第8話 清掃週間 上

 山上や花塚と千鶴の家で遊んだ日曜日を終え新しい一週間がはじまった。今週も何かあるといいなと思いながら登校した俺は今、朝のSHR をむかえていた。

 冬野先生が出欠の確認を終え(ちゃんとやっているかは謎)朝の連絡をはじめる

 「みなさ~ん。改めて~おはようございま~す。それでは~今週の連絡を~します。今週は~清掃週間で~す。説明は~各部活から~あると思いますが~部室とかの~掃除を~するので~みなさん~頭の中に~いれといて~ください」

 こうして、朝のSHR が終わった。俺は今週全く何もないことはないと思う一方で部室はあの部屋だけだから暇になりそうだなとも思っていた。

 午前中の授業が終わりお昼休みになった。今日は千鶴と一緒に食べる日なので千鶴に一言告げてから俺は購買に走っていった。

 購買で無事お昼ご飯の卵パンを持って(正確には卵パン二個と野菜ジュース)教室に戻った。

 席について千鶴の方を見ると千鶴はまだお昼を食べ始めていなかった。

 「まだ食べ始めてないのか?」

 「うん。一緒に食べ始めた方がいいかなと思って」

 どうやら気を使ってくれたようだ。

 「いただきます」 

 「いただきます」

 そして、俺は卵パンの袋をあけ、千鶴はお弁当の蓋をとってお昼ご飯を食べ始めた。

 「今週、清掃週間なんだね。ところで清掃週間って何?」

 「部室とかの掃除をするって冬野先生がいってた。詳しくは部活の時に説明されるらしい」

 これは冬野先生が今日の朝言ってたことなんだけど千鶴は聞いてないのだろうか?

 「へぇ。じゃあ、今週は暇しなそうだね」

 「初日はな。ボランティア部の部室はあの部屋だけだから一日で終わる」

 「あ!確かに。他に何かやるのかな?」

 どうやら千鶴の頭の中では初日以外暇になるかもしれないということは浮かばなかったようだ。

 「逆に何かやってもらわないと困る」

 そして、他に何かやるのか千鶴は疑問に思ったようだがやらないと部活の存在意義が不適合者を集めただけのものになってしまう。ただでさえお手伝いで社会性を育むとか言う効果があるかわからないことを掲げているのにその活動すらまちまちとか部活として成り立ってないと思う。

 「まぁ、今考えても分かんないね。それより今週で4月終わりだよ」

 「あ!本当だ。てことは来週末ゴールデンウィークか」

 遊園地まであと一週間。はやいな。まだ何も決めてないのに。ちなみに今年のゴールデンウィークは今週末が三連休で2日はさんで四連休といった感じだ。

 「まだ何も決めてないね」

 「どっちにしろ四連休のどこかだろうな」

 今週末は急すぎて無理だろう。

 「そうだね。きっと今週末には自然と決まるよ。花塚君の部活の日程がわかったらだけど」

 「そっか。あとは花塚の部活次第ということだな」

 そんな感じで遊園地の予定を考えなきゃなと思いつつお昼休みが終わった。

 午後の授業が終わり今週まである掃除も終えた俺はいつも通り廊下で待っていた千鶴と合流した。

 「神崎さん。あと山吹くんかしら?」

 「はい。そうです」

 とそこに今週から教室掃除だった山上がきた。名前が意外とすぐに出たのは「千鶴と一緒に部活に来る男子=山吹」という考えが定着したからだと思う。

 「私も一緒にいっていいかしら?」

 「うん。いいよ♪」

 「かまわん」

 話しかけたのはどうやら一緒に部活へ行きたいからのようだ。千鶴みたいな友達ができてよかったなと思いつつ(最近まで男友達が一人もいなかったから人のこと言えない)どっちでもよかったのでOKした。この場合だと俺に意見は求めてないだろうし。

