目覚めても、やっぱり森。

 ってか目覚めても状況変わらず。

 壮大な夢オチみたいのを期待してたんだが……。

 戦士のアベさん朝はええ。

 寒い。

 借りた布をぐるっと巻きつけてマントみたいに着させてもらってるが、布の目が荒くてスースーする。コーヒー豆入れてる袋みたいな材質で肌触り紙ヤスリ。匂いは土。贅沢は言えないんだけどさ。


 戦士のアベさんホントいい人。

 森歩き中もこっちを気遣ってちょいちょい声掛けてくれる。意味は全く分からんが。

「足元気を付けろ」とかだろう。多分。

 昨日は暗くてよく分からなかったけど、歳は四十くらいかなぁ。

 ヒゲ面で全体に埃っぽくてきちゃなく見えるけど、この世界ではこんなもんなんかもしれん。

 重そうな道具袋に短い剣を帯びてる。昨日目ん玉スライムをぶっ殺したのはなんか棍棒みたいな武器で、その持つとこが道具袋からちょっとだけ出てる。荷物持ちでもした方がいいんだろうか。でも「荷物持ちましょうか?」をなんて言ったらいいか分からんし、いきなり荷物を奪い取るわけにも行かんし。



 時間経って、状況に改善のきざしもなく、ジワジワ真剣にヤバい気がして来た。

 本名晒して拡散希望、とかも考えるが、来た時みたくふっと帰れたりしたらただ個人情報拡散しただけになっちゃうし。

 かと言って親や弟たちにこのアカウントを教えたりはしてないから、ここにどれだけ書込もうが俺の現状が近しい縁者に伝わることはないだろうし……。伝わったところで対処方法もなかろうが。


 しばらく様子見よう。


 森歩きキツイ。長い。行っても行って森。腹へった。トンカツ食いたい。



 色々あったが、今、現地の戦士の人、アベさんの家。

 なんか装備の手入れして身体拭いて、食事をしたらもう寝るらしい。

 鎧着てたから戦士って書いちゃったけど、狩人兼レンジャーって感じ?

 森の各所に設営した罠を巡回しながら、途中獲物に出会ばそれを狩る、みたいな感じらしい。

 今、道すがらで弓で仕留めた角はえたウサギみたいな小動物が捌かれて煮込まれてる。

 ふと窓から夜空を見上げると、月が二つ出てる……。


 んあーっっ!!!

 やっぱ異世界なん⁉︎

 それとも激烈リアルな妄想か幻覚⁉︎


 今まだマトモなんだとしても気ぃ狂いそうだーっっっ!!!


 あと今日人生初の野グソした。



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