第6話 図書委員会 

仮入部期間の残り二日も無事に終え土日を経ていよいよ今日から本格的にクラブがはじまる。

今までクラブの時間=読書だったのでやっとクラブに入った感が出てきた。まぁ、その分忘れられることが多くなるのだが。でもそれよりもこのままの方が俺がせっかくクラブに入ったのに!って感じになるので意味ないなって言うのが俺の考えだ。クラブに入りたくなかったとしても今現在入ってしまっているのでこの状況を出来るだけ楽しむしかないし。

 そして、今は昼休みが始まったところだ。俺は急いで購買で買ってきたコロッケパンをあけている。一方の千鶴は購買にいってない分もう食べ始めている。

 山上は千鶴が一緒に食べよと誘ったらしいが「教室が騒がしいから居たくないしお昼は一人でいたいの」とか言ってきっぱり断られたらしい。果たして本当にそうだろうか?でも、今まで好意を寄せられたことあまり無さそうだし意外とあるかもな。そもそも山上が好意を向けられて気づくかわからないけど。

 一方の千鶴は先週の一週間で山上についていろいろと理解したようでいっこうに気にした様子はない。それはそれである意味すごいと思う。

 「イヤー、今日から本格的にはじまるね♪」

 「ああ。そうだな。今のところ何もやってないから今週も何もなかったらホントにあのクラブの存在意義がわからなくなるな」

 「そうだね。でも、最初の一週間が何もなかったおかげでクラブの雰囲気には馴染めたかも」

 「たしかにそうだな。山上とも仲良く?なれたしな」

 そう、先週は何もないと聞いたときは「おい!」と思ったが今思うとそれがあったことで結構馴染めたと思う。でも、クラブは基本的にいろんな委員会の手伝いなので雰囲気に馴染めても委員会ごとで変わると思うからあまり意味がない気もするけど。

 「何で疑問形なの?結香ちゃんとは結構仲いいと思うけど」

 「それは言い合いがほとんどたからな」

 「それ仕方なくない?普通自分の本心を言ってたらそうなるよ。しかも二人とも会話とかそういうのあまりなれてないと思うし」

 「まぁ、そうだな。そう考えると仲良くなってんのかな?山上に聞いたらそんなことないとか言われそうだけど」

 ホントに言いかねないよな。しかも、山上って思ったことを言うやつだからいってくるとしたらホントにそう思ってるだろうしな。

 「それはいいそうだね。でも、きっと照れ隠しだと思うよ♪」

 「それはその時の表情やトーンによって変わるだろ」

 「まぁ、どっちにしろ今考えても意味ないよ」

 「それもそうだな。ところでさこの一週間何もなかったのって馴染めるようにっていう冬野先生の計らいかな?」

 「それはないんじゃない。担任でもあるからいろいろ接する機会があるけど今のところそこまで考えて行動する人には見えないし。先生には申し訳ないけど」

 「いや、冬野先生はそういうの気にしない人だと思うから申し訳なく思わなくてもいいと思う。あとやっぱりそんなこと考えてないよなー」

 「それよりもしゅーくん今日って何委員会の手伝いにいくのかな?」

 「それはわからん。でも、今日から忘れられることが多くなりそうだな」

 「たしかにそうだね。でも、きっとなんとかなるよ♪」

 「いや、そんなんでなんとかなったら苦労してないよ!俺」

 そんな感じで昼休みが終わった。

 午後の授業も比較的ちゃんと受け放課後になった。今週は掃除当番なので今は掃除中だ。先週の水曜日以来千鶴と一緒に部室へいくことになったので(千鶴が一緒じゃないと部外者と思われて追い出される可能性があるので)今週掃除のない千鶴には廊下で待ってもらっている。

 ちなみに山上はもう先に部室に行っている。理由はさっき教室を出るのを見たからだ。

 掃除を終えた俺は千鶴と共に部室へ向かった。

 「こんにちは」

 「あらどなたかしら?」

 「山吹です」

 「ああ。貴方が山吹君ね。ごめんなさい、印象が薄いせいで顔が全然覚えられないの」

 「こんにちは。結香ちゃん」

 「神崎さん朝挨拶したからする必要ないと思うのたけれど?」

 「でも、無言で入るのもあれだし」

 「なら仕方ないわね」

 相変わらず先輩と先生は来ておらず(ホントに何やってるの?)部室にいるのは山上だけだ。

 そして、この下り(山上に存在感の薄さをいじられる。たぶん本人は自覚ない)は最近ずっと一緒だ。

 「ところで山吹君。貴方の存在感の薄さ応募すればギネスに載るんじゃないかしら?」

 「イヤー、さすがにそれはないと思う」

 「第一そんなことで記録になってもこっちは全然嬉しかねーよ!つか、逆にむなしくなってくるわ!」

 「あら、それはごめんなさい」

 「やあ、諸君。今日も諸君らは来るのが早いな」

 「いや、東蓮寺さんたちが遅いだけだと思います」

 東蓮寺さんの言葉にたいしてしっかり反論する山上。そういうところは真似たいと思うことも無くはないがどうせ覚えともお前誰だ?みたいな感じで自己紹介に時間を費やされ終わるのがおちだろう。

 「我らにもいろいろあるのだよ。ところで君は山吹君であっているか?」

 「はい。あってますよ」

 「よかったね♪覚えられてるよ」

 「イヤー、完全に消去法だろ!あれは」

 そして、東蓮寺さんは毎回あっているかの確認をとってくる。覚えようと頑張っているのはとても嬉しいのだが覚えてきてるようには感じられないのでどう頑張っても時間以外の解決法がないと言うことを言外に言っているようなものだ。

 改めて突きつけられると少し落ち込む。でも、頑張ってるんだから普通よりかは覚えるの早いよね?

 「お待たせ~しました。では~クラブを~はじめま~す」

 そう考えていると先生が入ってきた。今日からクラブがはじまるからか今日は先週よりも5分ほど早い。

 「先生今日から本格的にはじまるんですよね?こんなに遅くても委員会に迷惑をかけないのでしょうか?それとも今週も何もないのですか?」

 「大丈夫~ですよ」

 先生。それじゃ何にたいして大丈夫なのかわかりません。もう少しわかるようにいってください!それとも全部大丈夫なんですか?

 「それは何にたいしてですか?」

 「確かに何にたいしての答えかわからないです」

 どうやら千鶴と山上も同じことを思ったらしい(千鶴は山上の質問を聞いて気になったようだが)

 先輩二人はもう聞いているのか気にはしてなさそうだ。

 「全部に~たいしてで~す。じゃあ、今週~手伝いにいく~委員会を~言いますね♪」

 よかった。今週も暇何てことはないようだ。千鶴と山上もホッとしている。

 「今週は~図書委員会の~手伝いに~行きま~す。4時半に~図書室なので~もうすぐ~いきますよ。詳細は~むこうで~聞いてくださ~い」

 そういって先生は皆を先導して図書室へ向かった。といってもすぐ下なので1分もかからず着いた。

 「あとは~図書委員会に~従って~頑張ってください」

 そういうと冬野先生はどこかへいってしまった。て、先生責任者が居なくなってどうするんですか?

