土の中の僕ら
ファム=サンタマリア
管理人
この街には風が吹かない。ハンスは高台からこの街、第8のラーム国18ドーム 通称
「ラームの里」
をどこか見る訳でもなくただ、街の光をぼーっと眺めていた。ラーム国はドームを22個所有しており、第1ドームは王家や貴族が住む「ラームの命」であり、第22ドームはスラム街が広がる「ラームの終わり」である。この第18ドームは第2ドームの政治活動が行われる「ラームの中心」で活躍する政治家の多くがここで産まれたので「里」などという名前がついている。1つのドームの半径は平均20キロであり、高さはすべて67メートルである。この土の中、地上から推定2000メートル地下にある世界「地下世界」には風が吹かない。
ハンスは
「天壌が崩れて学舎で習った「空」が見えねーかなー」
と呟いた。
「無理よ。無理無理。ハンスも習ったでしょ?220年前の人神戦争に負けた罰で神様が私たちを地下に閉じ込めてるんだから。知ってる?最近魔導師様が21ドームで天壌を破壊しようとしたけど無理だったらしいわよ。魔導師様が無理なら天壌は壊れないわよ。結局空なんて一生見れないわ。」
すかさず隣で地べたに座っていたメアリーが言い返す。
「それはどうかな?」
さらにメアリーの反対側にいたポッチャリ系男子のケイムが言った。
「うわさでは東のカムイ帝国の極秘科学班が横穴を掘って地上までのこり役400メートルのところまで行ったらしいよ。」
「なんでそこまで行って帰ってきたんだよ」
「それが…土偶に邪魔されたらしいんだよ…」
「「土偶?!」」
メアリーとハンスが声を合わせる。
「土偶ってあの土の人形だろ?」
「うん。それがその…土の中から班員の足をつかんで土の中へその…引きずり込んだらしい…」
「馬鹿馬鹿しい!」
メアリーがなぜか怒りながら言う。
「だいたいなんで極秘なのにケイムが知ってるのよ」
メアリーが追い込む。
「だからうわさだって…」
弱気なケイムは今にも泣きそうだ。
この街、いやこの地下世界には風は吹かない。ただこの後起こる出来事は台風よりも大きな被害を出すだろう。
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