#016 女神さまと混浴しちゃった! ……大人の階段登っちゃった!
エレノアによって散々調教されてから数時間後。
彼女によって新たなる趣味と恐怖心を植え付けられた俺は、路上に突っ立っていた。
そして、金が無いため服が買えずに途方に暮れていた俺の元へ。
「カルマったらホントどうしようもない変態さんね」
「まあ、確かに俺は変態マゾ野郎で……ってやかましいわ!」
「あら、私はマゾ野郎だなんて一言も言ってないのに。プークスクス」
「あ、あとで覚えてろよ!」
カルナがからかってきましたとさ。
うんどうしよう。
すると。
「まあいいわ。そんなカルマには私から服をプレゼントしてあげる」
そう言って、カルナは俺に向かって何やらと魔法をかけてくれた。
俺はカルナに指示に従いながら両腕両足を大の字にし、なんだかくすぐったい魔法を受けながらも今の自分の服装を確認してみる。
「おおっ! なんかかっこいいぞ!」
「どうどう? 私のセンスは? すごいでしょ? もっと褒めてもいいのよ?」
「ああ、気にいった!」
俺はカルナを純粋な気持ちで褒めると、彼女は顔を赤らめながらえっへんとふんぞり返る。
事実としてカルナのファッションセンスが良いのか、はたまた俺のファッションセンスがおかしいのか……それらは定かではないが、今の服装を物凄く気に入ってしまった。
俺がカルナから施しを受けた服装を、簡単に説明するならば“THE 神”といったところだな。
恐らくこの衣服は過去に歴史の文献で見たことのある“キトン”と呼ばれる衣服だ。
全体としては亜麻布が使われた純白で、胸の辺りに太い蛇が巻き付いているかのような斜め掛けの襷が特徴的であり、下半身の布は足が隠れる程の長さ。
そして、その下半身の布と右腕の内側の布がムササビのように連結しているような……大まかにいえばその様な簡素な衣服だ。
あまりに時代がかった服装とはいえ、俺は神だ。
神がそこらのワイシャツやタンクトップを着ていたら、威厳もへったくれもないからな。
「まあカルマくん。なんだか神様って感じの服装ね」
「どうだ? かっこいいだろ!」
「うん! ダサいっ!」
「エレノアの巫女服だって、ここでは場違い極まりないじゃないかっ! 俺たちは似た者同士なのかもなっ!」
エレノアに服装を笑顔でけなされた俺が、これまた笑顔で反論してみると。
物凄い速さの旋風脚が顔面を穿つ勢いで、俺の元へと着弾した。
「わあカルマくん! お顔から血が出てるわ。私が拭いてあげるわねっ」
そう笑顔で俺に言ってくれたエレノアは、俺の後頭部を掴みながら。
「え、ちょっと待ってくださいエレノア様。拭くって……タオルとかでですよね? なのになぜ俺の顔を地面に向け――」
刹那。
俺のお美しい顔面と、ゴツゴツとした地面とが擦りあいながら、俺はエレノアの笑みを最後に意識を失った。
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
「もうカルマったら、ほんと懲りないわね」
目を覚ますと、若干温ぬくいカルナの膝を枕に、俺は別の場所へと移動していた。
「ここは……どこだ?」
そういえば、俺はエレノアに顔を……って、思い出したくないぞ!
グロい! ホラー映像だから!
「まあカルマくんったらもうお目覚めなの?」
「え、えれのあ!?」
俺が上体を起こすと、そこにはなぜか湯船から身を乗り出してきたエレノアが、あまりにも残酷極まりない表情で。
そして俺は、エレノアにトラウマを植え付けられたせいか、とにかくあの笑みが怖い!
怖いのだ。
そしてしばらく息を整え、心身ともに落ち着いた俺がもう一度場所を尋ねてみると。
「ここは温泉! それも……こ、こんよく……なの。カルマがあまりに汚れてたから、背負うのが嫌になったついでに……ね?」
唇に指をあてがいながら、若干の色気と羞恥を漂わせたカルナがそう説明してくれた。
なるほど。
あの後気絶した俺をカルナが担いでくれて、だけども汚れた俺を担ぐのに嫌気がさしたから温泉に来たと。
それも混浴の。
……つか、今混浴って言わなかったか!?
「こ、ここここ混浴!?」
俺、驚く。
「反応が遅いわね。カルマくんにはこれから、ご褒美として私の背中を流してもらいます」
木製の風呂椅子に座ったエレノアが、白色のタオルをたわわな胸と綺麗なおみ脚の間に挟みながらそう言った。
え、えろい!