 「東蓮寺さん。あれでいいんですか?」

 「責任者である人がいなくなるのはどうかと思うわ。まぁ、いても仕方がないと思うけれど」

 「これいいんですか?」

 全員がそれぞれこの状態にたいしての疑問を言う。山上の場合は質問と言うより意見だな

 「普段はあれだぞ。我らの顧問は我らが平和維持活動している間に次の活動場所の探索をしているのだ」

 「しゅーくんそれってどういう意味?」

 山上に聞いたら率直な感想をのべられて傷つくと思ったのか俺に聞いてきた。てか、それぐらいはわかるだろ!

 「いや、これ結構分かりやすいぞ!」

 「ええ!マジ?私半分ぐらいしかわからない」

 「いや、これに半分も何もないだろ」

 相変わらずの千鶴の語彙力に少しあきれる。現代文はできるんじゃないの?あ、今回の場合それは関係ないか。

 「そんなことないよ!私冬野先生が私たちがクラブの活動中何かしてるってことしかわからないもん」

 はぁーとため息をついて話そうとしたら

 「あら神崎さん意外と語彙力がないのね」

 と山上が会話に割り込んできた。まぁ会話が続いてたから気づかれるのは必然だろう

 千鶴は予想通り落ち込んでいる。

 「まぁ、簡単に言うとこの間に他の委員会からの届け出を整理してるってことだ」

 「会話は一段落したか?ならいくぞ!今年度最初の活動だ!」

 とても気合いが入ってるな。

 こうして俺たちは図書室に入っていく。

 図書室は意外と広く入ってすぐのところに貸し出す場所がある。右奥に見える扉が本置き場に繋がっているのだろう。右側が主に本で左側が本を読んだりするための机と椅子がある。

 中に進むと一番手前のところに図書委員会と思わしき人たちがいた。

 「諸君らが図書委員会であっているか?我らはボランティア部のものだ。今日はよろしく頼む」

 こうして東蓮寺さんが挨拶をする

 「弥恵ちゃん相変わらずの厨二病だね。伏田くんも相変わらずのコミュ障で。そこの3人は新入部員?」

 受け答えをした人がたぶん委員長だろう。それにしても受け答えになれてる気がする。

 「いかにも」

 「なら自己紹介しないとね♪私は3年でこの委員会の委員長をやっている鳴瀬沙那美なるせさなみ。秋で交代するから短い間だけどよろしくね」

 俺の予測は間違ってなかった。この場合間違えることの方がレアだと思うけど。

 鳴瀬さんはキリっとした感じだが近寄りがたい感じがあまりない。見た目からしてスポーツ女子って感じなので(髪型もボブなので短い)図書委員会委員長は少し意外だ。俺は改めて人を見た目で判断してはいけないなと思った。今までそんなことはほぼなかったけど。そもそもそんな機会自体なかったし。

 「山上結香です。今週一週間よろしくお願いします」

 そんなことを考えている間に山上が挨拶した。

 「山吹秋也です。よろしくお願いします」

 「神崎千鶴です。今日からよろしくお願いします」

 皆それぞれ挨拶をしていった。

 その間鳴瀬さんは興味深げにこっちを見ていた。しかし、俺らは一目でわかるようなものではないと思うので意味はないだろう

 「結ちゃんに山吹君、千鶴ちゃんだね。改めてよろしく」

 ここまでを見る限り鳴瀬さんはとてもフレンドリーなようだ。でも、せっかく覚えてもらっても明日には忘れられてるんだよな。

 「それでは、この一週間にやることを大まかに説明しよう。この図書室は季節の変わり目に本を入れ換える。基本的にはこの入れ換え作業をするのだが新年度に毎年新しい本が来るから作業量が激増することになる。それに加えて公式戦とかもあるのでクラブを優先しても構わないということになっているのであまり人が来ない。よって君たちには足りない人手を補ってもらう」

 確かに鳴瀬さんをいれて五人ぐらいしかいない。そういうところはさすが部活を推奨しているだけあるなと俺は感じた。

 「で、具体的に何をすればいいんですか?」

 「まあまあ、結ちゃんそう焦らない。弥恵ちゃんたちは去年もやったから覚えているだろう。ずばり、今日からやるのは大規模な本の入れ換えだ」

 大規模を強調してくる辺り結構な量があるようだ。去年もやったところを見ると毎年恒例なのだろうか?

 そう考えている間にも鳴瀬さんの説明は続いていく。

 「簡単に言うとこれから配るリストに新しく置くものとか分けてかいてあるからそれを元に本を持ってきて入れ換えて、しまうという作業をやっていってもらう。詳しくは始まってから聞いてくれ!それでは早速作業をはじめていく」

 「まずそこの3人は真菜と手前の本棚を担当してくれ。私を含めた残りの六人は残った3列を担当する」

 こうして、活動が始まった。でももう五時近くになっているので細かい説明が中心であまり作業はできないだろう。

 「改めて一年の花塚真菜はなづかまなです。今日からよろしく」

 名前から女子だと思っていたが

 男子だった。でも、それに違和感を感じさせないぐらいの美少年だ(かわいい感じの)。

 「花塚くん図書委員会だったんだね」

 「まさか、ボランティア部に神崎さんがいるなんて驚いたよ。」

 「あはは。まぁ、いろいろあってね」

 「千鶴知り合いか?」

 気になったのでタイミングを計らって俺はそう聞いてみた。

 「しゅーくん知らないの!同じクラスだよ!」

 「すまん。いろいろと忙しくてクラスの人のこと覚えられてない」

 「山吹君覚えてる?テストの時隣だったんだけど」

 そこまで話したとき不意に花塚さんから話しかけられた。

 「ああ、そういえばそうだったな・・・て、何で俺のこと覚えているの!」

 あのとき隣だった子がこんなにかわいい人だったなんて!自分のことで精一杯だったから気づかなかった。いや、そんなことよりなぜ俺の顔を覚えてるんだ?

 「いや、だって同じクラスじゃん?」

 「花塚君しゅーくんのことおぼえれてるの?よかったね。しゅーくん」

 「あら、意外だわ。何事にも例外って存在するのね!」

 各々が驚きを露にする。どうやら前から知り合いの千鶴も知らなかったようだ。それにしてもこれっていったいどういう原理なんだ?

