第3話 おっさん、絶望の淵で戦場に立つ


 風呂から上がり、ビールを片手にPCを起動する。


「ぷはぁ、うまい」


 作り置きの夕飯をつまみながら酒を飲み、ユーチューボをぼんやりと眺めていく。


「ヒカリン……今をときめく女子高校生ユーチューバーか」


 動画越しには、自らの口だけで様々な音を器用に出しては、見事な曲へと昇華させる少女が一人。ボイスパーカッションという特技を持つ彼女は、チャンネル登録者600万人以上であり、年間の広告収入も億超えだと言われている超有名ユーチューバーだ。



芽瑠メルがこの子を目指すって言ってたが、どう考えても無理だ……」


 会社員でない俺は、年齢の割に自由な時間が多い。その空いた時間を利用して、動画編集やゲームの攻略にあてている。その一環としてチャンネル登録者の多い、人気ユーチューバーの特徴なども軽く研究していたりする。


「そもそもヒカリンは、ゲーム実況者ではないんだよな……」


 それでも人気ユーチューバーの動画は、参考になるべき点がいくつもある。



「まず外見って重要だよな……」


 ヒカリンは、見目が非常に良い。うちの芽瑠めるには劣るものの、4分の1が北欧系の血が入っているとの事で、かなりの美少女だ。白金に輝く髪の毛をツインテールでまとめ、黄色の瞳はいつも自信に満ち溢れている。肌も芸能人顔負けの美白さが動画越しでも伝わってくるし、おまけに鼻は高く、唇はぷっくりと小ぶりだ。男子なら誰もが目を惹かれる容姿の持ち主なのだ。



「うちの妹も顔出しをすれば、ヒカリンに圧倒的勝利をおさめるな」


 しかし、まだ芽瑠めるは幼いわけで、万が一にも住所などを特定された日にはどんな危険があるかわからない……なのでこの辺は参考にならない。



「次は、商品レビューか」


 女子高生目線で、その辺のコンビニに売られているお菓子の味などに点数を付けて評価しているヒカリン。その若者独特な視点から繰り広げられるリアクションは、見ていて飽きない。思わずおっさんの俺ですら、笑ってしまう場面もあってついつい他の動画も漁ってしまう。

 無邪気で元気良く、時に偉そうに、そして謙虚にと、目まぐるしく表情を変えながら『風船ガムの風船を限界まで膨らませてみた』という馬鹿らしい行為に挑戦している彼女はやはり面白い。



「しかし、これもステルスマーケティングの一環だというのには驚きだ」


 一見、楽しそうに動画を撮っているようにしか見えない彼女だが。

 裏では企業から依頼が来ており、商品紹介をする代わりにお金をもらっているのだ。いわゆる広告費というやつだろう。ヒカリンには多くのチャンネル登録者がついているわけで、ヒカリンがその商品に関する良いイメージ動画をアップすれば、おのずと視聴者もその商品を知る事になる。そして購買意欲の促進に繋がる。

 これは規模の大きなユーチューバーの特権と言えるだろう。



 俺達のような弱小ユーチューバーには企業からの声なんて一切かからない。


 商品紹介の報酬相場は、チャンネル登録者一人につき1円であるから、ヒカリンの600万人……つまり1回のステマ動画で600万以上も稼いでいる。さらに1再生0.1円~0.3円ほどの収入もユーチューボから振り込まれるわけで、こんな十代の女子高生が、大人よりしたたかに仕事をこなしているのだ。



「尊敬に値するな……」



 自身の知名度やSNSでの影響力をフルに活用し、その他にもイベントやライヴ開催によるチケット販売、グッズ販売、レインスタンプの販売など多岐に渡ってお金を稼いでいる。


 金にがめついとかの中傷をネットで見かけるが、文句を言っている奴らは少し冷静になって欲しい。たかだか10代そこらの少女が、多忙極まるビジネスに全身全霊で取り組む姿に感服すれこそ、ねたんで悪口を言ってる場合ではないだろう。



