第9話 清掃週間 下
結局水曜日と木曜日は学校周辺を火曜日よりも広い範囲で行った。もちろん部長の独断で冬野先生はそれぞれ西側と南側をやってくださいといっていた。
そして、金曜日。俺はいつも通り購買で買ったパンと野菜ジュースでお昼にしていた。今日はハムチーズパンだ。
一人お昼を食べながら俺は今日の部活について考えを巡らせていた。
この学校の近くに少し広い公園が一つある(行ったことはないけれど)。今日までにそこのごみ拾いを行っていないのでたぶん今日やるのだろう。昨日までは道路ということもあってか吸い殻が半分ぐらいを占めていたが公園には木などかあり燃え移る可能性が高いからあまり落ちてないだろう。逆に空き缶とかのポイ捨ては多そうだ。
お昼を食べ終わったがお昼休みが終わるまでには少し時間がある。特にやることもないので次の授業の準備をしたあと本を読むことにした。
午後の授業と帰りのSHR、掃除を終えた俺は教室で帰りの荷物をまとめている。来週からは二週間ぐらい掃除がないから少し嬉しい。山上も千鶴も俺と同じく帰りの荷物をまとめていた。
靴を履き替えここ数日と同じく校門のところに向かう。
やっぱり今日も部長と伏田さんが先に来ていた。俺はいつも通り部長からここの部員か?という確認を取られた。今週は毎回このやり取りをしている。千鶴の予想だと毎日会っていればもう少しで顔を覚えられるはずだからこういうやり取りはほとんどなくなるだろう。あくまでたぶん。
そんなやり取りをしてるうちに山上と千鶴が来た。
「相変わらず冬野先生はまだ来ていないのね」
「いつものことだろ」
「それもそうね」
「あ!あれ、今グラウンドを歩いて来てるのって冬野先生じゃない?」
相変わらずの山上の発言に一応受け答えをしていると千鶴がこちらに歩いてくる冬野先生を見つけた。途中所々で部活の邪魔になっている。
本当に何してるんだ。あの先生は。
「おお。責任者が来たか」
部長と伏田さんも校庭の方を見て確認したようで伏田さんは読んでいた本をしおりをはさんでとじていた。
「それでは~部活を~はじめます。清掃週間は~今日で終わりなので~みんなで頑張りましょ~!」
先生が校門のところまで来てすぐに今日やることの説明をはじめた。みんなでの部分に冬野先生は含まれてはいないんだろう。こんなことを考えている間にも先生の説明は続いていく。
「今日は~学校の東側を~やってもらいます。あんまり~遠くへ行かずに~やってくださ~い。それでは~あとは~よろしく~お願いします」
先生は説明を終えるとまた学校の方へ戻っていった。ちなみに外でごみ拾いをすることになってから先生は部活の終了時にも姿を見せない。
「よし、諸君。今日は公園で活動するぞ!」
予想通り今日は公園のようだ。部長は一言いったあと早速公園へ歩いていった。
公園は意外と近くにあり結構広かった。時間も時間ということもあってか小さい子供とお母さん?と見られる人が多かった。
「よし、では早速始めていくぞ」
そう言って軍手、ごみ袋、トングを各自に配った。
「今日の活動場所はこの公園だ。時間になったら私が召集をかけるからよろしく頼む。詳しい場所は諸君らがきめてくれ。それでは浄化活動開始だ!」
「千鶴。忘れられたりがあるかもしんないから一緒にいてくんない?」
俺はみんなが散っていく前に千鶴に話しかけた。
「ああ、確かに微妙だね。分かった。一緒にやろ」
何とか合意を取り付けた。俺たちはボランティア部の人が行っていない場所を見つけてごみ拾いをはじめた。今日はしゃべってても部長に「気を抜くな!相手が残留思念とは言え悪魔の一部にはかわりないんだぞ!」みたいな感じで怒られることはないだろう。
何でそう言うか分かるかというと火曜日に実際に怒られたからだ。
ごみはさすがに拾わないとごみ袋に入っているごみの量でさぼったことがばれるのでちゃんとやる。
存在を忘れてもらうという手もあることにはあるが五人という少人数で忘れてもらえるかわからないし、忘れられたは忘れられたで精神的にきつい。
まぁ、千鶴がいる時点で気付かれるから考えるだけ無駄だ。なので他の人から置いていかれないために千鶴とやることにした。
「ここら辺かなあ?」
部長や山上が来ていない場所に来て千鶴がそう尋ねた。
「そうだな。まずはここら辺からだな」
そう言って俺はトング片手にごみを探しはじめた。
落ちているごみは空き缶とかお菓子の袋とかの方が多かった。吸い殻とかは燃え移ったりするからかあまりなかった。
「案外ごみ多いね」
