第456話 フィナーレを鮮やかに飾るために
ああ、楽しかった。
今日は『女神会』に行ってきた。
女神仲間が集まって、自分たちが作った世界を鑑賞するの。
今流行ってるのは『エリカノーマ・ネクストジェネレーション』。
オリジナルの世界で大ヒットした乙女ゲームよ。
元々は皇太子妃を選ぶゲームがあるんだけれど、これはヒロインの娘が活躍する恋あり冒険ありのドキドキワクワクする新作。
出て来るキャラもみんなカッコよくて、誰のルートを選ぼうか悩んじゃう。
そういえばオリジナルの世界には攻略対象によく似た人間たちがいて、女神の間ではその魂を誰が手に入れるかって争奪戦になったの。
でもそうやって争っている間にみんな死んじゃって、次はどこに生まれ変わったか解らずじまい。
残念なことをしたわ。
あの性格があのキャラに入ったらどんな物語になったかしら。
それと『難攻不落の永久凍土』と言われたキラキラ輝く魂も、いつの間にか姿を消していた。
あれは一体どこへ行ったのだろう。
それはともかく、みんな世界を作るのが上手。
他の女神からは「あなたの世界も見たいんだけど」って言われるけれど、自分が作ったものより他の女神が作ったのを見る方が楽しいのよね。
それに世界の育成って面倒臭いのよ。
ついつい放置してしまって、私の世界は一つも完成していない。
そろそろ真剣に育てないと。
でも作った世界の数だけは多いから、どれから手をつけたらいいのか迷う。
ま、もうしばらくは女神仲間の世界を堪能させてもらいましょう。
放っておいても特に問題があるとも思えないしね。
あの後何回か『女神会』に参加したけれど、変な話を聞いた。
作ったはずの世界が見つからない、と。
間違いなく作って育つのを楽しみにしていたのに、そろそろ物語の終了というところで見に行くと、影も形も無くなっているらしい。
消えるのは『エリカノーマ・ネクスト』の世界が多い。
もちろん他の物語もあるのだけれど、消えてしまうのは圧倒的に『ネクスト』だ。
『女神会』は開催されている。
けれど参加する女神がどんどん減っていく。
連絡が取れない女神が増えている。
そして消える世界も。
一体何が起きているのだろう。
不安になった私はかつて自分が作った世界を確かめてみることにした。
「ないっ ! 私の世界がないっ ! 」
あれだけ作った世界がどこにもない !
一つもない !
これはどういうことなの ?!
「ごきげんよう、女神様」
慌てふためく私の後ろに、突然誰かが現れた。
神々しい。
今まで出会ったどの神よりも神力が高い。
それが六柱も。
三人の女神と三人の男神。
その中の一柱、女神が誰よりも強い光を放っている。
なんて力強い。
こんな神格の高い女神は知らない。
「はじめまして。
美しい銀色の髪と緑の瞳。
どこかで見たような容貌。
待って。
私の作った世界の神 ?
そんなはずはない。
世界は、作った神のものだわ。
「あなたには感謝しかありません。あなたがあの世界を作ったから、私は最愛の人に出会えた。たくさんの大切な人達と巡り合うことが出来た」
不思議な衣服をまとった神々。
あれは、そうだ。
女神の間で『狩場』と言われている世界の、『牧場』と呼ばれる国の最高位の衣装、『ジュウニヒトエ』だ。
そして思い出した。
この女神は・・・。
「あなた、ルチア姫ね ? 」
「そう呼ばれていた時期もありました。今は『
隣に並ぶ青年神が誰かは知らない。
けれど後ろに控える四柱のうちの二人は、多分「ネクスト」に出ていたルチア姫の侍従たちだ。
「あなたがあまりにご自分の世界を放置していたから、すべて神力に戻してありがたく頂戴いたしました。奪って行った魂も返していただきましたよ」
「な、なんの権利があって ! 」
「奪われた物をお返しいただいただけのこと。ご自分の世界を大切になさらないから、
なんだか力が抜けていく。
何だろう、眠い。
「世界の力は神の力。そして信仰心もまた神の力になる。全てをおろそかにしたあなたには、もう何の力も残っていない」
「まさか、いなくなった女神たちも ?! 」
その女神は薄っすらと微笑むだけで何も言わない。
報せないと !
『女神会』の皆に教えないと !
「・・・残念でしょうが、ここまでです」
眠い。
眠い。
ああ、私はこれで終わりなの ?
まだ何もしていないのに。
周りが真っ暗になって・・・もう・・・なにも・・・見えない・・・。
女神がまた一柱消えた。
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