帰って来たアベさん。
アベさん帰って来たよ!!!
ヨカッタ〜マジで。
首落として血抜きしたなんらかの獣を背負って。
掃除したことにはすぐに気づいてくれたので、今までの御礼だってことと、仕事を手伝わせてくれってことを、身振り手振りジェスチャー含めて全力で主張したらどうにか伝わってらしく、明日から荷物持ち手伝え、みたいなことをやはりジェスチャーで伝えられた。
これでとりあえず当座の居場所はできた。
明日から、狩人見習いだ。
安心したからか、疲れからか、久しぶりに夢を見た。
なんだか飾りけのない無機質な部屋。
薄暗い。何かの機械が一定のリズムで音を鳴らす。何かのカウントだろうか。
女の子が泣いている。
姿は良く見えない。年齢も見た目も全然具体的に分からない影みたいなだれか。
だけど何故だか「女の子だ」ということだけは分かる。
近づいて声をかける。
声を掛けたイメージはあるが、なんと言ったか全く覚えてない。
女の子が、息をしゃくり上げながら振り返える。
その顔は──。
ってとこで目覚めた。
なんて夢らしい夢だ。慣れない環境での緊張が無機質な部屋、泣いてる女の子は俺自身が抑圧してる不安の象徴で、顔が分からないのはその不安の解消方法……つまり俺の世界への帰還方法が分からないことの隠喩かな。
ローテーション的にまた狩りに出るのかな、と思いきや、今日は大型の獲物の処理と道具類手入れ、洗濯、入浴、(と、言ってもお湯で絞った手拭いで身体拭く感じだけど)などのメンテ日だった模様。
獲物の処理は解体して樽への塩漬け。革は引っ張り型みたいのに貼り付けて乾燥。もちろん全力で手伝った。考えてみりゃそうだよな。冷蔵庫もないんだし、その場で食べ切れないデカい獲物は保存の段取り踏まないと死んだ瞬間から悪くなる一方だもんな。
いや、アベさんすげえよ。
人として、というか、一個の生命体としての生活力が断然俺よか高い。
だって野生動物捕まえてシメて血抜きして解体して塩漬けと革素材への生成と一人でできるんだぜ? 中世の人たちのこと舐めてたわ。文明が未熟な分、個人の生きるスキルは俺の世界の一般人よりレベル高え。
身体を洗うのは丸四日ぶり、かな?
灰を身体にまぶして、お湯で絞った手拭いでゴシゴシ。スッキリはしたが身体が灰くさい。これなんか意味あんのかな。
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