千鶴が足元の空き缶をトングで拾いながらそう話しかけてきた。
「そうだな。捨てられてる場所もパッと見ただけじゃ見えないところにあるからな」
「ポイ捨てはしないで欲しいけど、ごみ袋のゴミが少ないと東蓮寺さんにいろいろ言われそうだからありがたいかも」
「確かに拾ったゴミが少ないと部長に言われそう。部長の中でのごみ拾いは平和維持活動みたいなやつの一環だからな」
少し複雑に思いながらも俺はごみを拾っていった。バラけてやるときは拾ったごみの多い、少ないが部長の主観で決まりそうなのでたくさんとっていきたいところだ。
東蓮寺さんが召集をかけるのがいつかわからないので休んだり、サボったりはできなかった。時間指定してその時間に集合とかにしてくれれば休めたのに。みんな携帯持ってるんだから普通に時間指定の方が部長の負担が減る。
それから30分以上がたった。ごみ拾いを続けていると(ごみもまあまあ集まったのでやるふりもしながら)視界の端に部長の姿がうつった。どうやらもう終わりのようだ。
「神崎さん、あとそこの山吹くんか?もうそろそろ終わりにするから最初に解散したところに集まってくれ」
部長はそういうとどこかへ歩いていった。
俺を見つけられたのは周りに人がいなかったからだろう。
「じゃあ、いくか」
千鶴にそう声をかけて部長に言われた場所に向かっていった。
「終わったね」
千鶴が話しかけてきた。終わったとは清掃週間のことを指しているんだろう。
「そうだな」
「ごみ拾いもこんなに毎日やると飽きるというか・・・やる気がなくなるみたいな感じになるよね」
どうやら千鶴は上手く言葉にできなかったようだ。俺もそれを指し示す言葉が浮かばない。でも、言いたいことは何となく分かった。
「そうだな。今までこんなに長期間ごみ拾いなんてしたことないしな」
「秋もこんな感じなのかな?」
「どうだろう。冬野先生がごみ拾いっていっても部長が別のことやるかもな」
「冬野先生が別のことをやるとは考えないんだ。まぁ、私もそうは思わないけどね」
冬野先生が部活の内容をちゃんと考えているとは到底思えないから春とは別のことをやるなんてあり得ないだろう。
そんな話をしているうちに集合場所が近づいてきた。集合場所にはすでに山上がいた。伏田さんがいないから俺たちは二番目だったようだ。
「結香ちゃん。もう来てたんだ」
「ここに来たのはついさっきよ」
山上が言うってことは本当についさっきなんだろう。
「お、部長と伏田さんが来たぞ」
「諸君。待たせたな。残留思念もしっかり回収できているようだし学校へ帰還する」
伏田さんは部長が待たせたなと言うのに合わせてペコリと頭を下げた。伏田さんが頭を下げる必要はないと思うけど気がすまないのだろうか。
ごみの量は部長のお気に召す量になっていたようで怒られなかった。
部長が学校へ向かって歩き始めた
校門のところが見えてきた。
「ねぇ、誰か立ってない?」
千鶴がそういったのでよく見ると誰かがたっていた。距離があるせいで誰かは分からない。
「確かに立っているわね。あの服は冬野先生じゃないかしら?」
「あ、言われてみれば今日の冬野先生あんな色の服着てた気がする」
冬野先生が活動を一緒にしていたことや待っていたことなんて一度もなかったから冬野先生という可能性が頭から抜け落ちていた。
「こっちに気付いたっぽいよ」
「確かにこっち見てるわね」
しゃべっている間にも校門に向かって歩いていたので冬野先生と分かる位置までは近付いていた。
冬野先生もこちらに気が付いたようだ。
「怒られるのかな?」
「分かんない」
「怒られるとしても部長だけよ」
そもそも顧問としての活動を放棄した冬野先生にも問題があると思うが言ってもさらっと流されるだろう。
そうこうしているうちに校門のところに着いた。
「あなた方は~今まで~どこの~ごみ拾いを~していたのですか?」
口調から怒気は感じられなかったがやっぱり怒られるのだろうか。
千鶴の方を見ると怒られると思ったのか憂鬱な顔をしていた。確かにこういう質問をいつも通りの調子でしてくる方が少し怖い。
「すぐ近くの公園で活動していました」
冬野先生の質問には責任者代理としての使命を感じたからか部長が応えた。
「あ~あそこですか。別に~活動場所は~どこでも構いませんが~一言~断りは~いれといて~下さいね」
先生は全く気にしていなかった。少し拍子抜けしたが冬野先生ならこうなるだろうとある程度予測はできていた。
断りをいれなきゃいけないのはぎりぎり先生としていられる立場を考慮した上でか?