 「じゃあ、一緒に行かせてもらうわ」

 そういって山上が加わった。

 今日は一週間ぶりに冬野先生が顔を出すだろう。

 そういえば先週の図書委員会のやつ委員会の先生もいなかったな。先生も部活の顧問優先といった感じなのだろう。

 部室へ着くといつもと違って部長と伏田さんがいた。部長はノートを書いていて、伏田さんは本を読んでいた。今まで俺たちより早く来てたことがなかったのでなんか新鮮だ。理由はたぶん今週掃除じゃないからだろうけど。

 「こんにちは」

 「こんにちは」

 「こんにちは。部長たち今日は早いですね」

 そんなことを考えながら挨拶して部室へ入っていった。山上は感想をそのまま口に出してるけど。

 「おお。来たか。神崎さんに山上さん、あと山吹君?かな」

 山上の失礼な発言(事実ではあるので否定できない)を気にとめた様子もなくいつも通り俺の名前を確認している。

 「合ってます」

 「良かった。山吹君の顔はなかなか覚えずらいのでな」

 「部長頑張ってるね」

 「ああ、あそこまで律儀に続けているとはな」

 設定上かもしれないがすごいと思う。

 「大丈夫ですよ。覚えられないのは他の人と同じですから」

 なので軽く自虐になりながらもそれが普通だということを告げる。

 ここで伏田さんを放置している気がして(いつもなんだけど)声をかけるべきかと思ったがそもそも最近まで身内か幼馴染み以外喋ったことがなかった俺にはコミュ障の人とどう関わっていくべきか分からないのでやめることにした。

 「みなさ~ん。席に~着いてくださ~い。部活を~はじめま~す」

 そんなことを考えていると後ろのドアから冬野先生が入ってきた。

 部活で会うの久しぶりだなぁ。

 「冬野先生。先週は月曜以来、来てませんでしたけどそれでいいんですか」

 冬野先生が来るなり山上は先週のことを言った。無駄な気がするけど。

 「いいんじゃ~ないですか?」

 やはり無駄だった。そもそも冬野先生のこの部活の重要度があまり高くないようだ。

 山上も無駄だと思ったのかそれ以上は追及しなかった。

 「それでは諸君活動をはじめるぞ」

 部活を設定に加えている部長が率先して話を進めはじめた。冬野先生は手間が省けるといった感じてそれを見ている。

 「まず今週は浄化に力をいれる週だ!今日はここの活動拠点を念のために祓うが明日からは学校周辺を主に悪魔の残留思念を回収していく。各自気を付けて取り組むように。何か質問がある人は言ってくれ」

 部長の話が終わり、質問を受け付ける時間のようだ。このあと活動開始となるんだろう。こんな説明を顧問がよしとしていいのかと思うが今日やることは分からないわけではないから問題ないんだろう。

 理解できてないやつが若干一名いるが。 

 「よし、質問はないようだなそれでは各自準備をはじめてくれ。十分後に開始だ」

 「あと~廊下も~掃除をするので~お願い~します。窓と~黒板も~やってもらうので~その人も~それぞれ~一名~決めてくださ~い。明日からやることは~先生が~改めて~説明するので~気にしないで~ください」

 冬野先生の補足が入って話が終わった。明日のことはまた明日先生が説明するらしい。部長は窓ふきをやりたいのか雑巾をもって先生のところにいった。そして、少し話したあとどこかへいってしまった。俺の予想だとガラスクリーナーみたいなものを取りに行ったんだろう。

 廊下に掃除用具入れのロッカーがあるのでそこから箒を取れば終わりだ。この教室は長い机と椅子が数個、教卓しかないからあまり大変ではないだろう。

 「ねえねえしゅーくん。部長の説明がよくわかんなかったんだけど」

 そして、ここで千鶴が質問をしてきた。話を聞いてるときの様子から見てあまり理解してなかったようだ。お昼に話したことや朝の先生の話を覚えていればわかると思うんだが覚えてないのだろう。

