第四章 一節 ノイズ
十一月十九日、化け物の第一回討伐作戦は予定通り行われることとなった。
「這え!」
あたしは鎌を一振りして魔力の針を何本も地面を這うように伸ばして化け物を貫く。
「はっ!」
あたしの左右を二本のダガーナイフが飛んでいって、化け物の頭に突き刺さる。
「やはり数が多いですね」
後ろにいたリーベがあたしに並んでからそう言った。
「うん、そうだね」
あたしは今、リーベとリーベの配属されたβ部隊、あたしの配属されたγ部隊、さらに第一から第十五まである部隊の内の第三から第十五までの部隊と化け物の領域に攻め入っている。
今回の作戦はあたしたちが化け物の領域を真正面から襲うというもの。あたしとリーベを主力に一点から扇情型に広がっていき、化け物の領域を侵攻する。そうして化け物をあたしたちに引き付けている間に、別行動をしているひかりとひかりの配属されているα部隊、第一第二部隊が別方向から攻撃を仕掛ける予定だ。
化け物の領域の島は凄く歪な形をしていて、攻めやすい。いくつか突出した部分があるから今回の作戦はその一つから侵攻してその部分を壊滅、占領してしまおうという作戦だ。
「それにしても、訓練で見た通り本当に岩ばかりなのですね」
「ホントだよ。初めて化け物の領域なんて来たけどなんか嫌な感じ」
あたしもリーベも訓練で幻覚魔法によって作られた化け物の領域しか見たことがなかった。訓練で見たのは森か荒野か沼地か砂漠か、人間と領域が同じだった時の人間の廃墟くらいだ。
あたしたちが今いるのは荒野。岩と砂ばっかりで殺風景だ。昼間なのに黒い煙が立ち込めているみたいに空が曇っていて薄暗い。
「■■■■■■■■■■■■■■■■■■■!!!!!!!」
化け物の咆哮!?
不意打ちのように襲うそれにあたしやリーベ、一緒に行動しているβ部隊の人たちは耳を塞ぐだけで精一杯だった。
「あそこです!」
やがて方向がやみ、リーベが指差す方向を見ると少し離れた大きな岩山の上に四足歩行の大型の化け物がいた。
「!?」
大型は勢い良く跳躍してあたしたちの前に着地、立ち塞がる。
「鵺か……」
目の前の化け物は鵺。体長十五メートルぐらいの大きさ。猿に似た頭に狼の胴体、四肢は虎で尻尾には蛇の頭が付いているという凄くめちゃくちゃな見た目をした化け物。体の節々からぬちゃりとした黒い液体を地面に垂らし強い臭気を放っていた。
さらにいつの間にか、新たに人型の群れがあたしたちを囲んでいた。
「大型ともなれば倒すのは困難。しかし、我々の力であれば倒すのはそう難しいことではないだろう」
そう言ったのは三十代後半くらいの男性、β部隊隊長の三雲さんだ。
「そうですね。鵺とは訓練で戦ったことがありますし、この戦力を考えれば周囲の化け物含め、問題なく倒せるでしょう」
あたしを含めて人数は九人。あたしたちならこの化け物たちを相手にできない人数じゃないだろう。
「ちゃっちゃと片付けて進みましょう」
「頼もしいな」
あたしの言葉に三雲さんはふっと笑いながらそう返した。
「では、私はいつも通り……」
リーベは肩に掛けていたリウスの中に手を入れた。その瞬間、鵺が動いた。真っ直ぐあたしたちに向かって突進。けれど、その突進があたしたちに届く前にリーベが鎖を使って鵺を拘束した。四方に現れた魔法陣から何十本もの鎖がうねり出て鵺を縛り付ける。鵺は抵抗して暴れるも拘束の強さにほとんど体を動かすことができず、鎖の音をガチガチとたてるだけだった。
「今のうちです」
「任せておけ。一斉攻撃だ!」
三雲さんは部隊にそう指示を出すと掛け声をあげてβ部隊の人たちは鵺に攻撃を仕掛ける。
あたしも魔力の針を五本出して鵺の顔面向けて連続で何回も突いて攻撃をする。人型が襲ってくるがそれは黒く長い刃を出して、鞭みたいに振るって切り裂く。
