入り口に街の名前をいう係はいなかった。

 街……!


 そらそうよな。

 如何にアベさんとはいえパンやチーズまで作ってるふうはないし、昨日の快気祝いご飯で食料庫の食料もほぼ空っぽだったからどうするのかなとは思ってたんだ。

 樽もさ、こないだ作った一個以外も納屋に何個かあるからシーズンオフ用の備蓄かな?とか思ってけど、売る用か。


 つまり獲物獲る→一部は食べ一部は加工して保存→加工肉がある程度貯まる→街で売るか交換かして他の食料や矢弾を入手……というローテーションか。

 に、しても荷車重い。

 樽は俺が知ってるワイン樽とかより一回り小さい感じだが六個も乗ってると。

 道も悪い。車輪が地面に沈む。木の車輪に、車輪幅の鉄のベルトみたいのが打ち付けてある造りなんだけど、これちょっとした石や木片を車両が踏むと踏み越えられずにガガガッてなってその度に止まる。

 タイヤに弾力があるのって大事なんだな……。


 川原で休憩中。

 アベさんと引く係押す係交代しながらここまで来たが、街まであとどれくらいなのかな? 悪路と荷車の低性能が相まってかなりの運動量。気候は肌寒いが汗が引かない。手拭いでよく拭いとかないと風邪引きそうだ。革袋の水を川の水と入れ替えて、そろそろ出発かな?

 ……この川も誰かのトイレだったりするのか?



 おお


 おおおおおおっっ!!!


 街道っぽい広い道に出た!

 地面固い!

 ……ってか他に、ヒトが! 通行人が! アベさん以外のこの世界の人間っ!



 うわ、すげ……。


 すげーええええええっっ!!!


 見えて来た! 街! 詳しく書きたいが荷車引かないと……画像貼付してえ!

 長い長い城壁。大きな城門。

 街…! 人々…! 喧騒…!

 すげえ以外の修飾語が出ない!

 外観はイッテQかなんかでみたエジプトとかの街並みに似てる。石と漆喰? 白っぽい建物。

 牛っぽい何かと馬っぽい何か……顔かたちや体付きのバランスが妙。

 ……てか広いぞ街。大通りの奥行き感!


 なだらかな丘陵地とそれに繋がる平野部に白くて四角い屋根が一面に。それをぐるっと長ーい城壁が囲ってる。綺麗だなー。写真撮っとこ。



 丘の上のあれは……城?

 ってことはここは城下町?

 商店の軒先に並ぶ品々、行き交う人、知ってるようで知らない物珍しい諸々……短い文章ではとても上手く書ききれない!

 あれ? アベさん天気いいのにフード被り? 会いたくない人でもいるのかな?


 肉屋で塩漬け肉の樽を売り、干し肉のブロックと銀貨を十五、六枚。同じ数の空の樽を貰う。

 樽は肉屋からのレンタル?

 銀貨があって、この世界に金貨ってあるのかな? 鉱物資源のレアリティって俺の世界と一緒か?


 そのお金で黒パンとチーズと激マズ漢方薬酒となんか粉が入った袋(多分、塩)を買う。

 全部別々の専門店。

 めんどくせぇ……買い物! 久しぶりに触れる貨幣経済!



 で、武器屋。矢の補充か。

 って思ってたら俺が呼ばれて鎧の胴着せられる。アベさん、店主のおっさんとこの鎧を検討中らしい。

 ああ、モデルってこと?

 いや、俺に合わせたらアベさんにはキツイぞ?

 脇腹の留め具である程度サイズ調整できるらしいが、胸周りもちと小さくないか? 薄着の時用かな?


 ってか剣も出て来たが何故俺に持たす?


 もしかして……もしかして俺の?

 俺の剣と鎧? マジで⁉

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