 あんな仕事量は、俺だったら耐えられない。

 さらに、他人に見られるというのはストレス負荷が大きい。俺もこれはゲーム実況を通じて初めて実感した事だ。ネットは匿名性が高く何を言っても許される、リスクの少ない世界だ。おのずと無法地帯だと錯覚しやすい輩は多く、そういった存在にはひどく心を擦り減らされる。


 ヒカリンより何万倍も小規模のチャンネルで、ゲーム実況をするのだってかなり神経を尖らせて色々と思案する機会があるのだ。600万人を視聴者リスナーとして抱えるヒカリンの苦労は、俺達の比じゃないだろうな。



「しかも、動画の更新ペースが毎日とか……すご過ぎる……」


 俺たちは以前、生配信でゲーム実況をしていなかった。というのも、ゲームを上手にプレイしつつ、同時に面白い喋りを考え、しかも視聴者のコメントを拾う、なんて高等テクニックは到底無理だと判断したからだ。

 事前に芽瑠メルと今日はこういう事をして、こんなお喋りをしたいという要望を聞き、録画をしていく。その後、録画データを見直して、ぐだった箇所はカットしたり、視聴者さんが見てくれそうな内容に動画編集をしてまとめる。

 しかし、これにはかなりの時間と労力を要した。

 ゲームを終えた後は、だいたい2、3時間程椅子に座ってPCと睨めっこの作業が続くのだが、これがけっこう腰にくる。

 最近では長時間ゲームをしているだけでも、目や身体に疲労を感じるのにだ。



 芽瑠メルも手伝ってはくれたが、中学1年生の妹にあまり夜ふかしをさせるわけにもいかないので、動画編集は俺がメインでやっていた。


 毎日投稿を始め、わずか1カ月で根を上げた俺は、ただゲームのプレイ画面を垂れ流しにするだけで動画になる生配信にシフトしたのだ。それでも週に一本は編集した動画をアップするように心掛けているが、結局はクオリティよりも、継続とらくさを優先した。


 もちろん生配信で上手く喋る技量なんてないから、そこはもうコレから鍛えていくしかないと開き直っている。

 そうして負担を減らしても、毎日配信は辛いと思う日がある。



「彼女は一体、どれほど強靭な根性を持っているんだ……」



 ヒカリンは録画後、編集もこなしての毎日投稿を続けている。

 これは俺にとって驚嘆すべき事だ。ヒカリンの偉大さに乾杯、としゃれこんで二缶目のビールを一気に飲み干す。


 

「もう一生かねには困らない程、稼いでいるだろうに」


 一向にヒカリンの動画投稿ペースは落ちない。

 俺の酒を飲むペースも落ちない。


 そもそも俺だったら1億も稼いでしまったら、しばらくはのうのうと何もせずに暮らす自信がある。

 何が彼女をそこまで、駆り立てているのか気になってしまう。



「あぁ……ちょちょっと動画を撮って、大金をもらえるまでのチャンネル規模が欲しい。らくして生きていたい」


 今や彼女の立場は不動になっていて、芸能人よりも絶大な人気を誇っている。

 そんなヒカリンに羨望を抱くと共に、自分と彼女で何が違うのかと思いふける。


「俺達には……俺には、何が足りないんだ?」


 足りないものだらけだった。オリジナリティ、独創性、若さ、特技、喋りのうまさ、目を惹くような動画内容、企画力、笑いを誘う展開力と動画編集力。

 絶望的に差があった。



「これが飲まずにいられるか」


 酔いが回ってきたせいか、ヒカリンの動画を見る度にひどく悔しいと感じるようになってしまう。

 俺より10歳以上も若いヒカリンが大金を手にして、俺には何ができる? 俺の会社に捧げた10年以上の月日は何だったんだ? 俺の10年の努力は、その辺の女子高生の収入に完膚なきまでに敗北を喫したのだ。