リーベの背後に二体の人型。あたしはすかさず刃で切り付ける。
「ありがとうございます」
「いいって。こうやってリーベが拘束してくれるとこっちも助かるからさ。あたしの黒い魔力も拘束力がもっとあればいいんだけど、流石にリーベの鎖ほどじゃないからさ」
「私の鎖は拘束に特化していますからね。ミーアさんの魔力は拘束だけでなく応用力もありますから私としてはそちらの方が羨ましいですね。鎖を使用する時は大抵片手が塞がって動きも制限されてしまいますし」
けれど、そう言うリーベの表情はちっとも困ってはいなかった。リーベの魔法のマイナス要素をあたしが補っているからだ。
リーベは鵺を拘束するために右手に鎖を持っている。そのためリーベの移動に大きな制限がかかってしまう。体の向きを変えることすら制限があるため人型の攻撃に対して比較的無防備になっているのだ。そのため今あたしはリーベのすぐそばに付き、鵺を攻撃しながらも黒い針を振るってリーベに襲い掛かる人型を退けている。だからリーベが鎖を使う時のデメリットはほぼない。
だけどリーベの表情に困った様子がないのはそれだけじゃないと思う。あたしとリーベと、それからひかりは三人で約束したんだ。化け物を倒して三人で笑い合おうと。あたしたち三人の目指すものが一緒。だからきっと今リーベはあたしのことを信頼して、頼って、あたしに身を委ねてくれているんだと思う。
だから自分の魔法の欠点に困った顔どころか、凄く嬉しそうな表情をしている。
あたしはひかりとリーベのことをとても信頼している。だから二人も同じように思ってほしいんだ。
あたしは再び周囲に寄って来た人型を刃で切り裂き、さらにそれを湾曲させて大きな輪を作る。
「喰らえ!!」
そして戦輪のように回転させながら鵺の顔面目掛けて飛ばした。戦輪は鵺の顔を切り裂こうと高速回転して何度も切り付ける。甲高い音と鵺の悲鳴が響く。鵺の猿みたいな頭から黒い飛沫が吹き出た。
あたしはさらに戦輪を三つ作り、鵺に飛ばして切り付ける。β部隊の人たちも周りから襲い掛かってくる人型を捌きながら鵺への攻撃を休めない。
「はあああああ!」
三雲さんが武器である魔法銃で鵺の体にできたいくつかの傷口を狙って連射した。その直後、鵺の体のあちこちがボコリと盛り上がっていくつもの大きな棘が体から黒い飛沫をあげて貫くように生えてきた。
これは三雲さんの魔法。撃った銃弾の弾道、大きさや形状に質量、硬度を自由に変化させることができる魔法で鵺を内側から貫いたのだ。
今の攻撃でかなりのダメージを受けたのか、鵺は抵抗をやめ、ぐったりと自身を拘束する鎖に体を預けている。鎖の拘束のおかげでかろうじて立っているといった様子だ。
「もう少しですね。これでとどめです!」
リーベはそう叫ぶと手に持っていた鎖を強く引いた。すると、鵺を拘束している大量の鎖がゆっくりと魔法陣の中へと引っぱられていく。鎖に拘束された鵺は引っぱられる鎖にどんどん締め上げられ千切れていく。ついにバラバラになった鵺は、臭気を発していた黒い液体の上にどちゃりと音をたてて細切れになった体を落とした。
「よし、倒せましたね」
鵺の拘束を解いたリーベは鎖をしまいながらそう言った。
周りにいた人型も全て倒されていてあたしたちを襲う化け物はいなくなっていた。
「なんの危なげもなかったけどな」
「やはり流石と言っていいだろうな。君たちの実力は」
「ありがとうございます。ですが、三雲さんもかなりお強いですね」
「いや、俺の攻撃も君たちや他の隊員の力があってこそだ」