「なんかすごく拍子抜けしちゃった」
「変に勘繰ってたせいで少し不気味には感じたな」
変に予測をたてたのがいけなかった。冬野先生なら流すと何となくはわかっていたのに。
「まぁ、気苦労ですんだのだからましよ」
部長は一言断りを入れなかったことについて謝っていた。冬野先生の方は「次からは~気を付けて~くださいね」と言っただけだ。
「ところで~今日~私が~ここで~待っていたのは~皆さんに~伝え忘れたことが~あったからです。もう~下校になるので~詳しくは~部室で~話します」
そう言うと冬野先生は部室に向けて歩き始めてしまった。
「一体なんだろうね?」
「分からないわ」
「今日伝えなきゃいけないって明日のことか?」
俺たちも先生のあとについてひとまず校舎の方へ(靴を履き替えるため)歩き始めた。
部長は何か分かったようで「ああ。今年は今週なんだな」と言っていた。去年もあった事なんだろうか?
靴を履き替え部室へ向かった。みんなが集まったぐらいで部活終了のチャイムがなった。
「全員揃いました!」
みんなが集まったあと部長が冬野先生にそう言った。
「それでは~用件を~話します。話を~早く済ませるためにも~ざっくり~言わせて~もらいますが~明日から~旅行に~行きます」
突然すぎて言葉が出なかった。
たっぷり三秒ほどフリーズしたあと俺は何とか再起動を果たした。
「先生ざっくりしすぎです。え、明日からですか?」
「毎年新入生の歓迎を兼ねて遠征活動に行くのが恒例になっているんだ」
どうやら毎年のことらしい。それにしても明日って急すぎないか?
千鶴はまだ理解できていないようだ。あっけに取られた顔をしている。
山上は準備の事の方に意識がいっているのか考えにふけっていた。
「明日から~一泊二日で~名古屋に~行きます。時間が~ないので~細かいことは~省きますが~明日の~朝十時半に~品川駅の~北側の~新幹線の改札に~集合です」
先生の話は端的というか本当に必要なことしか話していなかった。
「新横浜の方が近いと思うんだけれどなぜ品川なんですか?」
そこに現実に復帰したらしい山上がもっともな質問をした。ここからだと新横浜の方が近い。
「それは~品川の方が~先生の家から~近いからです」
思いっきり私情を挟んだ先生らしい解答だった。
「親からの許可が必要だと思うんですけど大丈夫なのですか?」
冬野先生なら仕方がないと割り切ったのか山上は続けて次の質問をした。
「それは~今~電話で~聞いてください」
冬野先生がそう言ったことで全員が親に電話をかけた。
俺の場合はお袋が滅多にない機会だから楽しんできなさい。といった感じで了解してくれた。
他の皆も了解が出たようで全員が行けることになった。俺は出来れば二日で前には旅行のことを教えてほしいと思いつつも過ぎたことだから仕方がないと大方割りきっていた。
「チケットってもうとってあるんですか?」
一段落したところで一番の不安要素を俺は聞いた。ゴールデンウィークのラッシュは明日からだろうから当日はとれないだろう。
「ちゃんと~とっています。詳しくは~プリントを~配るので~それを~見てください」
時間も時間なのでプリントを配られて終わりになった。
さらっと目を通すと11時10分発のひかりに乗るようだ。到着は1時40分なのでお昼は新幹線の中で食べるんだろう。
教室に戻り鞄をとったあと靴を履き替えに再び下駄箱へ向かった。校門で再び千鶴たちと合流し帰路に着いた。
話題は当然さっきの旅行のことだ。
「私、急すぎて頭が真っ白になったよ」
千鶴は電話をかけるまでポカンとしてたので本当に頭が真っ白になったようだ。
「そうね。前日に急に言うなんてあり得ないわ」
「親からの許可取らなきゃいけないのにな」
運よくお袋に電話が繋がったが仕事中で繋がんないかもしれないから本当にやめてほしい。
「私はいいんじゃない。楽しそうなんだから。って軽くOKもらったよ」
「俺もなかなかないから楽しんできなさいって言われた」
