大魔導師

「今月に入って何回目だ…」


「魔導師は何をしている…」


「土偶の正体は何なんだ!」


地下連盟の役人たちは焦っていた。この通称地連は地下世界の"表向きの"トップ集団である。


「アゼル、貴様はどう思う。魔導師のトップ、"大魔導師"として意見を出したらどうなんだ?」


ある男が、髪が長くてやせている男性を指差した。


「私ですか?まあ正直に答えるのもいいんですけど…。貴殿方にはまだはやいかと…」


会場がざわつく。


「貴様!何を言っている!犠牲者が出ているんだぞ!」


誰かが怒鳴った。


「あのですね…まあ、今回のことは魔導師団におまかせください。いろいろ言うと"アダム"の人たちに怒られるので…」


顔色の悪いアゼルはダルそうに話す。


(なにっ、アダムだと…)


(あやつ、そのようなことを軽々と…)


(いつの間にアダムのメンバーに…)


だれも反論はしなかった。地連ごときが「アダム」には口出しできないからだ。


「よかろう、アゼル君、このことは君に任せる。くれぐれも被害を出さないように。時間なので今回の議会は終わりにする。次回もこのマーレ第2ドーム議会所で行うとする。解散。」


緊張した空気が一気に変わった。


「やれやれ、話すのは疲れるな…早く里行こう…」


そう言ってアゼルは第18ドームを目指した。


「疲れたぁぁぁあ」


ハンスが余計疲れるような叫びをあげた。


「あんたの魔法が効率悪いだけよ…」


メアリーが呟く。


「あ、なんか言ったか?」


少し不機嫌そうにハンスが反応した。


「まぁまぁ落ち着こう。ハンスは魔力はあるんだけどねぇ…」


ケイムが軽く火に油を注いだ。


「なんだとぉ!」


ハンスが完璧に怒った。


「ちょっと黙って!」


メアリーが怒鳴る。


「はぁ?!なんでお前がおこ…」


「いいから黙って!なにか聞こえる!」


3人が耳を澄ます。確かに地響きのようなものが聞こえた。


「あれなんだろ?」


ケイムが天壌を指差した。指した先には、なにか棒のようなものが天壌から無数にぶら下がっている。


「水魔法で見てみる!」


メアリーが水魔法を使ってレンズを作る。


「えっ…、土偶?…」


メアリーが呟いた直後。その棒のようなものは天壌から一斉に落ちてきた。

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土の中の僕ら ファム=サンタマリア @fam_nw

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