 「秋也って読んでいいか?僕のことは花塚でいいから」

 「あら、そこは真菜じゃないのかしら?」

 「その名前女子っぽいから嫌なんだ」

 「結香ちゃん。初対面の人にそれは言い過ぎ!ごめんね、花塚君」

 「で、それで言い?」

 そういって花塚は上目遣いでこちらを見てくる(顔にみあって身長も小さいたぶん160ぐらい)。身長差があるので仕方がないことなのだが。

 その姿は男子とは思えないかわいさを放っている。最初見たときは女子に見えたしな・・・たぶん花塚は生まれてくる性別を間違えたようだ。

 そして、ノーと答えを返すことなど当然俺には出来ない。そもそもノーと答える理由がないし。

 「い、いいよ。よろしくな。花塚」

 「うん!それじゃあさっそく説明するよ」

 「その前に花塚クラブは大丈夫なのか?」

 「僕卓球部で今日はクラブないから大丈夫」

 それならよかった。俺はひと安心した(何に安心したかわからないが)。

 「それより、何をやるかはしっかりと把握しているの?私たちと同じ一年でしょ♪」

 「ああ、それなら金曜の模擬的なつやったから問題ないんだ」

 花塚。なんかいろいろと山上がごめん。俺は心の中で謝った。だって普通やることわからなかったら鳴瀬さんがよろしく♪何て頼まないだろう。

 まさか山上って意外とバカなのか?いや、それはないか。どうせただ単に不安になっただけだろう。

 「じゃあ、早速はじめてくよ。あと、最初にいっておくけどかなり大変だから」

 「え!それ本当?」

 「いや、そこで嘘つく必要ないだろ!」

 「いや、今のは反射的につい・・・」

 確かにそういうこともなくはないな。なら仕方ないのか?

 「何事も考えてからいうべきよ」

 「お前がいうな!」

 「結香ちゃんは人のこと言えないでしょ!」

 そう思っていたら山上から思わぬ発言が飛び出した。俺とたぶん千鶴も反射的に言い返す。

 あ、反射的に勝手に言葉がでて来ることあったわ。

 「なんか3人ともなかいいよね。でも、もうはじめるからほどほどに。」

 さらっと俺たちは注意される。でもなぜだか嫌な感じがせず。とてつもない後悔におそわれる。花塚を放置するなど俺は何をやっている!

 「すまん」

 「ごめんね」

 「それじゃあやりましょう」

 二人が謝るのにたいしてなぜか場をしきろうとする山上。いや、その役割花塚だから。

 「お前がしきるな!そもそもやること分からないだろ!」

 「はぁー。・・・結香ちゃん矯正頑張ろうね」

 こんな感じで時間だけがどんどん過ぎていく。ほんとごめんな花塚。

 そして、何か言い返してくる山上を引っ張って俺たちは作業をはじめた。

 この一週間でやることだが予備室(本をおいてるところを図書委員の人はそう呼んでいる)から新しくはいった本や春に並べる予定の本を段ボールにいれて持ってくる。そして、本の入れ換えをおこないそのときに平行して新着の本も並べていく。ちなみに予備室には三メートルほどある天井に届くぐらいの本棚が辺り一面に並んでいてかなりの圧迫間を感じる。季節ごとに別れていてそれを段ボールにいれて運ぶ(かなりの重さなので足元がおぼつかなくなる)。

 新着の本は元々段ボールに入っているのでそのまま運んで新着コーナーにおくらしい。

 そして、入れ換えた本を段ボールにいれ予備室に戻す。そのときにいらない本の選別もするらしい(まだ使えるものは寄付するんだとか)。

 こうして花塚から一連の説明を聞いた俺たちは行動を開始する。入れ換えは全体の3分の1ほどでそれにプラス新着の本といった感じだ。さらに本の選別と来れば手伝いをお願いするのは当然の帰結と言えるだろう。

 「お、おも~い」

 「確かに重いな。これ5キロぐらいあるんじゃないか?」

 「あと一人三往復ぐらいするから」

 「りょーかい」

 「頑張るしかないか」

 「千鶴結構力あるだろ!」

 「それにそこまで重くないと思うわよ」

 「気分の問題なの!あと、力があるって言われても嬉しくないから!これでも私女子なんだからね!」

 どうやら俺の発言は千鶴に変に勘違いされたらしい。別にそういう意味じゃないんだけどな。

 そして、山上は決して運べない重さではないと言いたいんだろう。何て分かりにくい言い方なんだ!千鶴は理解できたようだが(会話においてはいろんな意図を読み取れるよな千鶴は)花塚は普通に重いと思うんだけどな?と言葉の意味そのままに受け取ってしまっている。大丈夫だ!花塚君のいだいた疑問は決して間違ってはいないから!

 「山上!紛らわしい言い方したから花塚が勘違いしてるぞ!」

 「あら、それはごめんなさい。花塚君貴方の思っていることはあっているわよ」

 「秋也。山上さんってどういう人?なんかいまいちつかめないんだけど」

 そして、ここまでをみていろいろとわからなくなったらしく俺に聞いてきた。てか、顔が近い!確かにボリュームを下げてるから仕方ないけどそれはいろいろと反則だ!

 「簡単に言うと思ったことをそのまま口にするKY かな」

 「な、なんかいろいろ大変」

 お疲れさま。みたいな感じで声をかけてくれる花塚に少なからず癒されている。そのせいで返事が適当になってしまう。

 「ああ、まあな」

 「ところで秋也と神崎さんは何でボランティア部に?入る理由が見当たらないんだけど」

 どうやらボランティア部のことは委員会の関係で知っているようだ。

 「え、えっとだな。花塚はなぜか例外なんだけど俺って印象が薄いんだよね」

 「そうなの!僕には全然そうは見えないけど?それって僕の感覚が一般とずれてる?」

 いやいやそんなことないから。てか、俺のことを覚えてくれてることがほんとにありがたいぐらいだから!

 「いや、そんなことはない!俺が言うのは変かもしれないけど全然ずれてないから!」

 「なになに?なんの話してるの?」

 とそこへ千鶴が会話に入ってくる。最初は小さかったボリュームも途中から大きくなっていたようだ。

 「あれ?山上は?」

 そして、さっきまで一緒にいた山上の姿が見えないので訪ねてみる。

 「ああ。さきにいって作業してると思うよ♪」

 「ああ。そうか」

 「ところで神崎さん。神崎さんは何でボランティア部にしたの?」

 「え!何でそんなことを急に?」

 顔を少し赤くしながら動揺する千鶴。たぶんここ最近のみんなの(主にボランティア部の部員)発言によるものだろう。それにしても、ほんとに分かりやすいな。

 「千鶴が来たときちょうどこの話をしてる最中だったから」

 「なんだ。そんなことか。ならさきにいってよね!」

 「いや、勝手に動揺したの千鶴だし」

 「なんか変なことでも聞いた?」

 しまいには花塚が悪いことしたかな?みたいな感じで罪悪感を漂わせながら聞いてくる。

 大丈夫!花塚はなにも悪くない!

