第三章 三節 湯船に浮かぶ

「ひゃああ!き、姫咲さん、何するんですか!?」

「何って?おっぱいを揉んでるんだけど」

「そういうことではなく、どうしていきなり、あっ、うぅ……」

 魔法省に戻ってからバイタルチェックやあれやこれやを済ませた後、あたしたちは大浴場に来ていた。途中で姫咲さんといずるさんと入り口の所で会ったので一緒に入ることになった。そしてリーベが姫咲さんにセクハラされた……。

「今までリーベちゃんとお風呂入ることなかったから。一緒に訓練した後に入れればって思ってたんだけど、予定がなかなか合わなくて」

「え、いや、でもっ、あぁ、……どう、して……ひゃあっ……」

「ずっと揉みたかったから」

「へ、変態です!」

 リーベの胸を後ろから抱き付くようにして揉む姫咲さん。そしてありていに言えばえっちな声をあげるリーベ……。二人とも湯船に浸からないで立ったままのせいで色々とあらわになっていて見ていいのかダメなのか……。てか、二人とも胸大きいな……。

 リーベの胸を遠慮なく揉む姫咲さんの指の間からリーベの胸の肉がはみ出て、……凄くアレだ。胸を揉まれまくっていることで力が入らないのか、リーベの中途半端に漏れる声や吐息や開いた口や震えた脚なんかも凄くアレだ。さらにリーベと姫咲さんの体は水を通す隙間もないくらい密着して締まっていて、お互いの体に沈んでいってしまいそうなほどの柔らかさと、決して形を崩さない肌の張りがあるのが一番アレだ。あたしは何を考えているんだ……。

 そしてそんな二人をいずるさんは呆れながら、ひかりはのぼせたんじゃないかと思うほど顔を真っ赤にして見ていた。

「あ、リーベちゃん、こんなところにほくろある。可愛い」

「ひゃあぁあっ!?」

 姫咲さんがリーベの……あんなところにあるほくろを軽く触ると、リーベはすっごいえっちな感じで声をあげた。

「うーん、それにしてもリーベちゃんのおっぱい大きい。Dはあると見た。私のはどれくらいあると思う?」

「そ、そんなの分からなひゃうぅ……」

 う……、リーベがいちいち色っぽい……。

「分からないのー?今リーベちゃんの背中にむにむにーって当ててる。あ、でも先っぽはくにくにかも……」

「はいはい、そこまで」

「ぐえっ」

 姫咲さんがえらいこと喋り出したタイミングで呆れていたいずるさんが首元をがっちり掴んでリーベから引き離した。リーベは解放されるとすぐに湯船に体を浸けてその場から逃げる。

 代わりに姫咲さんの首元を掴んだ帆さんも立ったままになって、特に前を隠す素振りがないからまた色々とあれやこれやで。てか、姫咲さんもいずるさんも体綺麗だな。リーベの体も凄い綺麗だったし。

 少し羨ましくてドキドキする。ん?なんだドキドキって?いや、別にえっちなこととか考えてないし!リーベたちは女の子で、あたしも女なんだからそんないやらしいあれやこれやじゃないし!そしてさっきからあれやこれやが多いなあたし!

 そしてひかりは頭のてっぺんまで赤くして目はぐるぐるで、え、のぼせてない!?

「ごめんね、ヴァールハイトさん。姫咲こういう奴なのよ」

 いずるさんは姫咲さんがリーベを追っかける様子がないのを確認してからリーベに謝った。

「いえ、いずるさんが謝ることではないです。ただ……、こういう奴というのは?」

 リーベは恐る恐ると言った感じでいずるさんに尋ねた。

「ありていに言えば、女の子が好きってことかしらね……」

「えっへん」

「……」

 いずるさんが衝撃の事実っぽいことを言って姫咲さんがキャラと喋り方に合っていないことを言ってリーベは苦笑いを浮かべるだけで何も言わなかった。

「まあ、びっくりするわよね……」

「……いえ、それ自体は特に驚きはしないというか、私も……いえ!なんでもありません!それよりも、つまりそれは私が姫咲さんにそう言う目で見られているっということでしょうか?」

