股間に毒性のチューイングキャンディが生えている世界

シーズ

最終話

この世界、やはりどこかおかしい。

交通事故で中学生の三輪車に股間を引きずられた俺は、所謂異世界転移というものをしてしまったみたいだ。


「やぁケルビンあたりめ。どうしたんだ? 浮かない顔して(モッチャモッチャ)」


この世界、やはりどこかおかしい。

異世界転移した俺の生活は聖スルメクサクナイ学園に入学したところから始まったはずなのだが、初対面の癖にどいつもこいつも執拗にケルビンあたりめと呼び捨てにしてくる。どこまでも恥知らずな奴らだ。


「きっと隣のクラスのフケマッテルーノちゃんに恋煩いしてたんだよ。流石はクラス1の色男だよほんとに死ね(モッチャモッチャ)」


この世界、やはりどこかおかしい。

この男、よく見ればどことなく髪型がベッカムに似ている。何十年遅れた感性してるんだコイツ。


「あら、あだじのばなじをじでいだのがじら(モッチャモッチャ)」


この世界、やはりどこかおかしい。

この女、先程から自分の鼻水をすすり喉を鳴らしている。

自分の鼻水で喉を潤しているのか。

そしてコイツ等はさっきから何を食っているんだ。


この世界、やはりどこかおかしい。

よく見ればどいつもこいつもズボンを履いてないし、何故かち◯このかわりに紫色をした物体が蠢いている。

先程女扱いをしたフケなんとかの股間にも紫色の物体が付いているし、よく見ればコイツもどことなくベッカムに似た髪型をしている。


「一限目の授業なんだったっけ?(モッチャモッチャ)」


「確かバリアアリバーリトゥードじゃなかったっけ(モッチャモッチャ)」


この世界、やはりどこかおかしい。

コイツ等、自分の股間のブツをちぎって食っている。

まるで親の仇のように執拗に噛み砕いている。目が血走っていてまるで初めてミミズに食いついたテナガエビのようだ。


「アレ? ケルあたの右目腫れてない? 結膜炎かもしれないから病院行ったら?」


「そうだよ、放っておいたら結末炎といって全身の毛穴から火を吹き出して死に至る恐ろしい病気にかかるかもしれないから早く病院に行くんだ」


この世界、やはりどこかおかしい。

結膜炎ごときで咀嚼をやめながら明白な嘘をつきながら執拗に病院に行かせようとしてくるし、ちぎれたはずの股間がこの世の終わりのような速度で再生している。


[緊急ニュースです。最新の研究で、我々に馴染みのある股間部の物体「モウドクフクマレテルーノ」に、死に至るほど強力な猛毒が含まれていることが分かりました。

症状として全身の毛穴から火を吹き出して死に至ることが確認されています(モッチャモッチャ)]


「「「ぐぁぁぁぁぁぁぁぁ(モッチャモッチャ)」」」


「あだじだぢ、じぬのね……(モッチャモッチャ)」


「だけど俺、ケルあたと会えて結構楽しかったんだぜ(モッチャモッチャ)」


「さようならみんなケルビンあたりめゲロで窒息して死ね……(モッチャモッチャ)」


この世界、やはりどこかおかしい。

どいつもこいつも股間の物体を食べるのをやめないし、さっきまで平気で食ってたのにいきなり全身の毛穴から火を吹き出して死に至るし、世界には俺一人しか残っていない。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

股間に毒性のチューイングキャンディが生えている世界 シーズ @shizu_

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