 「いや、全然大丈夫!」

 千鶴はそれに屈したようだ

 「で、私がクラブに入った理由だよね。まぁ、簡単に言うとしゅーくんの付き添いかな。あ、勘違いされないように言っとくけどしゅーくんは周りに埋もれるから会ってからある程度の期間がたたないと見つけられないし顔を覚えてもらえないの。まぁ、花塚君みたいな例外もあるらしいけど」

 「へぇ。神崎さんって本当に優しいんだ」

 「そうかな?中学の時は全然関わってないけど」

 「それでも普通に優しいと思う!秋也恵まれててよかったじゃん♪」

 「まぁ、確かにな。こんな俺には少しもったいない気がするし」

 そこまで言うと照れたのか千鶴の顔が赤くなっている。それにしても顔を赤くするインターバル短すぎないか?

 そうして会話をしているうちに目的の本棚の前に着いた。

 「よし、じゃあみんな今から入れ換えるほんのリストを配るからそれに沿ってやって」

 「了解」

 「オッケー」

 「わかったわ」

 それぞれが返事をして各々の作業に取り組んでいった。こういう仕事はほんを見つけられればなんとかなるから千鶴も一人で大丈夫だろう。

 そうして作業をはじめた俺たちだが説明やらなんやらで今日作業できた時間は実質20分ほどとなった。そして、短い時間だがこの作業はほんの位置を把握しないとなかなか進まないということがわかった。それでもたぶん少しでも人が多い方がはかどるのだろう。俺にはあまり実感がないが。

 作業を切り上げたあと先輩たちの担当している方を見に行ったらなんと1列の約半分がが終わっていた。恐るべきスピードだ。今日の作業時間は平常時の半分ぐらいだから一日で一列が終わるスピードだ。確かに本の選別があるからこのぐらいの速度じゃないとダメなんだろうけどそれにしたって早すぎる!鳴瀬さんはもちろんのこと東蓮寺さんたちもかなりのペースでやったんだろう。

 伏田さんが早いのはわかるけど東蓮寺さんが早い理由はマジでわからない。

 「先輩たち早いですね!」

 「僕も頑張らならないと!」

 「まさか、先輩たちがここまでできるとは思ってませんでしたわ」

 そして、各々感嘆の声をあげていく。一人失礼なことをいっているやつもいるが。

 「ふ。我にかかればこの程度のこと造作もない!」

 「そうだな。弥恵ちゃんの頑張りは大きかった。まぁ、私の方が上だけどな」

 わっはっはといった感じで笑う鳴瀬さん。

 俺は図書委員会それも委員長の人が人よりも図書室について知らなかったらそれこそ存在意義を問われるのでは?という疑問をいだいたが雰囲気的に軽く流されそうなので口には出さなかった。

 「悔しいがここ魔導書の図書館は鳴瀬さんの本拠地ゆえ致し方ないか」

 「で、明日だけど4時15分までにここに来てね♪これからは今いった時間にここに集合だからよろしく!」

 何か言っている東蓮寺さんを無視して話を進めていく鳴瀬さん扱いになれているのが見てとれた。

 そして、俺たちは解散した。最後は先生がまたくるのかな?と思ったが結局来なかった。それでいいのだろうかと思ったがどうせ来ても帰るのが遅くなるだけだし来ても意味ないかなという先生には失礼だが的を射ている考えで流すことにした。

 そうして俺たちは下駄箱へ向かって歩いている。最近は3人で帰るというのが暗黙の了解になってきた。ちなみに日曜日は絶対クラブがないらしい。

 「ところでさ。魔導書ってなに?」

 さっきの発言からずっと気になっていたのか悶々とした顔をしながら尋ねてくる千鶴。他にもっと気にすることあるだろう(冬野先生のことだが自分も流しているので人のことは言えない)と思いながらもどうせ山上は答えないだろうと思うので質問に答える。

 「それはな・・」

 「端的に言えば魔法についてかかれたほんよ」

 と思ったら意外にも山上が答えた。

 「いつもそういうの答えないくせに。何かあったのか?」

 「確かに!なんかもうさっきの質問どうでもいいからそっちが知りたい!」

 自分から質問しといてどうでもよくなったとか自由だな。確かに気になってるけど。

 「神崎さん。貴女がそう言ってしまっては私が答えた意味がないわ!それにこれは神崎さんの勉強になればと思ってやっていることよ!邪魔ならやめるけど・・・」

 どうやらこれが山上のやり方のようだ。言うことはズバッと言うくせに不器用だなコイツ。まぁ、不器用じゃないやつはあまり見ないけど

 「ううん♪全然大丈夫だよ♪」

 その気持ちを汲んだのか笑顔で答える千鶴。ほんとコミュ力だけは高いよな。

 「ならよかったわ。じゃあ、山吹君いつも通り校門のところで会いましょ」

 「ああ、わかった」

 こうして千鶴たちと一旦別れた俺はさっさと靴を履きかえ校門へ向けて歩き出す。時間を見ると完全下校時刻5分前だ。これだと家につくのは6時を過ぎそうだ。

 「秋也ちょっと待って!」

 急に声をかけられて驚きつつ後ろを振り替えると花塚が走ってこっちに向かってきた。

 「どうしたんだ?」

 「いや、ちょうど見かけたから一緒に帰ろうと思ったんだけど。邪魔?」

 少し間が空いたのは迷惑じゃないかなみたいなことが浮かんだからだと思う。上目遣いで(身長差的に仕方がないのだが)聞いてくる。

 「帰る方向大丈夫か?」

 「駅の方だけど大丈夫?」

 「あ、ああおんなじ方向だ」

 「よかった。じゃあ、一緒に帰ろ」

 「千鶴や山上もいるけどいいか?」

 すごく嬉しそうに答える花塚を見て違っても大丈夫と言ってしまうんじゃないかと思ってしまった。でも、それはさすがに千鶴たちに悪いか。いや、別に大丈夫だな。

 「全然大丈夫!それより改めて三人って仲ね」

 「同じクラブだしな。それに花塚もすぐに仲良くなれるよ!」

 そうして俺たちは校門のところに来た。

 そしてしばらくすると千鶴たちが来て俺たちは帰路につく。四人になるとちょうど偶数なので俺と花塚、千鶴と山上という組み合わせで会話をしていく流れになった。

 「ところでさ花塚ってどこら辺に住んでるの?」

 そして、俺は普通に気になったことを聞いてみる。すんでるところを聞けば遊ぶ予定もたてやすくなるだろうしこの先のメリットが一杯だ。今生初の男友達(見た目が女子っぽいけど)大切にしなければ。俺はそう思った。