三雲さんの言葉は謙遜なんかではないと思う。いくらあたしたちや戦闘特化の部隊でも、一人で大型を相手にするのはかなりのリスクを負うことになる。あたしたちが力を合わせて戦ったからこそ三雲さんの攻撃も最大の効果を発揮できたのだ。そして鵺を倒すことができた。
「それにしても、かなり奥に進んだこともあって、数が多くなってきましたね」
「だが、今回の作戦で占領するこの土地にいると予測されている化け物の数や規模から言って、まだ十分な引き付けはできていないだろう。一度他の隊と連絡を取ってみることにしよう」
三雲さんはそう言って通信機で連絡を取り始めた。
「それにしても、訓練の時にも思ったけど、化け物ってあたしたち人間より数が多いけど、そこら辺にうじゃうじゃいるわけじゃないんだな」
「そうですね。私たちの領域よりも遥かに大きな領域ですし、化け物も、特に人型は群れを作るとされていますから普段は一箇所に固まりやすいんですよ。というか、そうでなければ今回の作戦は元から破綻してしまいますよ。ミーアさん、ちゃんと作戦内容把握していますか!?」
「してるしてる!ちゃんと頭に入ってるから大丈夫だよ」
化け物は群れを作る。一応あたしの時代でも習ったことだ。資料によると化け物はこの領域のいくつかの場所で群れを作っているらしい。あたしたちが今攻め込んでいる場所にもある。今回はあたしたちが化け物を引き付け、群れの中心が手薄になって油断しているところをひかりたちが攻め込むというもの。
「ただ、ずっと化け物っておぞましいものだって教えられてきたからもっとこう、どこからでも湧いたり降ってきたりするイメージがあってさ」
「確かに、混沌としたイメージはありますね。実際のところは群れを作って統率の取れた化け物もいるのですが」
群れというのはあたしたちで言う社会みたいなもんか。まるで人間みたいだな、なんて思ってしまう。そんなわけがないのに。
化け物が人間……?あれ、何か引っかかる……。あたし、何か忘れてないか……?何を忘れてる?確か、新種の化け物を倒した後……、ひかりとリーベと一緒に魔法省に戻る時に……。
「ねえ、リーベ、ちょっと聞きたいんだけど……」
あたしが振り返って声を掛けると、リーベが刺されていた。
え……?
人型に刺されていた。ずぶりずぶり、と。
「リーベ!!」
あたしはすぐにリーベを刺した人型を切り払い、倒れ込むリーベを受け止める。
「おい、リーベ!大丈夫か!?」
「ヴァールハイト!?どうしたんだ!?なっ、化け物が……?全て倒したはずなのにいつの間に……!?」
三雲さんの言葉に周りを見回すと、いつの間にか無数の化け物に囲まれていた。
またあの時と同じだ……。いつの間にか現れていつの間にか襲われていて……。
リーベは呼吸をするのがやっとなのか、返事をしないで身体を血をだばだばと迸らせて地面を染めるだけだった。
「リーベ……、どうして……?だって人型は全部倒して……。違う、それより早く治療しないと……」
「今この中に治癒魔法を使える者はいない。連絡して救護班を呼ぶ!」
出血が酷い。意味がないと分かっていても流れ出る血を抑えようと手で塞ごうとする。それでも血は手のシワの隙間を、指の間を抜けてどくどくと変わらず流れる。生々しくて温かいリーベの血が空気に触れてどんどん冷えていくのを手で感じた。
「……ミーア、さん」
「リーベ!?」
良かった!まだ意識がある。
リーベの声は弱々しくて、今にも消えそうなのを必死で喉から捻り出したようなザラザラとしたものだった。
「ごめんなさい……私、油断……してしまって……」
途切れ途切れの声を発する度に臓器がもがれたかのように悲痛に顔を歪める。
「喋らなくていい。血が止まらないんだ……!!」
「私……刺された、んですね。……お腹、熱い……です。……でも、凄く冷たくて、無機質な感じがします」
