第391話 閑話・これが最後のバレエ板 !
【岸真理子記念バレエ団】ルーちゃんとアルくんの素敵な仲間たち【集まれ】【第45幕】
ここはルーちゃんこと佐藤めぐみさんとアルくんこと山口なおとくんを語り合う場所です。
批評はオッケー。批判はアウト。
二人がより良いバレエ生活を送れるように応援しましょう。
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258 : 名無しのバレエファン
岸真理子記念バレエ団の新人公演、もりあがったわねえ。
259 : 名無しのバレエファン
『脱走中』の兄様ズが出るっていうから、借金して見に行ったよ。予約の電話もネットも繋がりにくくて苦労した。しただけのことはあったけどね。
260 : 名無しのバレエファン
長男の何が何でもオデットを幸せにはさせないっていう気迫というか悪意というか。
261 : 名無しのバレエファン
そうそう、見てて背筋が凍ったもん。あと次男のオデットに興味を失くしかけているけど、横からかっさらわれるのはなんとなく我慢できないみたいな ? あれもよかったわ。
262 : 名無しのバレエファン
それに二人ともよく飛ぶしよく回るし。『脱走中』の時も思ったけど、あの四人、やっぱり人間じゃないんじゃない ?
263 : 名無しのバレエファン
ルーちゃんとアル君の時もそうだけど、岸バレエ、本当に斜め向こうの事やるわよね。普通は基礎しかやってない素人に役を振ろうなんて思わないでしょう。で、キャスティング絶対外さないし。
264 : 名無しのバレエファン
逆にそれが面白い結果になったとは思うけど、でも、ねえ。あれを見ちゃうと感動が薄れるっていうか。
265 : 名無しのバレエファン
あ、あれね。ルーちゃんのドキュメンタリー。まさか裏であんな会話してるとは思わなかった。
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長男 : エイヴァン、二男 : ディードリッヒ、三男 : アル、姫 : ルー 。
『ドキュメンタリー・つま先から始まる物語』
佐藤めぐみ、バレリーナ。
第一回では大抜擢からプリマデビューまでを追った。
第二回は三大バレエ「白鳥の湖」に挑む。
王子ジークフリートは前回彼女とともにデビューした山口なおと。
悪魔ロットバルトには外部委託の二名がダブルキャストで出演する。
クラシックバレエの基礎だけを愚直に学んでいた二人。
一公演だけとは言え任された二人は、主演の二人と役柄について話し合う。
長 : 「振り写しは終わったが、どうしても納得できないことがある」
次 : 「わかります、兄さん。悪魔の立ち位置ですよね」
長 : 「ああ、あいつって、なんでオデットに呪いをかけたのかってとこだ」
三 : 「オデットがロットバルドの告白を断ったからじゃないんですか ? 」
いやいやと長男が頭を振る。
長 : 「それだけで呪いをかけるとは思えない。しかも侍女三十人以上も道連れだぞ ? どれだけの恨みがあるんだ ? 」
次 : 「そうですね。面倒を見るだけなら三人、多くても五人もいれば交代勤務でなんとかなるってもんです。しかも人間に戻れるのは夜だけ。どこかに拠点があるならまだしも、湖のまわりにいるだけですからね」
長 : 「そもそもそんな大量の女性が攫われてたというのに、それを他国の王族が知らないというのもおかしい。いくら情報伝達速度が遅いと言っても程があるだろう」
三 : 「・・・兄さんたち、今は呪いをかけた理由について考えましょうよ」
脱線しそうな兄二人を三男が元の話題に引き戻す。
姫 : 「私は悪魔はオデットじゃなくて、別の人に恨みを抱いていたんじゃないかと思うんですけど」
長 : 「別の人 ? 」
姫 : 「ええ。だって辻褄が合いません。オディールっていう娘がいるんですもの。当然奥様がいたはずですよね。浮気なんかしたら、奥様が黙ってないはずです」