 「この道からいっぽんはいったところ。秋也もこの道沿い?自転車があるから結構遠いね」

 「ああ。線路沿いらへんだな」

 「じゃあ僕の方が近いな。ところで何でそんなこと聞くの?」

 意外と家が近いことに驚きながらも花塚の質問に答える。

 「いや、だって遊ぶ予定たてるとき楽かなって思ったから・・・」

 「ああ。そういうこと。楽しみにしてるから決まったら教えて!これ約束だから!」

 俺の思ってたいじょうに納得&楽しみにしている様子に驚きながらも答えを返す。まぁ、高校生かつはじまったばかりで友達と出掛ける機会はまだないからだろうけど。

 「お、おう。でも、花塚。お前はクラブで忙しいだろうから当分は難しいかもしれん」

 「じゃあ、また、予定と合わせながらで」

 そんな感じで俺は花塚と連絡先を交換した。

 そして、ちょうどそのくらいで花塚と別れる。大体家と学校の中間辺りだ。

 そして、またいつもの3人になった。

 「何で花塚君はしゅーくんのこと覚えてたんだろうね」

 また、3人での会話が始まる。どうやら千鶴も花塚が俺のことを覚えている理由をを考えているらしい。

 「俺も考えてみたがさっぱりわからん」

 「確かに気になるわね。瞬間記憶能力でも持ってるのかしら?」

 「まぁ、確かにそう考えるのが妥当だな。しかし、俺はそれよりも覚えてもらっているという事実にたいしての歓喜で頭が一杯になっている。こんなの人生ではじめてだしな」

 「確かにね。でももしかしたら話してないだけでそういう人がいたかもよ」

 「ああ、そうかもな」

 「まぁ、花塚君に感謝をしながら生きてくことね」 

 そんな感じで活動開始初日を無事に終えることができた。もし、俺のことを他にも覚えてるやつが居てもその人に出会うまでにどれだけ傷つくか分かんないけどな。

 翌日、いつもどうり授業を消化して今は教室の掃除をしている。千鶴はいつものように掃除が終わるのを廊下で待っている。山上はもう部室へいったんだろう。

 掃除を終えたあと間違えて部室に向かおうとしたが金曜までは図書室集合なのだと思いだしそのまま千鶴と一緒に図書室に向かう。行き方がほとんど一緒なおかげで千鶴には気付かれてないらしい。まぁ、気付かれたところで何かあるわけではないんだけど。強いて言うなら笑われるぐらいか。

 そんなこんなで図書室に着いた。なかにはいると図書室ならではの匂いがする。他の人たちはほとんど来ているみたいで来ていないのは部長だけだ。

 「あ、秋也たちも来たね!これで後は東蓮寺さん?だけかな」

 机のところまで行くと花塚がそう言いながら近くに来た。

 「やはり弥恵ちゃんのクセはまだそのままか。相変わらすだな」

 その隣にいた鳴瀬さんはそう言いながら笑っていた。昨日会ったばかりなのによく笑う人だなと俺は感じていた。

 「鳴瀬さん。東蓮寺さんの癖ってなんですか?」

 ここですかさず山上が疑問に思ったことを聞く。俺も気になったがここまでずばっと聞けないだろう。

 どうやら他の人も気になっていたようで(といっても千鶴ぐらいだが)鳴瀬さんの発言に耳を傾けてる。

 「ああ、新入部員のみんなはまだ知らないのか。これは去年もだったんだが弥恵ちゃんは帰りのSHR が終わったあとノートを書くらしいんだ。何を書くかは弥恵ちゃんに聞いてもよく分かんなかったけどね。まぁ、そう言うわけで何かしら教室で書いているの」

 「そうなんですね!教えて頂きありがとうございます」

 これで部長が遅れる理由がわかった。山上もなんとなくわかったようだ。千鶴の方は完全にはわからなかったらしく(千鶴は絶対分かんないだろうとは思っていたが)どういう意味と肘で脇腹をつついてきた。俺に聞く理由は山上に聞くと教えてはくれるだろうが語彙力云々で言われるからだろう。

 「つまり、厨二病の世界観で活動報告書みたいなものを書いているから遅れてるってこと」

 「え!書いてる内容なんて言ってなかった気がするのに」

 千鶴は普通に驚いていた。

 まぁ、厨二病じゃなければ内容まで分からなかったし確実にあっているかも分かんないから驚いて当然なんだろうけど。

 「うん。内容までは言ってなかったけど厨二病はこういうことをするらしいから。あくまでラノベの中の話だけど」

 「なんか厨二病もいろいろめんどくさいね」

 そんなことを話していると部長がやって来た。山上が少し遅過ぎるのでわ?と言っていたが当の部長は全く気にしていなかった。時間も押していたので結局うやむやのまま活動開始となった。

 そして、今は本を段ボールにいれている。他の人たちも昨日よりかは作業が速くなっていたがまだまだ先輩たちと比べられるほどではなかった。

 「やっぱり相変わらず重いよこの段ボール」

 「でも、運べない重さではないわよ」

 「なんかこの会話昨日も聞いた気がする」

 そして、今俺は昨日と同じ光景を目にしていた。

 「そうだっけ?」

 千鶴はあんまり記憶にないようだ。

 「うん。秋也の言うとうりだと思う」

 「そうね。微かに記憶に残っている気がするわ」

 後の2人は曖昧だが覚えていたようだ。俺の感じていたことは間違いではなかったらしい。

 何だかんだで本棚の前まで来た俺たちは昨日と同じように入れ換えを始めた。そのあとはもくもくと各自比較的真剣に作業していた。千鶴は途中何度か集中力が切れかけていたようだが。

 そして、各自が持ってきた段ボール1箱分が入れ換え終わったところぐらいで(まだ残っている人もいるが)クラブ終了のチャイムがなった。

 「ふー。やっと終わったぁ」

 千鶴は軽く延びをしてる。途中で何度か集中力が切れている事からして同じ作業を続けるのは授業と同じで退屈になってくるのだろう。

 「確かに少し大変だったわね」

 さすがの山上もさすがに疲れたようだ。実際俺も疲れたしな。

 「ああ、まあまあ大変だったな。それにしても千鶴は集中力があまりないよな。途中で何度か切れてたし」

 「私こういうのは続かないんだよね。なんか退屈しちゃって」

 千鶴は直さなきゃと思っているが成果があまりないようだ。現にそれが成績の悪さへ繋がっている。

 「なら、授業とかちゃんと受けれてないんじゃないかしら?」

 「うぅ・・・」

 どうやら的を射られて少し落ち込んでいるらしい。本当に山上はそういうこと気にせずに発言するからな。

 「おーい、諸君。一旦集まるからこっちに来たまえ」

 そこで、部長から声がかかった。千鶴にとってはとんだ助け船となったことだろう。

 「みんなお疲れさま!明日からもこの調子でどんどんやっていくから。集合時間は今日と一緒の4時15分ね。弥恵ちゃん。今日は5分遅刻してたから明日は時間守ってよ!じゃあ、そういうことで解散」

 最後は図書委員長である鳴瀬さんがしっかりと締めて今日の活動が終わった。鳴瀬さんに言われたからたぶん部長は明日から遅刻はしないだろう。そして、結局今日はクラブに1度も冬野先生は来なかった。  