 山上に聞くこともできるだろうがすたすた掃除ロッカーの方へ行ってしまっていたので俺に聞いてきたんだろう。

 「お昼に話したこと覚えてないのか?」

 「うん。授業で頭が一杯になっちゃって」

 大半聞き流してそうな気もするが言うと余計に面倒臭くなりそうなのでやめることにした。

 「まぁ、いいや。つまり、今週は清掃週間だからいろんな所を掃除します。今日はこの教室を掃除するけど明日からは学校周辺を掃除していくということだ」

 「あ、そういうこと!なんか浄化とか言ってたから良くわかんなくって・・・。でも、なんか清掃週間は聞いた気がする」

 浄化=掃除の言い回しは比較的分かりやすい気がするけど案外わからないものなのだろうか。

 そんなことを考えながら掃除ロッカーから箒を取り出して部室へ戻った。

 伏田さんは一年生三人が教室と廊下をやると見るや冬野先生のところに行った。黒板をやりますと言いに行ったんだろう。

 一人でできるから伏田さんにとってはいいかもしれないからかもしれないけど部長よりも後輩に対する気遣いを感じた。

 「それでは諸君。早速はじめるぞ!」

 俺、千鶴、山上は部室と廊下の箒を部長が教室の窓を伏田さんが黒板とサンをやることになった。

 教室と同じ設計の部室だが机が長机一つしかないので教室よりも簡単だ。

 このあとも順調に進んでいき二十分ほどで掃除が終わった。まだ部活の終了時間になってないけど解散になるようだ。

 「お疲れ~様です。明日からは~学校の外で~活動するので~鞄は~教室に置いて~履き替えて~校門のところに~来てくださ~い」

 こうして部活が終わった。

 明日は間違って部室に行かないように気を付けないと。

 先週は花塚が一緒だったが今週からまた三人にもどると思う。少なくとも今日は三人だ。

 いつも通りいったん千鶴たちと別れ校門の前で千鶴たち来るのを待っている。

 千鶴たちが来たので俺たちは帰路についた。

 「それにしても今週読書にならなくて良かった」

 「そうね。今週も何もなかったらいよいよこの部活の存在意義がわからなくなるものね」

 「掃除ならあまり退屈しないし」

 掃除でも何もないよりかはましだと思う。千鶴にとってもあんまり退屈しないらしいし今週はなんとかなりそうだ。

 「ところで山上。部長の説明で明日からやることわかったか?」

 山上に聞いたのは千鶴には絶対にわからないとこれまでの経験?から判断したからだ。

 部長の説明はほとんどわかったんだが明日からやるところだけ理解できなかった。

 「残留思念の回収だったかしら。あれはさすがに理解できなかったわ」

 「残留思念って何?」

 千鶴はそもそも残留思念の意味がわかんないようだ。

 「強く何かを思ったときにその場所に残る思考のことよ。いわゆる超常現象ね。この場合だと悪魔が何かをした形跡みたいな感じだと私は考えているわ」

 「へぇ。よく知ってるね」

 千鶴は感心している。日常で使うことない言葉だと思うからだろう。

 それにしても残留思念ってその場に留まってる思考のことだったんだな。俺は何かの形跡かと思ってたよ。

 「まぁ、難しい言葉だから神崎さんがわからなくても仕方がないわ」

 俺が少なからず感心していると山上の千鶴にたいする率直な感想がでできた。その一言がなければ物知りですんだのに。

 「結香ちゃん。それ完全に私のことをバカにしてるよね」

 「バカにはしてないわ。ただ神崎さんの理解力では仕方がないと思っただけよ」

 「山上。それをバカにしてるって言うんだ」

 「あら、そうなの。次からは気を付けるわ」

 実際にこれから気を付けるのかはわからないが(そこは直さないと山上のこれからに響きそうだが)一段落ついた。

 「まぁ、まだはじまったばかりだから仕方ないね。ところでしゅーくんは残留思念の回収ってどういう意味だと思うの?」

 これを気に千鶴が話題をもとに戻した。

 「何かを集めるんだろうけど。そっからがな」

 「落ち葉掃きとかかしら?」

 「確かに学校の近くに木は多いね。落ち葉もまあまあ落ちてるし」