「ぐぅ……」


 深夜に一人で酒をあおり、女子高生の動画を見て悔し涙に頬をらす……なんてみじめで矮小わいしょうな奴なんだ。



所詮しょせん、俺は底辺のクズ野郎か」


 ひとしきりビールをあおった後、一度冷静になるためにソファへと寝転がる。

 だが、口では諦観ていかんしたように振舞ふるまえても、一向に思考の熱はおさまらない。くすぶり出した炎が胸の内で静かに広がっていく。


 なんでだろうな。俺なんかが何をしたって無駄だとわかっているのに……頭では納得できても、心が納得してくれない。

 諦めるなとプライドが叫ぶのだ。



「一介の学生ができて……35歳の大人にできないはずがない」


 こんな時こそ、営業職で培った経験と思考力をかさなければ。顧客が何を求め、何を望んでいるのか。

 満足できる物を提供するにはどうすれば良いのか。

 それにはまず顧客を、視聴者リスナーを知らなければいけない。

 つまり、俺達の動画を見てくれている層だ。彼ら彼女らがどういった思考の持ち主で、どのような対応をすればウケがいいのか、そして妹いわく『バズっているユーチューバー』を参考に、良いと思った工夫やスタイルをどんどん吸収して、俺達だけができるオリジナルを生みだしていく他ない。



 芽瑠メルがもっとチャンネル登録者を増やしたいと言ったのだ。

 妹がそう願ったのだ。


「増やさないわけがない」



 もっと、もっと、視聴者と繋がれば……チャンネル登録者数だって伸びるはずだ。

 そんな思考の中、俺はまどろみへと落ちていった。






「役立たずのアシェリート様! 聞いてるのですか!?」



 耳元で急に怒号が響き、居間で寝転んでいた俺の眠気は吹っ飛んだ。

 

 一体なんだ?

 芽瑠めるが大音量で深夜アニメでも見始めたのか?

 


「情けないですね! アシェリート様! 仮にも私が仕えるハッシュトスタイン家のご子息様でしょう? お気を確かにお保ちください!」


 は?

 目の前では、小学生女子が鬼気迫る形相で俺の両肩を揺さぶっている。



「敵軍の戦術がこちらの予想以上です! ここは恥を忍んで退却しましょう! あぁ、元々あなたには守る程の誇りなんてありませんでしたね」



 翡翠ひすいのように透き通った髪を激しく揺らし、緑の双眸をしかめて俺をせき立てる。さっさとしろと、苛立ちが全身から放たれている。


「おつむの弱いアシェリート様にもわかるように言いますと、この本陣は現在『透明化インヴィル』で接近していた魔導騎士の精鋭部隊による奇襲を受けています」


「まどっ、え、なんて?」



 おっさん、完全に混乱の極み。

 妙に口調に棘のある女児騎士だが、その辺はゲーム実況中のアンチコメントで慣れているから、そんな気にはならない。


 が、他に非常に気になる点がいくつもあった。

 彼女は中世ヨーロッパの武人が着込んでいそうな鈍色の鎧に身を包み、顔に紅い斑点をいくつも飛び散らせていた。せっかくの美幼女っぷりが台無しだと思った矢先、彼女の頬についている赤が血ではないのかと懸念する。


 どうしてそう判断できたか。


 簡単だ。

 辺りから絶叫がそこかしこから上がり、数十メートル先では槍を持った男が、向かい合う別の男の顔に深々と突き刺していたのだ。



「とにかく愚図で愚鈍、金と権力だけが取り柄のグズおぼっちゃま。どうかお急ぎください。ここもすでに、敵勢に包囲されつつあります」



 女児騎士がはやし立てるが、俺は一歩も動けなかった。


 周囲では冗談のように人が倒れ、真っ赤に燃える色の液体を激しくこぼしている。

 アニメや映画で見るような光景に、否応がなく身はすくみ上がった。二次元では到底考えられないような、死の匂いが充満した空気。それらが圧倒的な重圧となって、心が恐怖一色に染め上げられてしまう。



