そこにあったのか。薬草。
早朝、名前を呼ばれて目覚めた。
アベさん! 目、醒めた!
とりあえず水を一杯飲むとフラフラ立ち上がって外に出ようとする。
トイレかな? 肩を貸して付き添うと例の庭の花壇から植わってる葉っぱを二種類、十五枚ばがり千切って煮始めた。
もしかして……薬草的な?
これが有名な「薬草」か……意外に小さくて普通の葉っぱだな。いやどっちかっつうと「毒消し草」かな。
こんな量で効くの?
一煮立ちさせてアクをとり塩一つまみ入れてダシも葉っぱも平らげてた。普通にうまそうと感じた。やべ。腹鳴る。
に、してもこんな近くに薬になる物があったとは……知ってればもっと早く……いやでも用法用量が分からないか。
でも流石だなアベさん。薬草畑。
逆に当然なのか、森にあんな化物が普通にいるんだもんな。考えて見りゃ万一の準備は必須だよな。こんなことになるまで鎧も要らないんじゃ? って思ったこともあったが今は俺も着たいくらいだ。
ってか初日の俺、ほんとやばかったんだな。アベさんいなかったら。
アベさんしんどそうだが歩き回れるようにはなった。
で、朝食の支度中。
食料庫、床下だったよ……。
メニューは、パン(硬くて黒い)、チーズ? (学校の流しに放置してある石鹸みたいな感じ)、干し肉(初日に貰ったジャーキーのブロック)、酒? (グレーの不透明の瓶に入った液体。なんなのかもグレー)。
二日ぶりの飯。それもパンとチーズと肉! ……と何かの液体! 俺が知ってるそれらより全体に黒っぽくて硬いがこの際なんでもいい!
アベさん料理の手際もいい。
なんでもできるなぁこの人。俺も手伝うがパン切るのにさえ四苦八苦。ガッチガチに硬いんだよ。レンガかよ。
今それぞれの火の通り待ち。
高校時分、世界史も日本史も取ってたけど封建社会、中世近世の人々の暮らしとか全く理解してなかったんだな。
この世界では大の大人はアベさんくらい生活力があって当たり前なのか。狩って捌いて食って保存して栽培して治療して……。
金貰って買って食うだけの俺って……こっちじゃ一人前からは程遠い。
うまかった……火の通ったパンとチーズと肉。
食後落ちついてたらアベさんが「ヒロがいなかったら死んでた」的なジェスチャーしてきてなんか言ってた。
多分「ありがとう」だな。だから全く同じジェスチャーと言葉を返して二人で笑った。
液体は一応、お酒だったみたいだが、漢方薬をぬるま湯で戻したような味。不味い。
飯食った後いつの間にか寝てしまったらしい。
色々あったからな。けどアベさん、ベッドに運んでくれてた。
で、明け方五時過ぎに起こされて、狩りかな〜って思ったら荷車に塩漬け肉の樽を六個積んで出発。
もしかして……街? 買い出し? マジで?
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