  今日も花塚と一緒に帰るので4人だ。今はいつものように校門の前で千鶴たちが来るのを待っている。違うのはそこに花塚がいることだ。

 「お待たせ。さあ帰ろう!」

 今日も千鶴の一声を機に一同帰路に着いた。

 そして、俺は今日のなかでかなり気になったことを話題にすることにした。この面子だったら俺でも何とか話題提供ができる。

 「そう言えば今日に関しては冬野先生1度も顔を見せなかったな」

 「あ、確かにそうかも!」

 「今日に関しては冬野先生は必要なかったから問題ないんじゃないかしら」

どうやら千鶴は気づいてなかったらしい。山上の方は相変わらず思ったことをそのまま話している。まぁ、今日冬野先生が来る必要はないと俺も思っているけど。

 「秋也。今話題になっている冬野先生とボランティア部ってどんな関係?」

 「あ、そう言えば冬野先生図書室に入る前にどこか行っちゃったから花塚は知らないのか」

 「そうだったね。実はね冬野先生ボランティア部の顧問なんだよ」

 「え!そうなんだ。でも、冬野先生教室で見てる限りでは顧問とかできなさそうに見えるんだけど」

 花塚は普通に驚いていた。その意見はごもっともです。

 「そうね。顧問という肩書きだけどまともにやっているとは言えないわね」

 「ええ!でもまだ顧問なんでしょ。なんで変えられないの?」

 そして、ここでも思って当然の疑問を花塚は訪ねてきた。

 そういえばだが昨日会ったばかりなのになにげに花塚と喋ってるな山上。あ、俺も人のこと言えなかった。俺のことを覚えてくれてたからほぼ初対面とか頭から抜けてた。そう思うと花塚は話したことない相手なのにすごく優しく対応してたな。なんかすごい。そんな感じで俺は心のなかで花塚を称賛した。

 「他の先生はみんなこの部活の特殊性によって破綻してしまったらしいわ。じゃなきゃあ冬野先生は辞めさせられてるわね」

 「あらためていろいろ大変な部活だと思うな」

 なんか哀れむというかそんな感じを出しながら言っていたので俺は少し否定することにした。何故かって?それはこのクラブじゃなきゃ俺は100%終わっていたからだ!そういうことで一応その事を伝えとくことにした。

 「まぁ、確かに顧問は終わってるけど意外と楽しめてるよ。それに周りが特殊だからこそ俺はやっていけてるところがあるしな」

 「そうね。楽しいっていうのは同意するわ。あと山吹君の言っている特殊に私は含まれているのかしら?」

 「当然含まれてるに決まってるだろ!」

 「ごめんけど結香ちゃん。これは否定できないよ」

 どうやら山上も楽しいとは思っているようだ。それにしても無自覚もいいところだよな。

 「秋也たちが部活を楽しんでるのはわかった。ところでさ、秋也この前遊ぼうって言ってたけどさゴールデンウィークとかどう?」

 ここから口論みたいになるのを感じたのか(たぶんそうなる)花塚が話題を変えてくれた。

 「確かにゴールデンウィークだったら大丈夫そうだな」

 「じゃあ、それでいい?」

 「ああ。大丈夫だ」

 「で、その事なんだけどさ出来ればここにいる4人で遊びたいんだけど・・・大丈夫?」

 「え!別に大丈夫だけどなんで?」

 「大勢の方が楽しいかなって思って」

 「そういうこと。なら私は大丈夫。結香ちゃんは?」

 「私?」

これも花塚の気配りだろうか?どっちにしろ山上の返答しだいだが。

 「私は問題ないわ。ゴールデンウィークに出掛ける予定ないもの」

そんなわけでこの4人で遊ぶことになった。

 「じゃあ、みんなどこで遊びたい?」

 「はい!私遊園地にいきたい!」

 「秋也は?」

 「俺は千鶴がいるなら基本どこでも大丈夫だ」

 そう俺は千鶴さえいればおいてかれることは千鶴が目の前のことで一杯になってなければ大丈夫なのだ。

 「じゃあ、山上さんは?」

 「私はあんな騒がしいところには行きたくないわね」

 「え~。結香ちゃん行こうよ♪遊園地とか行ったことないでしょ」

 「行ったことはあるわよ」

 「それ何歳の時だ?」

 「確か小学校の時かしら」

 やはり、俺の予想は当たっていた。ボッチなのに遊園地とか好きなヤツか家族といく以外はあり得ない。しかも、山上は騒がしいのが嫌なら最近行ってないのは火を見るよりも明らかだ。

 「でも、小学生の時だし家族とでしょ。友達とは行ったことないならいい思い出になると思うよ」

 「ええ。騒がしかったということで思い出には残ると思うわ」

 千鶴はそこら辺に気づいたようでうまく誘おうと頑張ってるが苦戦しているようだ。残念ながら俺は遊園地に友達と行ったことないので助けることができない。

 「山上さんちょうどいい機会だから遊園地に行きましょう」

 とそこで意外にも花塚からの助け船があった。

 「確証はできないけどきっと楽しめるはず」

 加勢したところを見ると花塚も遊園地に行きたいのだろうか? 

 俺は置いてかれたらどうしようと思うところも少なからずあるが少し楽しみだ。

 「まぁ、神崎さんたちがそこまでいうなら仕方がないわね。わかったわ。遊園地に行きましょうか」

 山上はどうやら折れたようでこれで遊園地に行くことが決定した。いままでボッチでこういうことに誘われる機会が無さそうなので断れなかったのだろう。

 「じゃあ、日にちは順を追ってということで大丈夫?」

 「ああ」

 「大丈夫だよ♪」

 「わかったわ」

 こんなかんじで遊ぶ場所が決まった。

 このあと、みんなと別れて家に着いた。そのまま特に何事もなく夜が更けていた。

 水曜日、木曜日もしっかりと本の入れ換えを行った。そして、いよいよ金曜日になった。今日で図書委員会での活動は終了だ。

 なんかとても充実していた気がする。あ、それは最初の1週間はほとんど読書だったからだ。俺はなんか納得した。今はお昼休みあんパンを食べながらそんなことを考えていた。今日は一人なのでそんなことをするくらいしかない。

 「秋也、お昼一緒に食べてもいい?」

 今日はボーッとして過ごすんだろうなと思っていたら花塚が声をかけてきた。俺よりも食べ始めるのが遅いのは購買の商品を持っているところから出遅れたんだろう。

 「ああ、大丈夫だ」

 そんな感じで花塚とお昼を食べることになった。

 「いつも花塚はお昼購買で買ってるのか」

 「基本そうだね。秋也もそうなの?」

 「ああ。俺はいつも購買だ」

 「そういえば秋也よく神崎さんと一緒にお昼食べてるね」

 「基本こういうのは一人だから千鶴が気を使ってるんだと思う。そういえば花塚はいつも誰とお昼食べてるんだ?」

 「部活の人とだったりいろいろ。今日は秋也が一人で食べてるの見たから一緒に食べようかなって感じ」

 花塚とあって一週間。話す相手もいず、基本一人の俺は花塚の周辺を少し意識してみていた。そうすると花塚は男女問わず人気があるようでそれなりに周りに人がいた。やっぱり花塚って結構人気なんだな。