 確かにありそうだ。近くの公園とか結構木が多いし。

 「もしくはごみ拾いとかか?」

 「あり得るわね」

 「確かに」

 この部活ならやってもおかしくない。ごみ拾いや落ち葉掃きなら必要なものもあまりなく準備も楽だろう。

 「でもこれで四日間持つかな?」

 「四日間の部活ごみ拾いとかそれはそれでなかなかきつそう」

 そもそも四日間も連続でごみ拾いしたことないし。

 「ごみ拾いをするかはまだ分からないわ。これは所詮推測だもの」

 「それもそうだね」

 「山上もいいこと言うんだな」

 確かに推測だから不安になる必要はない。いかにも山上らしい考え方だ

 「事実だもの。何をやるか分からないから今から不安がるなんて時間の無駄以外の何者でもないわ」

 「あとは事実なら言っても問題ないってところがどうにかなればな」

 「結香ちゃん。事実なら躊躇わないし、曲げないから」

 この問題点ははたしてこの部活で改善されるのだろうか。

 「だって事実に変わりがないもの。ためらう必要なんてないわ」

 このあと、すぐに山上と別れた。

 「あの部活で矯正に成功した人いるのかな?」

 さっきも少し考えたが本当に改善されるのだろうか?そもそも成功例があるのか疑問だ。というかそもそもあの活動ないようでどうにかならないと思うから成功例があった方が驚きだ。

 「冬野先生を見てる限りじゃいなさそうだよね。しゅーくんの場合はちゃんとしてても無理だろうけど」

 俺には関係ないが部長とかどうなるのだろうか?厨ニ病って自然になくなるものなのか?

 というか俺はこれからどうなるのだろうか?

 「俺、これから社会に出たらどうなるんだろう」

 「うちの社員ですか?とか聞かれそうだね」

 聞かれかねない。これで働けるだろうか?

 「どんな仕事についても無理な気がする」

 そして、千鶴と別れた俺は沈んだまま家についた。

 将来のことを憂いて今日が終わった。

 翌日、俺は昨日のことをあまり引きずっていなかった。

 午前中の授業を終えてお昼休み。今日もいつも通り購買でお昼ご飯を買った。今日のお昼はピザパンだ。

 教室に戻り千鶴の座っているところに向かった。

 「今日もパンだ。しゅーくん相変わらずパン好きだね」

 「まぁ、お腹に充分たまるからな」

 朝ご飯を作ってもらっている美春にお昼を作ってもらう時間はないし。かといって自分の料理は食べたくない。ということでお昼はパン二個と野菜ジュースだ。

 「おにぎりも購買で売ってるけどそれは食べないの?」

 「あの購買はパンが二十種類ぐらいあるからな」

 おにぎりよりもパンの方がいいと思う俺は飽きが来るまでずっとお昼はパンでいこうと思っている。

 「朝って美春ちゃんに作ってもらっているんでしょ。しゅーくんの料理はいまいちだから」

 「そうだけど」

 「自分で少しは作れるよう頑張ったら? 美春ちゃんの負担も減るだろうし」

 「そうしたいのは山々なんだけどどうしておいしく作れないかがわかんないんだ」

 昔はそれなりに頑張って練習したがなぜかおいしく作れない。食べれないくらい不味い訳じゃないけど何か物足りない味になる。

 「じゃあ、こんど私が教えてあげるよ。まぁ、前にもこういうのやって原因が全くわかんなかったけど」

 「ああ。上達するかはわからんがひとまずお願いするよ」

 今なら何とかなるかもという淡い期待を込めてお願いすることにした。

 午後の授業とSHR 掃除が終わった。

 一瞬部室へ行かなきゃと鞄を持ちかけたが今日は鞄を教室に置いて校門のところに集合ということを思い出したので急いで机におき戻した。

 鞄を持って掃除が終わるのを待っていた千鶴も山上に言われて思い出したのか慌てて鞄を机に置いていた。

 校門のところに行くと部長と伏田さんがいた。千鶴たちももう来るだろう。冬野先生は必要なものも持って来ないといけないからいつもより遅いかも知れない。

 「君はこの部活の人か?」

 そんなことを考えていると部長から話しかけられた。この発言を聞けば分かるように俺の顔はまだ覚えられてない。いったいいつ覚えられるのだろうか?