リーベの何が言いたいのか全然分からない言葉はいつも通りで、でも今のリーベは血だらけでお腹に穴が空いてて全然いつも通りじゃなくて……。
「だから喋るなって!リーベ、喋るだけで凄く苦しそうじゃんか!」
「ごめんなさい、私……、少し調子に乗っていたのでしょうか……。人型の気配に気が付かないなんて……。ミーアさんとひかりさんと化け物を倒して笑い合おうと約束して、私、とても楽しみにしているんです……。それで、少々浮かれすぎて、いたのかもしれません……」
「!?」
あたしの言うこと無視して何勝手にしゃべってんだよ……。それでもし死んじゃったら意味無いだろ!そう叫びたかった。でもとてもじゃないけど言えない。
「そんなこと……笑いながら言われたら何も言い返せないじゃんかよ、ばか……」
刺されたお腹の痛みに耐えてぐしゃぐしゃに歪めた、口角を無理やり釣り上げて作った顔。それを満面の笑みと呼ぶことができるのかは分からないけど、きっと心からの笑顔なんだろう。
「ヴァールハイトさん!」
振り返ると白衣を着た男女がこっちへ向かって来ていた。
救護班!良かった、間に合った。
リーベのお腹の傷はかなり深いらしい。すぐに結界が張られその場で治療が行われるそうだ。
周りにいた化け物はリーベと話している間にβ部隊の人たちが全部倒してくれたみたいだ。
「またここが襲われても守れるよう俺はここに残る。他の者は作戦に戻れ」
三雲さんがそう言った。
「あの、あたしも……」
「大丈夫、ですよ。……三人で約束を果たすまで、死ぬつもりはありません。ですから、ミーアさんは安心して作戦に戻ってください」
正直、リーベの喋り方は全然大丈夫じゃない。だけど、リーベがそう言うのであればあたしはリーベを信じるしかない。
あたしはリーベを救護班に任せて再び戦いに戻った。リーベに声を掛けてから行こうとしたけど、限界だったのか治療の準備のため麻酔の魔法がかけられたのか目を閉じていた。
「……は、ああ、……」
頭の理解に体が追いついていないのか、胸や背中がつっぱり変な安堵の息が漏れる。
良かった、これでリーベは助かる。
いまだに化け物との戦いの最中なのに、安心感を持たずにはいられない。
当たり前だけど人間が死ぬなんて慣れていない。あたしはそういう世界で生まれたから。だからそれに触れると途端に弱くなってしまう。仲良くなった人なら尚さらだ。
これは欲しがることへのリスクなんだ。欲しがれば、欲を出せばその分リスクが高まる。
あたしはひかりとリーベと化け物を倒して笑い合いたい。あたしはそれを欲した。ひかりとリーベもそれは同じ。だから一緒に戦っている。だから化け物の攻撃を受けてしまう可能性がある。こんなこと考えたくないけど、だから死ぬ可能性がある。それでも欲しがるのなら覚悟が必要なんだ。でなければあたしは弱くなってしまう。なんの覚悟もなしに欲しがるなんて傲慢だろうし我が儘だろうし、きっと痛い目を見るんだと思う。
だけど、なんで覚悟なんてしなきゃいけないんだ……?
覚悟をするということはこの計画の失敗を想定するということ。あたしやひかりやリーベに何かが起こり三人で約束を果たすことができないことを想定するということ。最悪あたしかひかりかリーベかの命が失われることを想定するということ。そしてそれらに備えて心の準備をするということ。
それはいくらなんでもネガティブじゃないかな?あたしが欲しいものはひかりとリーベと化け物のいない世界で笑い合うことだ。なら、それが叶わないことを想定する覚悟をするなんて矛盾しているって。
あたしに必要なのは覚悟なんかじゃなくて何が何でも手に入れてやるんだっていう傲慢さと強欲さだ。そしてそれを叶えるための強さだ!
