君のそばで

勝利だギューちゃん

第1話

「○○くん、お願いがあるの・・・」

「何?」

「もし、私にもしもの事があったら、私に部屋にある日記を見て」

「日記?」

「うん、日記」

「その中に、君の知りたかった私の秘密が書いてあるわ」

「どうして、それを僕に・・・」

「だって、君には知って欲しいから・・・私の全てを・・・」

「全て」

「大サービスだね」



そのようなやりとりを、高校のクラスメイトである彼女と、

放課後の教室でした。


そのわずか2日後、彼女は亡くなった。

いわゆる突然死だった。

就寝中に異常を来たし眠ったまま亡くなっていた・・・

彼女は、虫の知らせか、それを感じていたようだ・・・


彼女の葬儀の日、初めて彼女の家を訪れた。

帰り際に。彼女の両親から呼びとめられた。

どうやら、生前に彼女から訊かされていたようだ・・・

僕の事を・・・そして、日記の事を・・・


彼女の部屋に案内された。

彼女の部屋に入るのは、当たり前だが初めてだった。

女の子らしく、かわいいぬいぐるみであふれていた。

そして、机の上に一冊の日記が置いてあった。


その日記を手にした時、なぜか予感がした。

(ここで読むのはまずい)


彼女の両親から許可を得て、僕はその日記を自宅に持って帰った。


家に帰り、家族が寝静まった頃、僕はその日記を開いた。

(何が書いてあるのだろう・・・)

不安と期待で、いっぱいだった。

期待という表記は、不謹慎なのだが・・・


まず表紙をめくる。

そこでまず驚いた。

「愛する○○くんへ」

僕の名前が記されていた。


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そこには、こう書かれていた。


「○○くん

君がこの日記を手にしているということは、私はもういないね。

でも、約束を守ってくれたんだね。

すごく嬉しいよ。


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「まず私の事を教えるね。

10月25日生まれの、A型。

家族は両親と、お兄ちゃん。

得意科目は国語、苦手科目は数学。

趣味は、料理とぬいぐるみ集め・・・

て、これはもう、話したよね」


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「本題に入るね。

君の知りたがっていた私の秘密を、全て君に話します。

覚悟して、読んでね。」


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「まず最初の秘密ね。私は通常、男女問わず呼び捨てにしています。

これは、君も知ってるね。

でも、君にだけは、君(くん)という敬称をつけている、なぜだかわかる」


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「まずは君に対して、親しみを感じていなかったわけではありません。

君も大切な、私のお友達のひとりだった。

でも、残念だけど、恋をしていたわけでもないの・・・」


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「率直に言うとね。君は私には、いえ他の人にはないある物を持っていた。

私は、君の持っている、君だけが持っている、そのある物に憧れてたの。」


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「それは、家とか物質的なものではないわ。お金では決して買えないある物を、

君は持っていた。でも、それは私や他のみんなが、どんなに努力しても、手に入らないわ。

私は、尊敬の意味を込めて、君にだけ君(くん)付け呼んでいた。

それが、私に出来る、精一杯の表現だから・・・」


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「まだわからない?君だけが持っているある物。相変わらず鈍いね。

まあ、そこも可愛くて好きなんだけどね(笑)」


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「わかったわ。教えてあげる。君だけがもっているあるもの・・・

それは。「自分」なの」


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「最近は、同調圧力とか、長い物に巻かれろだとか、他人と同じ事をしたがるわ。

まあ、それが安全なんだけどね。

でも、君は違った。絶えず「自分」と言うものを確立させていて、それを崩さなかった」


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「いじめられても、仲間外れに会っても、いつも自分を確立していた。

みんなは、「殻に閉じこもってる」とか悪く言う人も、正直いた。

でも、私はわかったの。君の中にある強さを、そして優しさを」


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「だから、君に近づきたかった。でも、呼び捨てだと、君の事だから動揺するわ。

なので、君(くん)付けで呼んでたの。

これは多分、私が生きていても変わらなかったと思う」


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「最初のほうに、『恋をしているわけではない』と書いたよね。

でも、それは当初の話。

今はもう、君に恋しまくりだよ。これは冷やかしではなく、本心だからね。」


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これが最後のようだ・・・


「最後に君の知りたがったいた私の秘密を、君だけに話します。

それは、直接話した方がいいね。後を見て・・・」


そういって振り向く。

「やあ、○○くん、元気?」

驚いて言葉にならない・・・


「どうしてここに?確か・・・」

彼女は自分の人差し指を、僕の口に当てる。


「言わなくてもわかっているわ。確かに、私は死んだわ。

世間では、幽霊と言われているわね」


でも、怖くはなかった。驚きのほうか強かった。

「君の知りたがっていた私の秘密、それは私はもう、とっくに死んでたの」

「えっ」

「幽霊みたいだ・・・と言ったことがあったよね。その通りだったの」

「どういう・・・」


彼女は続けた。

「本当はすぐに、霊界にいくつもりだったの・・・

でも、君と出会ってしまった。だから神様にわがまま言って、とどまらせてもらったの。

1年の期限付きでね」


僕は、言葉にならなかった。


「でも、もう時間が来たの。でも、私は君のそばにいたい。

そう神様に嘆願したわ」

「嘆願」

「そしたら、ひとつだけ出来るの事があると言われたの。

私はそれを受け入れたわ・・・」


「何?」

「それはね。君の守護霊になること」

「守護霊?」

「守護霊というのは、つきっぱなしとは限らず、変わることもあるの。

これまで君に付いていた守護霊は、君の曽祖父だった。

そして、お願いして変わってもらうことになったの」


驚きすぎて、言葉にいならない・・・


「だめかな・・・」


答えるまでもない。

僕は首を縦に振る。


「ありがとう。これからは、私が君を守るからね。

ただ姿を表すことは、普段は出来ないわ。

でも、君が本当に困った時は、現れて直接話をするね。」


そういうと、彼女は姿を消した。

目には見えないが、いつも僕のそばにいていくれる。

そう思うと、強くなれる気がした。


(○○くん、君に将来愛する人が出来ても、子供が出来ても、

私はそばにいるよ。君を守る。だから・・・いつまでも・・・)


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君のそばで 勝利だギューちゃん @tetsumusuhaarisu

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