三 : 「すでに奥さんと死に別れてたとか ? 」
次 : 「オデットに固執するくらいだ。そんな男は死んだ女房に操を立てるんじゃないか ? まして娘を残して逝ったんだ。すぐ次の女に手を出すとも思えんし」
姫 : 「悪魔ロットバルドってこう、偏執狂とまではいかないけど、何こいつ拘り強いーって。そう、私だったら一緒にいたいとは思わないし、一生この人と添い遂げたいとは思わないです」
長 : 「そうか。女房はそんなロットバルドに愛想をつかして、娘を置いて出ていった」
次 : 「娘は父親を見捨てられなくて残ったんですね」
三 : 「大の大人が娘に哀れまれるって・・・」
四人の中では悪魔ロットバルドは「奥さんに逃げられたかわいそうな男」になっている。
姫 : 「きっとオデットの親とか親戚とかに恨みがあるんじゃないですか。本人ではなくて、関係者の誰かに呪いをかけることで思い知らせるっていうか」
長 : 「・・・一番あるのはオデットの両親。母親と婚約していたのを横取りされたか」
次 : 「周りの者もそれを後押ししていた」
三 : 「オデットの侍女たちがそういう人たちの娘だったと考えれば、あの人数をまとめて白鳥にするというのも考えられますね」
次 : 「とんでもない事態です。他国に知られれば侮られるのは間違いない」
姫 : 「王侯貴族なんて跡継ぎがいればなんとかなりますし、集団誘拐は知らぬ存ぜぬでなかったことにしたんじゃないでしょうか」
長 : 「それなら他国に王女と侍女の拉致が伝わらなかった理由も納得できる」
三 : 「当然母国からの救援はなかったわけで、オデット、呪われ損ですね」
次 : 「巻き込まれた侍女たち、たまったもんじゃない。オデットのこと恨んでるだろうなあ。恋人や許嫁がいた娘もいただろうし」
親の因果が子に報い。
なにやら話がドロドロしてきた。
姫 : 「それで、悪魔ロットバルドの娘の黒鳥オディールですけど」
長 : 「おお、もう一人意味不明の登場人物がいたな」
次 : 「唐突に現れて王子騙して帰っていく。親に言われたからってだけでなんでって思いますよ」
オデットに成りすまして王子を誘惑し、ジークフリートから永遠の愛を受け取る。
そしてそーら騙されたー、バカ王子ーっと嘲り笑って消える。
それだけの役。
姫 : 「なんでそんなにノリノリで騙しにかかったんでしょうね。王子を騙すって、彼女自身が何かしらそうしたかった理由があるんだと思うんですけど、それが思いつかなくて」
次 : 「有名バレリーナの動画を見ても、親に命じられて嫌々って感じじゃないですね」
うーんと首をひねる四人。
三 : 「あの、もしかしてアレでしょうか。今流行の婚約破棄」
長 : 「婚約破棄 ? 」
三 : 「ネット小説の定番なんですけど、『真実の愛』に出会った男性が夜会とか卒業パーティーとかで、婚約者に婚約破棄を突き付けるんです。いろんなパターンはあるんですけど、元婚約者を処刑したり没落させたり国外追放したりとか。それで二人は幸せな結婚をするというのが基本的なお話です」
次 : 「婚約者がいるのに浮気をして、捨てた彼女をどん底に落とすのか。最低だな、その男」
三 : 「色々なパターンがあるんです。ざまぁ展開とかですね。で、オディールはこれをやられたんじゃないでしょうか」
婚約者に『真実の愛』で捨てられる。
それは恨み骨髄と言ったところか。
三 : 「そして悪魔ロットバルドもこれで婚約者に逃げられたと考えれば・・・」
長 : 「オデットの呪いを解くカギは『真実の愛』を捧げられること」
次 : 「気合を入れて王子を落としにかかりますね。なんて安い『真実の愛』」
簡単に騙された王子。
とにかく幸せになんてさせてたまるか。
親子で全力で『真実の愛』を否定してかかる。
はっきり言って八つ当たりである。