「ふふっ」
あたしは笑い声を漏らした。
あたし、凄く好きになっちゃってるな。リーベとひかりのこと。
あの時から今までに何度も感じてきた。その度に笑い声が漏れて、多分顔は何度もにやけていたと思う。
欲しい、叶えたい、果たしたい。ひかりとリーベとずっとずっと……。
「だったら心の強さよりも今ここで戦える強さを!」
脚に魔力を込めてあたしはどんどん加速する。途中で付近にいた化け物が襲い掛かってくるのを鎌で切り裂いて走り続ける。
少し先にたくさんの岩山が見えた。資料にあった群れがある場所の少し手前の場所か。
そこに入るとさっきとは比べ物にならないくらいの数の人型と小型の鳥型、中型の爬虫類型と猿型がいた。
「ちっ、待ち伏せか」
走る脚に力が入りすぎたせいでβ部隊の人たちを置いて来ちゃったのであたしは今一人。
まあ、これくらいならあたし一人でも大丈夫だし、やるか。
「それに、さっきリーベにあんな大きな怪我を負わせたこと、あたし結構頭にきてるみたいだし」
すっごい怒っているのが自分で分かる。だから八つ当たりさせてもらう。
「切り払え!」
あたしは鎌を斜めに振る。するとまるで液体のように波打つ黒い魔力の刃が目の前に広がりながら化け物たちに迫っていき、容易くそれらの体を両断した。さらに鎌を振って刃の波をいくつも作り上げる。それはさながら荒れ狂う海のようで、幾重にもなって連続で押し寄せる刃の波は百にも達するほどの数の化け物を飲み込んでいった。
けれど、その奥から新たに化け物の群れが現れる。人型の化け物が黒い棒を水平に持って銃撃のような攻撃をしてくる。でっぷりとした爬虫類型が口からいくつもの光弾を放ってくる。それでも、あたしの魔力はそのことごとくを断ち切って闇色の海の底へと沈めていく。
鳥型が上空から次々と光弾をあたしに撃ってきた。地面を荒々しく抉り、岩を砕いて破壊する。あたしは止まることなく走り続けて頭上からの光弾を避けながら地上の化け物に攻撃をし続ける。
「くっ、本当にキリがない」
そんな悪態をつきながら鎌を振って攻撃の手を休めない。
化け物の数は減るどころか増えていっているように感じる。でも一人で相手にするのが大変ってわけでもないし、これだけ増えてるのはそれだけあたしに引き付けられているってことだよな。なら、もっとここでこいつらを蹴散らせばひかりたちがやりやすくなるし頑張らないと。
目の前に人型が三体。あたしは鎌を大きく振りかぶる。
「はあああああ!」
目の前がぐにゃってノイズみたいに歪んだ。人型の化け物が人間になった。あたしに攻撃をしようと武器を持って……。
「っ!?」
お腹を貫かれた。
「あああぁぁ!?」
痛い、痛い痛い熱い!!
「があっ!?」
またお腹を貫かれた。
冷たくて……。
「うぁっ!?」
また貫かれた……。
無機質な、かんじが、して……。こういうのを、鋭い痛みって、言うのか……。
「あっ、あぁっ……やぁ、……」
ずぶりずぶりとあたしの中に入ってくる。貫かれた痛みと異物が傷口を擦る痛みで意識が飛びそうになる。お腹の中を掻き回され、あたしの身体はそれを拒もうとする。肉の、体液の、臓腑の柔らかい脆さが否応なく伝わってくる。
やがてあたしを刺した三人の人間はゆっくりと異物を抜き取った。ぬちゃりと掻き回されたお腹がしぼむように潰れた気がした。
けれどよく分からなかった。何が何だか分からなかった。頭の中を掻き回されるような嫌悪感を覚えながら、あたしは刺される直前のことを思い出す。
あの化け物、あたしとおんなじ顔してたな……。
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