「私は父親に電話したら泣いてたわ。一緒に旅行に行ける友達が出来て父さん嬉しいって」
どうやら皆全く反対されなかったらしい。千代子さんはそういうのいいんじゃないって感じの人だし、俺や山上は友達と旅行なんて今までなかったから当然か。
「名古屋かぁ。私、行ったことないな」
「何するんだろうな」
名目上は部活の合宿みたいな感じになっているんだろうけど冬野先生のことだ無視する可能性はざらにある。
「分からないわ。でも、プリントには初日は活動するって書いてあったわ。詳細は一切書かれてなかったけれど」
詳しくはプリントを見てくださいと冬野先生はいっていた気がする。俺はプリントを見るだけで大丈夫か不安になった。と言うか今日まで生徒に伝え忘れてる時点で不安要素が沢山だ。
「ひとまず準備しなくちゃだよね」
俺が不安に刈られていると千鶴がひとまず一番最初の問題点を挙げた。
目前に迫っているからか旅行全体に対しての不安が少し和らいだ気がする。
「そうね。明日の集合時間が早くないだけまだましだけれど準備には多少の時間がかかるから大変だわ」
「まぁ、やるしかないな。それより明日って制服なのか?」
準備に関しては30分あれば大丈夫だろうとある程度めどかついたが今度は服に関する問題が俺のなかに浮上した。
「プリントに書いて・・・ないかもしれないわね」
山上はプリントに書いてあると言おうとしたのだろうが途中から冬野先生なら書き忘れているかもしれないということ思ったのだろう。
「ちょっと待って」
千鶴が話の途中からプリントを出そうと鞄のなかを探っていた。
「私服だって。これ一応部活の活動だよね?」
何とか見つけたようでそのプリントを見ながら千鶴がそんなことをこぼした。
「いいんじゃないか?私服の方が楽だし」
「こういうのは制服か体育着が普通なんだよ。結香ちゃんもしゅーくんもこういうの行ったことないだろうから分からないだろうけど」
千鶴の指摘通り俺はこういうのははじめてなので普通とか分からない。
ボランティア部が遠征しないと出来ないことなんてないだろうから私服でいいと思う。
「大丈夫よ。学校側がこちらに学校の看板を背負って活動してほしいなんて思ってないでしょうし」
確かに山上の言うことはもっともだ。そこ考えてなかったわ。
「確かにその事考えてなかった。うーん。そうなると私服でもかまわないか」
どうやら千鶴も納得したらしい。今思うとこの部活って部活を推奨しているから不適合者は不適合者でひとまとまりにしました。って感じなんだろうな。
「問題ないだろ。学校側が俺らに求めてるものは強いてあげるとしても大人しくしててほしい。ぐらいだろうからさ」
頭のなかで考えていた事の流れで話したら思いっきり地雷を踏んでしまった。最近はあんまり自虐に走ってなかったのに。
この地雷には山上も巻き込んでいたから山上の方を見ると少し不機嫌そうだった。
「さっきの発言にはいささか不満だけれど話が脱線するからひとまず不問にしておくわ」
不満があることをしっかりと示しただけで追撃はなかった。この場合は成長したと言ってもいいのだろうか?
「服装の件だけど別に何でもいいじゃない。私服が奇抜って訳じゃないんだから無意味よ」
そして、山上は宣言通り話を脱線させずついでにその話を終わらせた。
まぁ、極論服なんてどうでもいいからな。
千鶴は未だに不安なところがあるようだったがあらかた割りきっていた。
「それじゃあ、また明日会いましょう」
「じゃあな」
「また明日」
山上と別れ二人になった。
俺は今一番の懸念材料を解消するべく動くことにした。といっても千鶴に一緒に行ってもらうようお願いするだけなんだけど。
「なぁ、千鶴。明日品川まで一緒にいかないか?私服だとまじで気づかれないからさ」
千鶴だからないと思うが念のために理由も付け加えておいた。
「あ、うん。いいよ。私も電車の乗り継ぎできるか心配だったし、品川駅構内なんて絶対に迷うだろうしね」
千鶴もそこら辺は理解したようだが少し顔が赤い。やっぱり恥ずかしいところがあるのだろうか?
