五分 蔵の中

宮国 克行(みやくに かつゆき)

第1話 句

゛現世を過ぎ 我再び戻らん 獄卒を従え゛


「うつしよ……?」


 手に取った黄ばんだ掛け軸には、短い文だけが乱れて書かれていた。


「じいちゃん、これは?」


 蔵の中で一緒に片づけていた祖父に掛け軸を見せながら聞いた。


「ああ。それは、辞世の句じゃよ。六代前のご先祖のな」


「辞世の……」


 それっきり、たっぷり五分は動けなかった。





゛現世を過ぎ 我再び戻らん 獄卒を従え゛




                    了

 

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五分 蔵の中 宮国 克行(みやくに かつゆき) @tokinao-asumi

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