 「そういえば花塚。ここ四日間委員会の方に来てるけど部活の方は大丈夫なのか?」

 ここでふと今のところ今週毎日図書委員会の仕事をしにきていることを思いだし、部活が大丈夫なのか気になった。

 「卓球部今週末大きな大会でレギュラーの人たちを中心にやるから1年生のほとんどは来なくても大丈夫って言われたんだ」

 「なんか部活を推奨してるだけあってすごいな」

 「そうだね。まぁ、そう言うわけで今週部活の方は大丈夫なんだ」

 こんな感じでわいわい話ながら俺にとっては稀少な体験になったお昼休みが終わった。別れ際に花塚が「また一緒にお昼食べようね」と言ってくれたのでちょくちょくこういう機会があるだろう。

 午後の授業と帰りのSHR が終わり今週掃除当番の俺は教室を掃除していた。教室の掃除は今日で終わりだが来週は階段の掃除だ。千鶴は教室に姿がないので廊下で待っているんだろう。山上は今週は掃除当番じゃないからもう先に行ったな。

 掃除を終えた俺は予想通り廊下で待っていた千鶴と一緒に図書室に向かった。

 図書室に入ると部長以外の人は来ていた。そして、そのすぐあとに多少息を切らせながら部長が図書室に入ってきた。時間は4時15分になる2分前だ。

 火曜日に鳴瀬さんに言われてから部長は集合時間までには来るようになっていた。掃除当番かどうかは分からないがどっちにしろ鳴瀬さんの影響は大きかったようだ。これが鳴瀬さんだからこそなのか年上だからなのか顧問が顧問だけに分からないが。

 「よし、みんな集まったね。残りあと少しだから最終日の今日も頑張ろう!ということでみんな早速作業をはじめて」

 こうして作業がはじまった。

 鳴瀬さんは頑張るぞ~!と言いながらとても張り切っていた。こういうのはやっぱり退屈なのだろうか?

 そんなことを考えながらも俺は本の入れ換えを始めていた。あと少しということもあってかみんなもくもくと作業に没頭していた。若干集中力が切れている人が一名いるけど。それでもさすがに五日目ということもあってみんなの作業スピードは千鶴もかろうじて最初より速くなっていた。

 そのお陰かどうかは分からないけど部活終了10分前に作業が終わった。部長たちもそれぐらいの時間で終わったようだ。

 相変わらず速いなと思いながら鳴瀬さんから集合の声がかかったのでそちらの方へ歩いていく。千鶴の方は集中しすぎたのかボーッとしているように見える。

 「よし、みんなの頑張りのお陰で10分前に終われた。これで本の入れ換えは終わりだよ。みんな一週間お疲れさま。今日はこれで解散にする。弥恵ちゃん含めボランティア部のみんな手伝ってくれてありがとう!たぶん来年もあるからそのときは一年生またよろしく」

 こうして図書委員会での活動が終了した。でも、花塚とは同じクラスだからこれからもちょくちょく話す機会があるだろう。ゴールデンウィークには一緒に遊園地に行くし。

 部活が終わった俺たちはいつも通り校門の前で待ち合わせるべく一旦別れた。ここ数日はいつもの三人に花塚がプラスされていたが卓球部の関係でこれからは一緒に帰れないかも知れない。あれ?前にもこんなことを思って結局一緒のままだったことがあった気がする。

 靴を履きかえ校門の前で花塚と待っていると千鶴たちが来た。

 こうして俺たちは帰り道を歩き始めた。

 「ボランティア部はじめての活動終わったね♪」

 「そうね。やっと部活感が出てきたわね」

 「確かに最初の1週間はなにもなかったからな」

 俺は今しみじみと部活らしくなったなと感じていた。

 「なかなか大変だったね」

 「そうね。要領がつかめるまでわ大変だったわ」

 「そのあとはそこまで大変じゃなかったのか?」

 「そう思ってるわ」

 俺は最後までそこそこ大変だった気がする。山上は千鶴と反対でこういうのが得意なんだろうか?

 「私は最後まで要領が掴めなかった」

 一方の千鶴は最後まで要領が掴めなかったらしくなかなか大変だったようだ。

 「人によって得意不得意があるから出来なくても仕方ないわ」

 「なんかそれこういうのが出来ないって暗に言われた感じがする」

 「でも、実際そうだから仕方がないわ」

 山上の連続攻撃?によって千鶴はさっきよりもより落ち込んでいた。効果は抜群だったようだ。

 「神崎さん大丈夫だよ。不得意なことなんて誰にでもあるんだし」

 とここで意外にも花塚からフォローがはいった。

 「千鶴。確かにああいうのは不得意だと思う。でも、俺や山上と違ってちゃんとコミュニティーを形成できてるんだから充分だろ」

 花塚がフォローしたので俺もフォローしようと思ったがどう慰めたらいいのかこれまでの人生上分からなかったので山上を巻き込むかたちで自虐に走ってしまった。

 「秋也。それ自虐になってる」

 花塚にそういわれたが承知の上でやったことだから仕方がない。

 「まぁ、そういうところで見たら私はまだ全然いい方だね」

 「なんか神崎さん納得しちゃった。これで大丈夫?」

 千鶴はさっきの俺の発言と持ち前の切り替えの速さでいつもの調子に戻っていた。

 花塚の方は自虐した俺のことを気にしているのだろう。

 「あ、ああ、問題ない」

 「少し待ちなさい。私には問題があるのだけれど」

 花塚は一応確認して、良かったと感じているようだが(花塚の優しさが心に染みる)山上の方は不満があるようだ。まぁ、何となく予想がつくけど。

 「特に問題はないと思うけど」

 「なんであなたの自虐に私が含まれているのかしら?私はそこまで堕ちてはいないと思うのだけれど」

 そして、予想通りの反応が返ってきた。

 「結香ちゃん。ごめんけどこの場合はしゅーくんの方が正しいよ」

 そして、これにはさっきまで落ち込んでいたが完全に復活した千鶴が対応した。

 「まぁ、捉え方は人それぞれだもの仕方がないわね」

 そして、諦めたのか山上は自分で勝手に納得していた。本当に自分の発言が真実であると思っているようだ。自分のことについてはよくわかっていないのだろうか?たぶんそうなんだろう。

