いやどんな生態系だよ。

 いつもの森、狩りの途中。


 干し肉食べながら休憩中。

 これあれな。いきなり塊を食べようとするんじゃなくて、肉の繊維に沿って小さく噛みちぎって、こうガムみたいな繰り返し繰り返し噛んで食べるものなのな。

 この食べ方なら比較的おいしくいただけるし、少しの量で満足感も得やすい。アゴはめっちゃ疲れるけど。


 買って貰った鎧、めっちゃいい。

 道具ザック、前までは背負うと武器のとがりがゴツゴツして背中が痛かったけど、鎧してるとそれがない。腕周りは大きく空いてて動きを妨げないし、部分的に金具で補強してあるがほぼなめした革で成形してあり、軽い。

 服も買って貰った奴に着替えた。折角だし。

 木綿っぽい厚手の生地の長袖長ズボン。濃いベージュ……茶色までは行かないかな?

 部分的にこれ綿入ってる? 肩とか肘、膝は一段厚くなってる。柔道着の帯とかみたいに。

 金属の鎧着ても痛くないようにかな? 革手袋してほぼ冒険者スタイル完成。靴はナイキのスニーカーで顔はがっつり日本人だが。



 早起きして剣の素振りしたよ。

 持つと振るとでは大違い。

 鉄だもんな、鉄。振ってるというか振られてるというか四苦八苦してたら、アベさん起きて来て剣構えて「こうやるんだ」みたいな。

 おお!

 見よう見真似で構えて、アベさんが振ったら同じように振る……とついてく。


 アベさん、やっぱりタダの猟師じゃねえな。


 ちゃんと訓練受けてる剣捌き。俺ド素人だけどそれくらい分かる。段々難しくなる型に必死でついてって気づけば汗だく。今日はこれ位にしようって感じになって狩りの支度。


 あれなんだな。剣道の素振りみたいに、えい! って一直線に振り下ろして止めるんじゃないんだな。振り回すというかベクトルを逃すというか。重さの行方をコントロールする感じなんやな。


 おっ。休憩終わりだ。





 怖くて小便を漏らしそうになるという体験をする。


 森の中で鹿っぽい奴に傷を追わせアベさんと二方向から追い詰め中の事。

 30mばかり離れたアベさんから甲高い口笛の合図。すげえ勢いで「止まれ! 伏せろ!」のハンドシグナル。理由分からないまま従った。

 鹿モドキは脚引きずってても少しだったのにと見送ってたら森が一区画丸々動いた。


 何が起きたか分からない。

 鹿の身体が身震い一つして動かなくなり宙を登って行く。

 え? え?って思いながらよくみると、節くれだった何かの巨大な前脚に捉えられてもがいていた。


 なんだよこれ……なんだよこれ……⁉︎

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