クマゴリラをたおした!

 今なんターン目だ……?


 クマゴリラも必死だが、人間二人の方が一枚上手でしたたかだ。

 獲物は傷だらけの血まみれになりながら、徐々に動きが鈍くなって行く。ヒット&アウェイの回転が上がる。怒りの咆哮は段々痛々しい悲鳴に。それでも俺たちはやめない。

 ……なんかカワイソウだな。血と泥。ズタボロ。凄惨。


 実際一時間くらいだろうか?

 失血と疲労で息も絶え絶えなクマゴリラ。

 俺たちもそこそこ返り血浴びて息は荒れてる。まだ続くのか、これ? って思った瞬間。

 どこにそんな体力を残してたのか、アベさん稲妻の如く奴の懐に飛び込んで喉元を一閃! 

 刃は動脈と気管に達した。

 喉元から大量の血と「ひょう〜」という調子外れな音を出しクマゴリラが倒れる。アベさんはそれでも構えを解かない。二、三度痙攣したクマゴリラが完全に動かなくなると、深く息を吐いてようやく構えを解いた。で剣をクマゴリラのなきがらの上にかざし、しばし黙祷する。

 正直俺は緊張と疲労、生き物を痛めつけて殺すっていうストレスからすぐにでも座り込みたい気持ちだったが、アベさんに習って同じように黙祷した。友の死を悼むように。

 いや、必要だよ。この黙祷は。

 上手く言えないがクマゴリラの命に俺たちが敬意を払わなくてどうする? みたいな。

 ごめんな……クマゴリラ……。お前の命、大事に頂くぜ。


 その後は二人とも黙って黙々と解体作業。

 こいつは腕と脚のみ食用にするらしい。

 前に観たアニメだと熊猟師が脳みそや目玉食べたりしてた気がするが、この世界にそういう文化はないようだ。

 その場で焚き火を起こして腕の一部を塩焼きにして食ったんだが……うまかった。思ったより柔らかく、ぷりぷりした食感。

 ありがとう……クマゴリラ。美味しゅうございました。


 なんつーか狩りってこう……スポーツっていうかなんつーか、ゲームっぽい感覚で爽やかなイメージだったけど、世間知らずな俺の勘違いだった。生きようとしてる命を断って……殺して食うってことなんだよな。文字通り命のやり取りなんだよ。狩る相手に対する敬意や感謝、忘れないようにしないとな……。



 日もくれて、今焚き火の番中。

 アベさん寝てて、一人で焚き火のそばで例の「ゆらぁ〜っ」フェイントの練習……ってか真似してたら寝てると思ってたアベさん起きてて、クスクス笑われた。

 ……人が悪いなぁ。恥ずい!

 この技、名前あんのかな。勝手に名前付けていいですか?

 命名。「歩法・柳葉」。

 我ながら中々の中二的センス……ありがち過ぎるかな。

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