第380話 マール君の大、大、大冒険 ! ・その8
今年もお読みいただきありがとうございました。
次回は新年の四日に更新させていただきます。
皆様、よいお年をお迎えください。
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仁王立ちの先輩侍女さんは、エイ兄さんの大切な相思相愛の婚約者・・・のはずなんだけど。
「婚約解消しましょう、
なんで開口一番そんなセリフが出てくるんだろうか。
横に並ぶ兄さんたちはもちろん、姫とアンシア姉さんもパックリと口を開けている。
んでもって『さておき』も『とりあえず』も婚約解消とまったく関係ない言葉だと思うんだけど。
「えーっと、私もナラと同じ。婚約解消させてもらうわね、
隣で腕組みしている侍女じゃない人。
もしかしてディー兄さんの彼女さん ?
「ちょっ、待ってくれ、ナラ。一体なんでそんな話になるんだ ? 」
「そうだぞ、フロー。今は侍従の総入れ替えって話じゃないか」
兄さんたち、冷静になろうとしているが、顔色がめっちゃ悪い。
姫はというと扇子で口元を隠しながらも少し肩が震えている。
「春の
「だから、
「それが大ありなのよねえ」
腕組みしている人、ディー兄さんの婚約者のフロラシーさんが面倒くさそうに教えてくれる。
『大崩壊』の功労賞は騎士団とか各ギルドとかには与えられたんだけど、一番頑張った姫たちには何もなかったそうだ。
さすがにそれはどうだろうという意見が王都に住む人たちから上がっていて、当然貴族の中からもあれだけ頑張ったのに褒美がないとはどういうことかと抗議があった。
このまま何もないならもらった功労賞は返上すると各騎士団と魔法師団からの申し入れがあり、春の
あ、
「
「つまり全員高位貴族の仲間入りで、侍従仕事は出来なくなっちゃったってことよ」
「「そんなバカな ! 」」
兄さんたちが声をそろえて叫んだ。
「だ、だがそれと婚約は別だろう ! なんでわざわざ解消・・・ ! 」
「
「私も同じよ、
兄さんたちはもう俺が見たことのないくらい狼狽していて、乙女ゲームの婚約破棄された悪役令嬢みたいな顔をしている。
いや、見たことないけど。
「ナラ、俺のあの試練はなんだったんだ ! 」
「まったくの無駄よ ! 」
一刀両断されたエイ兄さん。
もうこの世の終わりみたいって表現がぴったりな顔になっている。
それにしても兄さんたちの試練ってなんだろう。
結婚するのになんかクエストみたいなのがあるんだろうか。
「あの、もしかして一発殴らせろとか、お父さんと呼ばれる覚えはないとかいうアレですか ? 」
アル兄さんがおずおずと聞いてみる。
「いや、ナラの実家は古武術道場だったから、いきなり百人組手をやらされた」
ナラさん自身は武道の嗜みはないけれど、ご両親とお兄さん夫婦にご親戚まで加わって、
九十九人しっかり倒したところで甥っ子君が現れ、かわいいお手々でエイエイとやられ、倒すわけにはいかないので肩車をして道場内を歩き回っているうちに、頭の上で涎を垂らして寝入ったそうだ。
それを見たお爺さんが、
「あっぱれ ! 敵の特性を見極め、正しい方法で倒す。まこと孫娘の婿にふさわしい ! 」
と、大絶賛でその後酒宴になだれ込んだ。
ちなみに甥っ子君は二歳。
「兄さんはまだいいですよ。フローの実家は造り酒屋で、挨拶してたらいきなり大宴会だったんです」
まず酒造の酒を全部試飲させ、つぎに利き酒をやらされる。
銘柄を当てなくてもいいけど、その酒を誰にでもわかるようプレゼンさせられた。
もちろん『鑑定』の魔法で銘柄から仕込まれた年まで当てている。
「フローが目とかでフォローしてくれるかと思ったら、俺を無視して食べ飲み放題だったんですよ」
その後は「俺の酒が飲めないか」状態で
それも穴が開いていて底を抑えないと零れてしまう『
絶対に断れない杯を渡されてひたすら吞み続けていく。
『洗濯』の魔法の変形で酒のアルコールをいちいち除去してたからなんとかなった。
次から次へとくる酒を飲んでは返杯しを繰り返して、無事に全員潰して見事
「あの、あの面倒臭い儀式を無かったことにしろって言うのかっ ! 」
「その通り ! 」
・・・ディー兄さん。
「なんで、なんでこんなことに・・・ ! 」
あ、姫がお怒りモードに入りそう。
じーちゃん、そこで笑ってないでなんとか言ってよ !
アンシア姉さんも自分が関係ないからって楽しそうにしてんなよっ !
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