「おうぇッ」


 突然襲い掛かって来た心の大負荷と、あまりの血なま臭さに吐き気をもよおす。胃の奥底からこみあげる不快感に抗うべく、身が自然と縮こまってしまった。



「アシェリート様!? だらしないですね!?」


 その場で身体を丸める俺に、女児騎士の手が伸ばされ心配そうに俺を覗きこんでくれる。だが俺が注目したのは彼女の優しさではない。

 女児騎士の小さな背中の向こう、彼女の背後から迫る血濡れた剣を持った男だ。

 一瞬、死神が来たと錯覚してしまう。それ程までに、俺達に剣を振りかぶる男の顔は、鬼気迫る形相をしていたのだ。



「クレア様! アシェリート様! ここは俺が持ちこたえてみせまっ」


 えづく俺と女児騎士をかばうように、将来有望そうな若者が横から助太刀をしてくれる。剣と剣がぶつかり合い、数合すうごうの後……動けない俺達を守ろうとした若き青年は、頭を失ってしまった。くるくると宙を舞った生首の表情は、カッと目を見開いたままで……ただ、ただ彼が首を斬り飛ばされて絶命するさまを唖然と見送る事しかできなかった。



「あぁ、だらしない護衛騎士ですね」


 ドチャリと青年の顔が俺の足元に着地する。

 まるで悪夢に出てきそうだ。


「ひぃっ」



 そうだ、これは悪夢に違いない。

 まるで現実味のない光景に、めまいと吐き気を覚える。そんな凄惨な状況下で、ふと青年を斬り殺した騎士らしき人物と目が合ってしまう。こちらを視認した殺人犯は、ギラギラと濡れた両目で俺を睨み、そして吠えた。

 裂帛と共に振り抜かれた剣には炎が巻きついており、俺は驚きと恐怖に身がすくむ。

 アニメや小説じゃ、平然と主人公たちは殺し合いに身を投じて勇敢に敵をばったばったとなぎ倒しているが、あんなのは幻想だ。



 平和な日本で育ち、人を殴った事さえない俺があんな狂気を身に纏った人間と対峙できるはずがない。



「アシェリート様、ぼけっとしてないで! ほら危ないですよって、仕方ないですね!」


 傍にいた女児騎士が敵の攻撃に素早く反応し、なんとか炎剣をその手に持った剣で弾く。そして、女児とは思えない見事な体さばきで右足からの蹴りを放ち、敵がよろめいた隙になにやら小言で呟く。


「風の御霊よ、古戦場より舞い戻り、我が呼び声に答えよ……」


 敵の騎士も負けじと体勢をすぐに立て直し、再び歯を食いしばりながら炎剣を振るう。



なんじが主の護剣となって、敵を斬り裂け! 『刃風スパーダ』!」


 彼女がそう叫ぶと、俺達に襲いかかっていた男の首が剣で切りつけてもいないのに、綺麗にすっぱりと落ちていく。そして、敵が振りかぶっていた炎剣も握る力を失った手からすっぽ抜け、こちらに飛んできた。



「アシェリート様!?」


 これにはさすがの女児騎士も反応できず、というか新たに敵と思しき男二人組みと剣を交えていた。

 しかし、俺だってタダのおっさんなわけで、瞬発力がいい方でもない。だから炎剣が顔のすぐ真横を通り抜けていき、続いて左肩に激痛が走る。


「ぐぅぁぁあああ……」


 どうやらかすったようだが、それでもかなり痛い。

 自分の肩が焼かれているような、じくじくと肉をえぐり出す虫でも大量についているような感覚に、俺はどうしようもなくなってもがく。



「あぁぁ、うぐぁあ……」


 この痛みが偽物であるはずがない。

 こんな激痛が夢であるはずがない。

 これは夢ではないのだ。じゃあ、一体何なんだ?



「あぁ、死んでくれなかったのですか。しぶといダメ男ですね、アシェリート様」


 女児騎士は二人の男を切り捨て、俺の事を凄惨な笑みでもって嘲笑う。

 何が起こって、この女児騎士は誰で、俺は誰だ?