 「はい」

 「じゃあ、山吹君だな」

 「はい。そうです」

 たぶん部長は他の部員の顔を覚えていたから(他の人も人数が少ないから俺以外の人の顔と名前は覚えているだろう)消去法でわかったんだろう。

 「山吹君の顔はまだ覚えられてなくてな。責任者代理という立場にありながら申し訳ない」 

 「部長だけじゃないから大丈夫ですよ。あと時間がたてば自然と覚えられると思います」

 ここまで律儀に頑張っている部長はいくら厨ニ病の設定のためと言えどもありがたい。

 「部長。今日も早いんですね」

 「お待たせ」

 部長と話をしていると千鶴と一言余計な山上が来た。

 「あら、冬野先生は相変わらず来ていないのね」

 「今日は必要な道具を持ってこなければならないからな」

 その会話を聞きながら冬野先生はまだかなと俺は校庭の方を見ていた。するとゆっくりしたペースで手に何かもった人がこちらへ歩いてくる。途中いくつかの部活の邪魔になりかけている。俺は冬野先生だとすぐに分かった。

 「皆さ~ん。お待たせ~しました。それでは~今日からやることを~説明~しますね」

 部長が説明したそうにしていたが冬野先生はそれを無視した。

 「まず~今日からやるのは~ごみ拾いで~す。今日は~学校の北側を~掃除します」

 これで先生の説明は終わりなのかみんなに軍手とトング、ごみ袋を渡していった。

 「それでは~頑張ってください」

 そして、その一言とともに冬野先生は学校の方へ戻っていった。

 「冬野先生いなくなっちゃたね」

 「まぁ、一緒にやるとは思っていなかったから問題ないけどな」

 「東蓮寺さん。ちょっとした課外活動なのに先生がいなくなっていいのですか?」

 俺たちが冬野先生のことについて聞いていると山上がそんな質問をしていた。

 「別にいなくても問題ないんじゃないか?」

 先日は来なくても大丈夫とか言っていたからなぜだろうと思ったので俺は質問する。

 「それで私たちが怒られたらやだもの」

 どうやら山上の質問は冬野先生がいるべきか否かではなく冬野先生がいなくても怒られないか?と言うことだったようだ。

 「責任者が我らに信頼を置いてくださっている証拠だから問題はない」

 しかし、部長の答えは山上の質問にたいしては答えになっていなかったので意味がなかった。

 「それでは諸君はじめるぞ!」

 結局ちゃんとした答えが返されないまま部長が始めてしまった。

 このあとは、「今日は学校をぐるっと一周しながらごみ拾いをする」という冬野先生の言ったところとは全く違うところのごみ拾いをした。顧問としての活動を全くしていないから守らなくてもばれないけど。