 ん?なんか今言いかけてたけど……、よく聞こえなかったな。

「うーん、半分半分かなー?確かに男の子に興味なくて女の子が好きだけど、付き合いたいっていう女の子は今のところいないかな」

「で、ではなぜあのようなことを……」

「えっちなことがしたかった」

「変態です!」

「本当にごめんね、後できつく言っておくから」

「でも、えっちなことだけが目的じゃない」

「え、……どういうことですか?」

 リーベはあまり信用ならないといった表情で聞き返した。

「これは私なりの仲良くなる方法。いつも女の子とはおっぱいを揉んで仲良くなってる」

 なんて迷惑な……。

「……そうなんですか。だから私の呼び方がファーストネームに変わっていたのですね……」

「うん、そう。おっぱいを揉んで仲良くなったら名前で呼ぶようにしてる」

「私の時もそうだったわね……。初めて会ったその日に更衣室で揉まれたわ」

「あの時のいずるは可愛かった。さっきのリーベちゃんみたいに喘いで、耳を舐めたら、そこはやあぁって言うもんだから興奮した」

「ちょっ、その話はやめなさいっていつも言っているでしょ」

「ちなみにこの前麗さんのおっぱいを揉んだらパーで叩かれた」

「でしょうね……」

「その後麗ちゃんって呼んだらさらにグーで殴られた」

「本当に何やってるんですか……」

 本当に全くだ。

「そもそもなぜ、む、胸を揉むのが姫咲さんなりの仲良くなる方法なのですか?」

「おっぱいを揉めば、揉んだ方も揉まれた方も気持ち良い。だからそれだけで仲良しこよし」

「……あぁ、やっぱり変態です……」

「うん……、本当にごめんね……」

 二人は何度目かになるこのやり取りをする。

「ところで久遠さんはどうしてそんなに離れたとこれでお湯にも浸からないでいるの?」

 あ、やばい。お風呂に入ってすぐの姫咲さんの奇行に引いて、その後茹でダコになったひかりを回収してお湯から上がって、ひかりを寝かせて熱を冷ましながら気が付かれないように遠目で見ていたのがバレた。ちなみにあたしは久遠さんと呼ばれている……。

「私久遠さんとも仲良くなりたい」

「も、もう十分仲良くなっていると思います……」

「そんなことない。まだ私は久遠さんのこと全然知らない。おっぱいの大きさとかどこが感じるのかとかどんな風に喘ぐのかとか」

 姫咲さんはそう言いながらゆっくり近づいてくる。

「そんなの知らなくていいです!いずるさん助けて」

「ごめん、どれだけ止めても一回揉むまではしつこく追いかけてくるから、そこは諦めて」

「そ、そんな……。リーベ助けて」

「ミーアさんは私が襲われている間に逃げたんですよね?私を助けずに」

 すっごい明るい笑顔で言われた。

「え、いや、それは……」

「ミーアさん、これから一緒に戦っていく方なのですから仲良くならなくてはめっ、ですよ」

 すっごい茶目っ気のある笑顔で言われた。そしていつの間にか姫咲さんが目の前にいる。

 やば、逃げなきゃ。

 あたしは後ろを向いて逃げようとして

「捕まえた」

捕まった……。後ろからハグされた。

「良く頑張ったね」

 さらに頭を撫でられた。

「!?」

 てっきりそのまま胸を揉まれるかと思ったら……。

「……色々と迷惑を掛けてすみませんでした」

「大丈夫だよ。ミーアちゃんの辛さは皆分かってくれるし、ミーアちゃんが頑張ってたことも皆知ってる。皆ミーアちゃんのこと大好きだから、だから私たちとこれからもよろしくね」

「はい、よろしくお願いします。……ありがとうございます」

 熱い。あたしの体が熱くなってるのか、それとも背中に押し付けられている姫咲さんの体が熱いのか。どちらにしても悪い気分ではなかった。

「ほええええぇぇぇ!?み、ミーアちゃんと姫咲さん何してるの!?」

「え、ひか、り……!?」

 全身真っ赤にして茹だってたひかりがいつの間にか起き上がってこっちを見ていた。

 胸にぐにゅぐにゅって。

「でゃわあああ!!」

 いきなり胸揉まれた!なんか良い感じの話をしていたはずの姫咲さんがいきなりあたしの胸を揉んできて、あたしは思わず変な叫び声をあげた。なんだよでゃわあああ!!って……。

「今ミーアちゃんと仲良くなってるとこ。ひかりちゃんにも前にしたあれだよ」

「あ、あれですか……。さっきリーベちゃんにもやってたあれ……」

 ひかりがまたどんどん赤くなっていく。あぁ、せっかく熱を冷ましたのに……。てか、この人ひかりにもやってたのか。

「ひゃあっ、あ、……」

 あー、ひかりの心配の前にまず自分の心配しないと……。

「あっ、く、……もう、やめっ、……あっ……」

「もうちょっと。ていうかあたしも興奮してきた」

 もってなんだ、もって!

「どうかな?せっかくだからあたしのあそことミーアちゃんのあそこを」

「はい、そこまで」

「ぐびっ」

 姫咲さんが本当にどえらいことを言いかけた時、帆さんの声が聞こえてあたしの体に絡みついていた手が離れた。あたしはすぐにその場から逃げようとしたけどなんか手足がもつれて息もはあはあしてちょっとしか移動できずぐったりとなる。

「ふう、ギリギリセーフだったかな」

「いや、全然セーフじゃないと思うんですけど……」

「本当はもう少し早くに助けるつもりだったんだけどヴァールハイトさんに止められちゃってさ……」

 帆さんは苦笑いを浮かべながらリーベの方へ視線を向けた。

「はて、なんのことでしょう?おや、こんな所に蝶々が。どこから迷い込んだのでしょうか?」

 リーベの方を見るとよく分からない下手な誤魔化し方をされた。

「……」

 色々ツッコミたかったけど姫咲さんにあれやこれやされて疲れたのでとりあえずやめておいた。これが今日一番の疲れでないことを祈るばかりだ。

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