そして俺はエレノアの元へと近づきながら。
「喜んで」
今世紀で一番の良い声といっても過言ではないほどの男らしい声で、俺はこれから大人への階段を登ることへの意思表明を示した。
そしてこの温泉。
見渡す限りでは五種類もの風呂があり、大浴場、露天風呂、釜湯、電気風呂、雑魚寝風呂と……混浴にしては非常に豪華な作りとなっている。
……っておいおい、混浴で雑魚寝風呂とかそれ……遠まわしにやることやっちゃってくださいって言ってるようなものじゃねぇかよ!
次に、メインである大浴場へとタオルを外して勢いよく飛び込んだカルナは、口から水の出るひよこのおもちゃで楽しそうに遊んでいた。
それにしても、物理法則の乱れた謎の光が出てきたせいでカルナの裸体を拝むことはできなかったが、あいつ意外と胸があるらしい。
いつもは純白のコートに身を包んでいるから分からなかったけど、カルナもちゃんとした女の子なのだと……俺は少し安心した。
「……カルマくん? さっきからカルちゃんの方ばかり見て浴場で欲情しているけれど……わ た しの背中を……流すの? 流さないの?」
どす黒い目つきで、ゴゴゴゴゴという効果音すら聞こえてきそうなほどに……それはそれはもうご立腹な様子のエレノア様。
「だ、誰が上手いこと言えと! 流しますすぐ流します絶対流しますほら流しますっ!」
自らの体にプライドを持っているのか、俺がカルナを気に掛けるのが気に食わない様子のエレノア様。
そしてすぐさま駆け寄った俺は、エレノアの精緻せいちできめ細やかな背中に、ボディーソープをふんだんにかけまくったのだ。
「直で……洗ってっ」
恐らく、ボディタオルでは背中に傷がついてしまうことを懸念したエレノアは、俺の手で自身の背中に直で触れて良いと……そう言った。
もちろん俺は、そう言われれば全力で奉仕するのみだ。
女神の人間を超越した柔肌に、今後触れることの出来る機会など……恐らくは来ないだろうからな。
そう思った俺は、ボディソープで照り輝くいい匂いのする背中へと、両手をを密着させた。
「ひゃんっ」
なんかエレノアが物凄い変な声をあげた気がしたが、彼女の「今のに指摘したら殺す」と言わんばかりの視線に……俺はただただ手を動かし続けていたのであった。
そして、一通り背中を洗い終えた俺は、次に髪の毛を綺麗にしてあげようと。
そう考えてエレノアの前にあるシャンプーに手を伸ばしたその時。
「あ、やべっ。滑りそう!」
ボディーソープを出し過ぎたせいか、俺の足元までこぼれ出ていたボディーソープに足を滑らせた俺は。
前のめりになりながらも、両手にしっかりと何かを掴み取っていた。
まさか……これはっ!
この瞬間、俺は今までに受けてきたエレノアからの拷問をふと脳内に再生させる。
そしてこの先、自らが助かる確率をなんとかあぶりだしてみたのである。
……うん、0%だ。まごうことなき0%だ。
「ひゃんっ……あっ。そ、そこは、」
顔を真っ赤にするエレノアの上に、俺は馬乗りになりながらも確かにそれを掴んでいた。
否、おっぱいを揉んでいたのだ!
そして俺は、これから起きるであろう災難に備えて、目の前の鏡に映る自分に別れを告げた。
「ようカルマ。お前、顔が無事でよかったな。それと、強く生きろよ」
温泉に来る前、俺は顔を地面と擦り付けられたが、どうやら俺のイケメンは顕在だったらしい。
そして別れのメッセージを。
すると勢いよく立ち上がったエレノアに振り下ろされ、俺は地面へと倒れ込んだ。
「か、かるまくんのばかああああああああっ!」
若干目に涙を浮かべているエレノアが、綺麗な足で俺のイケメンフェイスをぐりぐりと。じわじわと。
この瞬間、またもや女神の裸体を拝める機会が来たんだと。
そう思ったのだが。
「なんで女神はどいつもこいつも、謎の光が物理法則を乱してくるんだよおおおお! 放送禁止なの? え? そうなの?」
顔面を踏みつけられながら叫んだ俺の叫び声は誰にも届かず、俺はラッキースケベの主人公にはなれないのだと。
そう強く思ったのであった。
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