 その様子を見て俺と千鶴はため息を着いた。まだまだ先が長そうだな。という理由からである(俺も人のことを言える立場にいないけど)。たぶん千鶴も同じような理由だろう。

 「これが秋也が前言ってた思ったことをすぐいうやつ?」

 とそこに花塚が小さい声でそんな質問をして来た。声が小さいのは聴かれるといろいろ面倒くさくなるからだろう。山上ならそうなる。

 俺は合っていると返すために軽く頷いた。これで通じたか分かんなかったが花塚の方は山上に哀れみに近い視線を送っていたので通じたんだろう。

 たぶん山上は花塚の哀れみに近い視線に気付いていないだろう。

 「元々千鶴を落ち込ませたのは山上なのにな」

 ここで俺は山上が根本的な原因であることをいう。

 「それは仕方ないじゃない。本当の事なんだもの」

 「それでいいんですか?」

 相変わらずの言い分に花塚が疑問を呈する。それが普通です。

 「でも、本当のことに変わりはないもの」

 山上にはこういうことは言わないという選択肢は無いのだろうか?KY で空気を読めないから無理なのだろう。

 俺も千鶴も花塚もこの事は保留にすることにした。この事を今追及してもなんの成果もないからだ。

 とここで冬野先生が月曜日以来一回も部活に顔を出さなかったことを思い出すが水曜らへんの帰り道であの先生は顔を出さないのは仕方ないし、出しても意味ないから問題ない。ということで納得していたので(顧問なのに部活に必要ないと納得していいのかとも感じたが)話題にあげるのはやめることにした。

 このあと花塚や山上と別れたので千鶴と二人になった。

 「今週一週間速かったね」

 「そうだな。先週のことと相俟ってよりって感じだな」

 最初の一週間が読書じゃなければもう少しゆっくりに感じていたと俺は思った。

 「作業自体は少し退屈だったけど私的には楽しかったな♪」

 「まぁ、俺も最初の頃考えてたのと比べると楽しいな」

 やっぱり退屈していたようだけどどうやら千鶴は楽しめたようだ。

 俺は部活動じたいちゃんとしたことがないので比べることは出来ないけど最初思ってたよりは楽しいと感じてる。

 「それは良かった。俺からだと退屈そうにしか見えなかったからさ」

 「うん」

 授業とかでは完全に退屈にしている千鶴がこういう活動でも楽しいと思えるのはきっとみんなとやったからだろう。

 「来週は出来ればあんまり退屈しないのがいいな」

 それでもやっぱりこういうのはあまりやりたくないようだ。

 「でも、委員会の手伝いならこういうのはちょくちょくあるんじゃないか」

 「そうだね。まぁ、依頼が来たらの話だけど」

 ここで俺は思った依頼がなければその一週間読書になるのではと。

 「来週もなにかしらあるといいな」

 「そうだね。なにもないと私ほんとに暇だしまだ今週の方がまし」

 今思ったが千鶴はあまり本を読まない。なら先週は何をしていたのだろうか?読書に没頭していた俺は覚えていない。

 「そういえば千鶴。先週どうやって過ごしたんだ?」

 「結香ちゃんから本を借りて読んでた。意味がよくわからなくて全然進まなかったけど」

 その事を聞いた俺はいかにも千鶴らしいと少し笑ってしまった。

 「あ!今しゅーくん私のことバカにしたでしょ!」

 「してないよ」

 「絶対した。私そういうのわかるよ!でも、本当に難しい本だったんだからね!」

 どうやら否定しても無駄なようだ。これはおさまるまで待った方がいいな。

 「わかったから一回落ち着こう」

 そのあと何とかおさまったがまだ誤解は解けていない。誤解されたままなのは嫌だけど別れ道に来てしまったし千鶴ならたぶん覚えていないだろうということでそのまま千鶴と別れた。 

 家に帰りリビングに入ると丁度美春が夕食を作り始めようとフリルのついたエプロンをつけているところだった。

 「ただいま」

 「おかえり。お兄ちゃん」

 「今日はお袋帰りが遅いのか?」

 「うん。そうみたい。できたら呼びにいくから部屋で待ってて」

 「わかった」

 美春に呼びにいくと言われたので俺はリビングを出て二階へ上がっていった。

 そのあと部屋で勉強をしていると一時間程して美春が呼びに来てくれたのでリビングに降りる。

 「ありがとな。夕食」

 「気にしなくていいよ。さぁ、食べよ」

 俺が作ったら何とも言えない味になるからだろうが作ってくれたことに変わりはないからお礼をいうことにした。

 「「いただきます」」

 こうして兄妹二人だけの夕食となった。

 「ところでお兄ちゃん。部活なにやってるの?」

 ここで美春が部活について聞いてきた。千鶴のこともあるからだろうし今週のことについて話す時間も今ぐらいしかないからだろう。

 「今週は図書委員会のお手伝いで本の入れ換えをやったよ。今日で終わりだけどな」 

 なので正直に活動内容を話す。別段話したくないこともないし。

 「へぇー。いかにも千鶴ちゃんが退屈しそうな内容だね」

 「ああ、途中で何回か集中力切れてたし、千鶴も退屈って言ってた」

 昔から一緒にいるからだろう美春も千鶴が退屈しそうだなとわかったらしい。実際俺も何となく予想ついてたし。

 「やっぱりね。そういうところは昔から変わんないよね」

 「そうだな」

 そして、花塚のことを美春にはまだ話していなかったので話すことにした。これで千鶴以外にも話せる人が出来たわけだし(山上は別だ)。

 「そういえばな。今週の活動を通して俺のことを覚えている同じクラスの男の子にあったんだ」

 ここで男子と言わなかったのは何となく似合わない気がするからだ。

 「ええ!そうなの!何て名前の子?」

 美春はとても驚いたようだ。まぁ、俺も最初はそれぐらい驚いていたから当然かもしれないけど。

 「花塚。友達といっても言いなかだと思う。幼なじみしかいなかったからわかんないけど」

 「でも、仲良くはなったんでしょ?」

 「まぁ、お昼に誘ってもらえるぐらいには」

 これがどの程度のものなのか俺にはわかんないけど。

 「それならなかいいね。良かったね♪男友達ができて」

 「ああ」

 どうやらあれは仲が良いことになるらしい。

 「同じクラスならこれで千鶴ちゃんの負担も減るだろうし、お兄ちゃんも一人の時間が減るだろうし、一石二鳥だね」

 「まあな」

 美春は本当に嬉しそうだ。この光景を見ていると俺が負担になっていることを改めて突き付けられたような感じがして少し落ち込むけどこの空気を壊さないために表面に出さないよう俺は頑張った。 

 「ところでなんで花塚さんはお兄ちゃんのことを覚えていたの?」

 「なんでかは本人にも分からないらしい。他の人を覚えているのと同じ感じだったと思う」

 美春も気になるようだがこれは俺にも分からない。現に俺も気になるし。

 「そっか。なら仕方ないね。」

 「どちらにしろ人生初の男友達だからたいせつにしなきゃな」

 これはとても貴重だ。なのでこれからも交流を絶やさないようにしたい。

 「まぁ、これで千鶴ちゃんの負担

が減るのにかわりないからね。ちゃんと大事にしなきゃダメだよ。こういう機会はこの先ないかもしれないんだから」

 「わかった」

 このあとは自分の部屋で少し勉強してから寝た。

 

 

 

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