第2話 ピース

「私の家、すぐそこなんだ。行こ」

「うん」

川内さんの言葉に頷く。


それから、昔話に花が咲いた。

昔話といっても、彼女とかかわったのは、わずか半年ほどなのだが、

それでも、濃い時間だったので、思い出は尽きなかった。


「あっ、そうだ」

川内さんは、ポケットに手をいれ、一枚のハガキを取り出した。

「これ、覚えてる」

川内さんは、ハガキの裏を僕に見せる。

そこには、イルカの絵が描いてあった。


「これって・・・」

「そう、藤本くんが私の送別会の時に、プレゼントしてくれた絵だよ」

「僕が・・・」

「うん・・・私がお願いしたんじゃない。」


その事をだんだんと思いだしていった。

確かにそうだ。このイルカは僕が描いた。

間違いない。


「私が『藤本くんの好きな動物を描いて』とお願いしたら、イルカを描いてくれたんだよ」

「イルカで、よかったの・・・」

僕は、今更ながら疑問を問いかけてみた。

「もちろん!」

彼女は満面の笑みになった・


確かにそうだ。僕はイルカが好きだ。

なので、迷うことなくイルカを描いた。


しばらくすると、「着いたよ」

川内さんが自宅に連れてきてくれた。

「どうぞ、今お父さんとお母さんを連れてくるね」

そういって家の中に入っていた。


しばらくすると、川内さんが両親を連れてきた。

川内さんの両親とも、面識が出来ていた。

川内さんの両親だけあってか、とても気さくで、すぐに受け入れてくれた。


挨拶を済ませて、軽く話をした。

そして、客間に通された。


窓は開いていた。

外には海が広がっている。


どうしてここにいるのかは、まだ思いだせない。

でも今は、よかった。

「しばらくは、楽しもう」


そう考えていると、川内さんが入ってきた。

「ごめんね。お父さんも、お母さんも騒がしくて・・・」

「いいよ・・・来てよかった」

「ありがとう。藤本くん」


川内さんは、窓の近くまで来て、外を見た。

「いいよね・・・海って・・・」

「うん・・・」


彼女の横顔は、とてもきれいで、どこか寂しげだった。

「ねえ、藤本くん」

川内さんは、振り返り声をかけてきた。

「明日、君の夢を叶えてあげるね。」

「夢?」

そういった彼女の顔は、とても優しかった。

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