トイレあったわ。

 狩りに出たアベさん帰って来ねえな。

 もう日が暮れる。

 大丈夫だろうか。

 俺と居た時も何泊か野宿した後に一旦帰宅、みたいな感じだったし、トラブルで帰らないとかじゃなくて予定通りの行程なんだろう。多分。そうであってくれ。

 掃除は完了してるが、祭壇は触らないでおいた。なんか怖いし。

 今更だけど携行したバッグの中身確認。

 教科書。ルーズリーフ。筆記用具。いつのだか分かんない使用後のマスクとのど飴一個。

 ロクなもんがない。

 のど飴はメッッチャうまかった。



 アベ亭の周辺を散策して見る。

 割と鬱蒼とした森の中だけど、家の周りは少し開けてて日当たり良好。家の前には石で囲われた花壇だか畑だかがあり、花も実もない葉っぱがうわってる。

 家自体は石と丸太でできてて納屋が隣接してる。一人暮らし用にしてはゆとりある大きめの家に思えるな。自分で建てたんかな。アレに似てるわ。ハイジの家。

 家の裏の坂道を下ると小さな川。

 風呂はないが、トイレはその川に跨るようにして立つ小屋を発見。

 中は板が二枚渡してあってそこでして、完了後は川で洗う……んだろう。多分。ペーパー的なものはなかった。でも外でするより気分的にも衛生的にもぜんぜんマシ。

 天気良かったから下着だけ洗って干した。

 その間下着以外の服を直に着る。仕方ない。身体も洗いたいけど浸かるには水が冷た過ぎる。シャンプーしてえ。


 やる事もなくなってまだ時間がある。

 ルーズリーフと筆記用具はあるし、異世界語ノートでも作るか。


 今んとこ分かってる言葉は……


・アベェ → 名前


 ……これだけか。

 最初はこんなもんだろ。次にアベさんか戻って来たら色々聞いてまずは単語の語彙を増やそう。


 暗くなって来た。

 一旦寝るか。

 ベッドはあるが、なんか図々しい気がするから部屋の隅に前に借りたマント敷いて寝る。


 アベさん。無事でいてくれ。




 

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