姫 : 「でも、王子を責めるのは可愛そうですよ ? だってオデットとは夜中に一度だけ会っただけじゃないですか。今と違って街灯とかないですし、間違ったって仕方ないじゃないですか」
長 : 「それも悪魔の計画のうちだろう。つまり王子がアホだったってだけだ」
簡単に恋に落ちたのに根回しもせずに目の前のオディールに目がくらんだ。
どっこが『真実の愛』だ。
結果、オデットと王子は湖に身を投げる。
あの世で一緒になろうと。
残されたオディールと侍女の白鳥たちはどうなるんだろう。
こんな終わりで本当に良いんだろうか。
悪魔を倒して幸せになるバージョンが主流だが、今回は悲恋のほうを採用している。
次 : 「・・・ところでオデットって白鳥ですよね」
長 : 「ああ、そうだな」
次 : 「白鳥って溺れ死ぬことが出来るんですか」
それまでザワザワとしていたスタジオがシーンと静まりかえった。
姫 : 「えっと、入水するのは夜ですから、人間のままのオデットなら可能じゃないかと」
長 : 「いや、城から湖までの距離やその後のあれこれを計算に入れると、ギリギリ夜明け近くということも考えられるぞ。それとどの高さから飛び降りたかも関係してくる」
三 : 「水面に到達する前に夜が明けてしまえば、オデットだけ助かりますね。でもそれじゃ悲恋になりませんし、なんとか二人で死んでもらわないと」
なぜかオデット殺害計画を練り始める四人。
お互いの手を縛り付けたらどうだ。
そうなると、ジタバタ暴れる白鳥を王子が抱きしめて無理心中。
長 : 「・・・駄目だな」
姫 : 「お笑いにしかなりませんね」
三 : 「やはりここは王子一人で死んでもらいましょう」
ではその場合、どう悲恋にもっていくか。
次 : 「そうですね。こんなのはどうでしょう」
次男曰く、王子が死に一人残されたオデット。
そこに悪魔が囁く。
お前に『真実の愛』を捧げる男が出たら、これからも同じように嵌めてやる。
自分のせいで人死にが出る覚悟があるなら、いくらでも恋をしろ。
次 : 「最後はオデットと白鳥たちの絶望の中で幕が下りる。どうです ? 」
姫 : 「なるほど ! これぞ悲恋ですよね ! 愛してくれる人が殺されるかもって思えば、もう恋なんてしない。一生白鳥のままでいようって思いますもん」
三 : 「それにジークフリートは死を選んだけれど、次の恋人がオディールに愛を誓ったうえで死ななかったら、彼はオディールと結ばれるわけで」
長 : 「それを見せられるのも辛いだろう。これは悪魔親子の完全勝利だな」
やっと出た結論に四人が満足そうに笑顔を浮かべるが、その後ろで憤怒の表情のバレエ団の最高責任者が立つ。
「・・・いいかげん、そのしょうもない妄想はやめなさい」
四人はしまったと立ち上がるとコソコソと逃げようとする。
「下手な考え休むに似たり。悪魔は悪い奴 ! オデットと王子は可愛そう ! 余計な設定なぞ考えずに無心で踊りなさーいっ ! 」
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266 : 名無しのバレエファン
バレエと関係ない生活をしてたから、物語のあちこちに納得できないところがあるとは思うんだけど、あそこまで話を膨らませられるってすごいと思う。
267 : 名無しのバレエファン
て言うかテレビ局、よくあれを流したわね。まあ、おもしろかったけど。
268 : 名無しのバレエファン
英断よね。私、悪魔大勝利バージョンって見てみたくなった。
269 : 名無しのバレエファン
私も。さてルーちゃんの『白鳥の湖』は今夜放映されるわけだけど、の会話を思い出しながら見たら楽しいかも。
270 : 名無しのバレエファン
悪魔ロットバルド役はどっち ?
271 : 名無しのバレエファン
長男のほうだって。楽しみ、楽しみ。
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