。しかし圭太の好みがわからなかったため貸す本を選べないと思って咄嗟に出た言葉があまりに素っ気ないものだったと、言葉を発してから真実自身も後悔した。
「そっかー。それもそうだね。」
「…うん。」
邪魔してごめんね、と笑いながら言い残し圭太は友達の輪の中へ溶け込んでいった。自ら人と関わる機会を潰してしまったことを真実は悔やんだ。
(どうして上手に話せないんだろう。)
クラスメイトを見下してはいたものの、やはり寂しさも感じていた。希望の高校には入れなかったが楽しい高校生活を送ることは自分の努力次第で出来たはずということは真実も気付いていた。しかし会話が苦手だったため、新しく友達を作ることは真実にとって難しかった。周りを見下していたのも、友達を作ることのできない自分への憤りを隠すためのものでもあった。
真実は自分のことを所謂「コミュ障」・人見知りだと思っている。
折角話しかけてもらってもうまい返事ができず、話のキャッチボールが続かない。何か質問されたときには頭の中で色々なことを考えるが、考えすぎてしまうために結局口から出る言葉はつまらないものになる。どうしてもっと気の利いたことを言えないのか、と何度自分を責めたか数えきれない。
(人と話すことすらままならないのに、私が生きている意味なんてあるのかな。)
真実の頭の中はこんなことでいっぱいだった。
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