 ごみ拾いは順調に進んでいった。逆に順調に進まない方がおかしいと思うけど。

 「よし、もうそろそろ時間だから諸君ら集まってくれ」

 このまま何事もなく時間になった。ごみ拾い中はとくにしゃべっていないというかしゃべっていると平和維持活動云々で言われるのでしゃべらなかった。

 「明日も今日と同じく校門のところに履き替えた集合だ。活動場所はまだ決まっていない。それでは諸君、今日の活動はこれで終了だ」

 教室に戻るとちょうど部活終了のチャイムが鳴った。

 「運動部の人で混むから少し待ちましょう」

 「そうだね」

 「ああ」

 少し時間がたってから俺たちは下駄箱に向かった。

 校門の前でふたたび千鶴たちと合流し帰路についた。

 「予想通りごみ拾いだったね」

 「そうだな。さすがに一時間ぐらいやっているときついし」

 これがあと四日間もあると思うと少し大変だなと感じた。

 「そうね。ごみもタバコの吸い殻が多かったからトングが邪魔になったわね」

 「逆に軍手はありがたかったな」

 「そうだね。素手だと臭いが手に残るからね」

 あんなに吸い殻が落ちているとは思っていなかった。なので千鶴と同じく軍手はありがたかった。

 「タバコなんて体に害悪しかないものなのに吸う人は減らないわね。しかも、マナーが悪い人はポイ捨てするもの。これならいっそ世の中から消してしまってもいいんじゃないかしら」

 「タバコの生産が雇用を占めてる国もあるから一概には言えないんじゃないか?」

 「よくわかんないけど結局はマナーがよくなればいいんじゃない」

 「そうね。吸う人たちのマナーよね」

 山上は少し短絡的な思考だったかしら?と少し反省しているようだった。

 「まぁ、公共の場とかだと吸い殻以外のごみも結構落ちてるから喫煙者だけがどうこうとは言えないと思うけどな」

 結局喫煙者かどうかはかまわずマナーをみんなが守って欲しいというところに山上はおちついたようだ。

 「明日もごみ拾いだよ」

 「こういうのって定期的にやった方がいいんじゃないか?」

 千鶴は少しめんどくさそうな感じだ。まぁ、一時間ずっとごみ拾いを数日間やるのだからやる気がでる人はあまりいないだろう。

 「あら、清掃週間は一年に二回春と秋にあるのだから充分定期的じゃないかしら?」

 「え、これ秋にもあるの!」

 「いや、もっと小分けしてって意味だったんだけど」

 どうやらそこまでは山上に伝わらなかったようだ。それにしてもこれ秋にもあるんだな。

 「意図を汲み取れなくてご免なさい」

 自分に非があると思った山上に普通に謝られた。そういえば山上ってこういうの汲み取れなかったっけ?

 「いいよ。そういうことで山上に期待はしてないから」

 「それよりさ。秋も同じことをやるのかな?」

 どうやら考えていたことが口に出ていたようで口喧嘩になると思った千鶴が話を反らした。

 千鶴の方を見ると何やってるの!というような雰囲気だった。

 「さあ、わからないわ。でも、あの先生が他のことを考えるとは考えづらいから同じじゃないかしら」

 山上は何か言いたそうだったが千鶴にのった。

 「そうだろうな」

 ここで俺だけのらないのもなんだと思ったのでのる。

 「そっか~。ごみ拾いかぁ」

 「でも、こういうのってボランティア部ぽいっちゃぽいよな」

 「そうね。ボランティアと呼べるまでのものかはいまいちだけれど」

 「なんていうのかな?わかんないけどいいや」

 千鶴はそれをなんていうのかなわかんなかったようで考えるのをやめた。

 実際分からなくても問題ないから俺は特に何も言わなかった。山上も何も言わなかったので分からなくても問題ないと思ったんだろう。

 「それにしても明日はどこをやるのかしら」

 「確かに!今日で学校の周りが終わっちゃったからやる場所がない」

 確かに明日からどこやるんだろう?あれ?もしかして冬野先生が北側っていってたのは分けてやんないとやることなくなくからか?そうなると冬野先生はろくにごみ拾いの場所を考えていないことになるがあの先生なら充分にあり得ることだ。

 「公園だったら近くにあるから一日は持つんじゃないか?」

 「でも明後日からの二日はどうするの?」

 「それは東蓮寺さんが考えてくれているわよ」

 部長は意外と律儀だから考えているだろう。

 このあと山上や千鶴と別れた俺は無事帰宅した。

 そのまま自分の部屋に入った俺は家着に着替えたあとベットに横になった。夕食までは一時間ほどありそうなので勉強しようかとも考えたがやる気がおきないので夕食を食べ終わってからやることにした。

 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る