「部室へ行くときはいつも一緒だろ。そんなに顔赤くすることか?」
考えても仕方がないから聞くことにした。
「え!また顔赤くなってたんだ私。ええと、気にしないで」
どうやら踏み込まない方がいいようだ。
千鶴は何かブツブツ言いながら考え事をしているようだが関わらない方がいいだろう。ちょうど千鶴と別れる道に出たので最寄り駅何時集合かだけ決めて別れた。
リビングにはいると今日はお袋がいた。夕食までもう少しかかるから明日の準備とかをやってなさい。といわれたので準備をすることにした。
自分の部屋に着き家着に着替えたあと準備をするべく冬野先生が詳細が書いてあると言ったプリントに目を通した。
色々書いてあったがひとまず時間がないので持ち物の欄を見て少しでも準備をしていくことにした。
持ち物
・服(私服)
・交通費(品川駅までのお金)
・日用品(各自必要なものを持ってきてください。携帯などです)
・おやつ(300円いない。バナナはおやつに含まれません)
・その他各自必要なもの(ゲームなどはやめてください)
※なお、お昼は新幹線の中で食べるので持ってこなくて大丈夫です。
「ざっくりしすぎだろ!」
これが俺の抱いた感想だ。ようは各自必要なものを勝手に持ってきてくださいということだろう。
それにしてもおやつはまだいいとしてバナナがおやつに含まれないって必要か?ラノベなどの中でのお約束だと思っていたが現実で起こりうるとは思ってもいなかった。というかおやつって現地調達でもいい気がする。
まあ、最低限必要なことは書かれていたのでそれをもとに準備をしていくことにした。
まずは服の準備だ。といっても俺はあんまり服を持っていないので適当に無地の長袖Tシャツとジーパンを二着ずつだした。クローゼットから紺のパーカーを出し、下着を上下三着ずつと念のために寝間着のジャージも用意した。明日着る分を除いてグレーのスーツケースにしまっていく。
おっと靴下も持っていかないとな。そう思って靴下も適当に三足用意した。
このあとも順調に準備が進んでいった。ほぼ準備が終わったところで少し前に帰宅した(隣の部屋だから足音と声で何となく分かった)美春がお兄ちゃん、夕食。と声がかかった。最終確認は夕食を食べ終わってからやることにした。
夕食は珍しく賑やかなものになった。理由は旅行と判断していいのか分からないが、まあそのことだ。
美春に行き先を聞かれてからお土産にういろよろしくねと約束され夕食が終わった。忘れずにメモしとこ。
夕食を食べ終わり家族のお土産や交通費を含んだ雑費としてお袋から一万円もらった。
自分の部屋に戻ると早速お土産のことをメモした。美春がういろで家族へが味噌煮込みうどんの元みたいなやつだ。雑費の一万円と一緒にメモもお財布にいれて俺は準備を再開することにした。といってもあとは確認だけだけど。
「よし、やるか」
そうやる気を入れ直して確認作業をはじめた。
まずは服。ハンカチの用意を忘れていたので用意してあとは大丈夫だった。
交通費は雑費としてお財布に入っているから問題ない。
日用品は携帯、ポケットティッシュ、イヤホン、本と念のための歯ブラシこれで大丈夫だろう。
おやつは必要なら現地調達すればいいし、その他必要なものは念のためトランプとUNO を持っていけばいいだろう。
これで明日水筒を作れば(飲み物を買うお金がもったいない)準備完了だ。本、イヤホン、ティッシュ、お財布は斜めかけの鞄に入れて、あとはスーツケースにしまった。
「終わったぁー」
そう言いながら俺は軽く延びをした。
持ってくるものがざっくりとしか書かれてなかったので少し大変だったが何とか準備が終わった。
お風呂に入ってはやめに寝ようと思ったけどまだお風呂を沸かしていなかったのでそれまでプリントを見ていることにした。
日程
初日
10時半 品川駅
お昼
1時40分 名古屋駅
ホテル
活動
夕食
就寝
二日目
起床
朝食
観光
お昼
観光
名古屋駅
品川駅
「それだけ!?」
ろくに書かれていなかった。時間はもちろんやることも全く具体的にかかれていない日程と持ち物以外風邪の場合は連絡してくださいという文字と共に冬野先生の連絡先が書かれているだけだった。
まともにかかれていると思った自分を多少なりとも攻めながらお風呂が沸くまで読書をすることにした。
最初は裏表で色々書かれていたからちゃんとしていると思ったが全然そうじゃなかった。表に持ち物が書かれていてあとは必要かどうか分からないが愛知に関する事が書かれていた。愛知県の面積などだ。
裏面は日程と先生の連絡先。あとは大量の「あ」が書かれていて下に申し訳程度にこの中に「お」が1つあります。探してみてください。と書かれていた。
準備中は時間があまりないので裏面は見ていなかったがここまで適当だったとは。
このあとは少し読書をしたあとさっさとお風呂に入ってヘッドにはいった。明日からのことが心配で大丈夫かなと考えているうちに俺の意識は落ちていった。
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