クマゴリラがあらわれた!

 アベさんとの朝練。

 型、素振りを一通りしたあと木剣で模擬戦。

 模擬戦形式で稽古つけてもらうのは二度目だが、ちょっとアベさんが本気だすと一捻り。我ながら情けない。インドア派ド文系の俺の戦闘力の低さ。

 に、しても……なんだろうな、アベさん本体すら目で追えないってのは。

 なんか剣をこっちに構えて「ゆらぁ〜」っていい感じに揺れるのよ。で、次の瞬間アベさんを見失って、え? って思ったら後ろ取られてる。動きの技術でそういうことが可能なの? 俺がすげえ鈍いの?

 ……「ゆらぁ〜」に秘密がある気がするな。

 今日は天気いい。目標、一匹俺自身の手で何か狩る!




 今日は……狩りの内容は充実していたし、初! の俺単独で獲物取るも達成できたのだが、素直に喜べない感じ。


 タバリィッス……あ、ボウガンね。任せて貰えて角兎を一羽仕留めた。その後、次の定置の罠ポイントに移動中、いきなりクマみたいな生き物が襲いかかって来た。


 茂みから飛び出して来たそいつは大きさも含めほぼクマなんだけど、腕だけ太く長くて……ゴリラの腕みたいな?

 なんか「読者が考えたモンスター」っぽい安直なデザイン。

 俺とアベさん、ほぼ同時に剣を抜いて構える。……正直、この瞬間このシチュエーションには「うわ、俺かっけえ……」って自己陶酔した。

 脳裏では不謹慎だけどドラクエの戦闘のBGMが流れる。アベさんが動く。

 出た! 「ゆらぁ〜」の動き! ……そうか、ゆらぁ〜の動きを相手の目線が追い始めた瞬間、真逆にヒョイッと身をかわす感じで動くのか!

 第三者目線で見て初めて理屈が解った。緩急をつけた高度なフェイントなんだ。と、理屈が解ったところで簡単には真似はできなそうだけど。

 クマゴリラの死角に滑り込んだアベさんの必殺の一撃がうなる!

 ……あれ? 斬りつけ浅くないですか? アベさん。意外にちょっと斬ってすぐ飛び退いて間合いを取った。そしてじりりと間合いを詰め、ゆらぁ〜、ちょっと斬って飛び退く。

 ……ほう。そういう戦い方ですか。これなら俺にもできそう。


 そうだよな。

 通常一人で狩りしてて、怪我して動けなくなったら死ぬもんな。

 時間かかってもヒット&アウェイで自分の身を護らないと。カッコ良くはないがリアル。実用的。呼吸を合わせ、二人でクマゴリラに傷を増やして行く。奴は怒りに吠えて自慢の腕で殴りつけてくるが、まあ当たらない。

 に、しても毛皮の意外な防御力の高さ。なかなか刃が有効打まで通らん。体重と勢いが乗り、当たった刃の角度がその斬り込みのベクトルと一致して初めて斬れる感じ。アベさんは十回斬れば十個クマゴリの傷になるが、俺は十回斬って四、五回がアーマー値を抜けるくらい。

 ……これ時間かかるな。長期戦だわ。

 けど気は抜けない。下手すりゃ大怪我だ。集中集中!

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