 呆然自失になり、苦痛と混乱で意識を手放してしまいそうになった刹那、脳内で慣れ親しんだ声、というより情報が流れ込んできた。

 


『おっさん兄貴がこんな夜中に配信とか珍しいなー』

『メルちゃんはいないのか』


『つまりはおっさんの単発実況であるな。そして戦場であるな』


『なにこのゲーム、リアルすぎない?』

『ほんとにゲーム?』


『おいおい、グロいな』

『いつものドラグーンクエストⅩの実況じゃないのか。なんてゲーム?』


『てか、おっさん。ぽっちゃりショタッ子キャラ動かしてんのか?』

『銀髪の小豚アバターとか誰得キャラだよ』


『妹に飽き足らず、実はそう言う趣味の持ち主で!?』




 ゲーム実況をしている時の視聴者リスナーが発するようなコメントに似ている。

 突然の出来事が連続して、もう頭がパンク寸前になりそうなのに、さらにゲームシステムのような情報がズラッと脳裏に焼き刻まれる。



:アシェリート・シュバルツ・ハッシュトスタインの『自己創造の化身クリエア・エイギス』が発動しています:


:『自己創造の化身クリエア・エイギス』より『幻想界ミズガルドへの架け橋』が発動中です:



「ぐ、うぁ?」



 もう一つの視界、とでも言えばいいのだろうか。

 ちょうどゲーム実況中のユーチューボを見ているような感覚。

 そんな映像が頭の中に流れ込んでくる。



『おっさん兄貴、もたついてんなー』

『舐めプ乙』

『難しいゲームなのですか?』



 思考の画面に映っている、ふくよかな少年が……今の俺自身だと嫌でも理解させられた。だってすぐ傍には例の女児騎士がいて、死にゆく人々がいて、今まさに俺の目の前で広がっている光景そのものだ。相違点があるとすれば、画面の視点が俺よりも高い、空中から見下ろす様な地点で映像が抽出されている。


 なぜ35歳のおっさんが9歳前後の銀髪少年になっているだとか、疑問は尽きないが……今はそんな事に思考を割くよりも、如何にして状況を把握するかだ。



『おいおい敵がきてるぞ!』

『避けろって!』



 リスナーたちの指摘に、俺と女児騎士の背後から長槍を構えた兵士が突進してくるのに気付く。

 俺の視野からは見えなくても脳裏に浮かぶゲーム画面のような視界では、ソレがしっかりと確認できた。咄嗟とっさにしゃがんで突き抜けた槍をやり過ごす。それに気付いた女児騎士が瞬く間に敵兵をほふった。



「おや? 無能な小豚でも自分に危険が迫れば、必死になれるものですね。お見事です、アシェリート様」



 俺は女児騎士をスルーして、脳裏に浮かんでいるもう一つの視界、がありそうな箇所に目を向ければ……あった。俺のスマホが、矢が飛び交う宙に浮いていた。


 あれがもしかして、この状況をリスナー達にユーチューボへと生配信しているとでも言うのか? それで俺の脳内に映っている映像が、そのままあのスマホの録画画面とリンクしている?


 おいおい、なんだこれ。



 芽瑠めるの使う若者用語より理解不能なこの状況は何だ?

 いや、まがりなりにもゲーム実況者である俺は、脳内で次々と流れていく情報の意味をなんとなくだが理解できる。

 だが、目の前の光景は到底理解できるような、いや理解したくない悲惨な景色が広がっているのだ。



『派手なスキルぶちかませ! 見せてくれ!』

『左から来てるぞ、ほんと開幕爆死とかヘボプレイかますなよ!』


『つまりは油断大敵であるな』

『出オチ感満載なのも、おっさんらしいっちゃらしいけど』



 何が何だかわからない。

 けれど俺がこんな所で死んでしまう訳にはいかない。

 妹の芽瑠めるを一人残して、死んでしまうわけにはいかないんだ。




『リスナーのお前ら、俺達を助けてくれ』



 親しみと嘆願と、絶望と希望を込めて。

 ゲーム実況ではお決まりの文句を。


 俺はいつも通り、この緊急事態に視聴者リスナーへと向けるのだった。





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